【連載】2017年は真の「働き方改革元年」になる。HARES代表西村創一朗が語るこれからの働き方

働き方改革を進めるために。

増えた時間の投資先としての複業の可能性

一方で「長時間労働の是正」によって創出された「可処分時間」をどこに投資するのか?といった踏み込んだ議論はまだ十分にされていないように思えます。
現在子育て中の家庭においては、男女問わず、可処分時間の多くを家事や育児に投資することによって子どもの健全な成長を支えるとともに、「家庭内ワークシェアリング」が進み、女性がキャリアを諦めずに仕事と子育てを無理なく両立できる可能性が広がります。

また、父親の家事育児時間の長さが第二子以降の出生率に影響することは統計上明らかなので、間違いなく出生率は上がるでしょう。もちろん、「可処分時間の投資先」は家事・育児に限られません。

「複業」という形で、自分の専門性やスキルを活かして勤務先以外からも収入を得たり、興味関心のあるテーマで活動しているNPOにプロボノとして参加したり、地域住民として地域の活動に積極的に関わっていくなど、それぞれの個性や嗜好に合わせた「時間の投資ポートフォリオ」が組めるようになります。

この変化を「社会」というアングルから見てみましょう。今まで、長時間労働によって「カイシャ」という存在がほぼ独占していた個人の時間を、中小・ベンチャー企業やNPOなどのソーシャルセクター、地域コミュニティなどでシェアリングできるように変化していくことになるのです。

長時間労働の是正と複業解禁は車の両輪

まずは「長時間労働の是正」によって個人の「可処分時間」を倍増させる。
次に複業・兼業の容認・推奨の動きを官民一体となって進めることで「可処分時間の投資先の拡大」を推し進める。このように「長時間労働の是正」と「複業解禁」は日本の働き方改革における「車の両輪」だと思っています。

経済界ではよく「終身雇用・新卒一括採用を前提とした日本型の雇用慣行を変えるべき」「雇用の流動性を高めるべき」というオピニオンを目にしますが、個人的にも非常に共感するところです。
ただ、「解雇規制の緩和」や「雇用の流動化」については「期待したい結果」であり、それ自体を声高に叫んだところで、一向に変わることはありません。終身雇用・年功賃金によって、カイシャという存在に人生を預けてきた、依存型キャリアの人がほとんどの日本において、いきなり抜本的に解雇規制の緩和を行うことは現実的ではありません。

じゃあどのように働き方を変えていくべきか?という点が論点になる訳ですが、「まずは労働者個人のキャリア自立度を高めること」が重要だと思っています。そして、個人のキャリア自立度を高めるための方策として有効なのが、可処分時間の倍増、及び複業の容認・推奨なのです。

「会社」という枠組みを離れた時に、自分が本当にやりたいことは一体何なのか。対価としてお金を頂けるような自分の強みは何なのか。こうしたことを真剣に悩み、考える機会が、これまでは独立起業に挑戦するような、ごく一部の人にしかありませんでしたが、複業解禁ともなれば、多くの人が自らの意思で、自発的に「やりたいこと」や「できること」を考え、行動し始め、少しずつキャリア自立度が高まっていくでしょう。

そうして労働者個人のキャリア自立度がある程度高くなれば、自然と雇用の流動化は進むでしょうし、解雇規制の緩和を行うことによるネガティブな影響は最小限に留められるでしょう。

個人も企業もOSをアップデートするチャンスに

これは単なる「働き方改革」というよりは、「個人と企業の関係性の抜本的な変容」と言った方が良いかもしれません。これまでは、企業と個人が持ちつ持たれつの「御恩と奉公」の関係性で成り立っていたものが、もはや「終身雇用・年功賃金」と言った「御恩」が幻に消え、長時間労働や副業禁止と言った「奉公」が単なる「搾取」に成り果ててしまいました。

これからは、企業と個人が「価値を等価交換する」パートナー的な互恵関係に変わっていくでしょう。リンクトインの創業者のリード・ホフマンの描く「アライアンス」的な世界観です。

この世界観では、個人に「働きがいや適切な報酬」といった価値を提供できない企業は淘汰され、企業に「利益創出やそれに繋がるイノベーション創造」といった価値を提供できない個人は稼げない、非常にシビアな競争が繰り広げられていきます。
そうした「変化」をピンチと捉えるのか、チャンスとして捉えるのかは自分次第です。

これまでとは全く違う世の中に、一刻も早く適応し生存確率を上げるために、何より人生そのものを前向きに楽しむために、今の「働き方改革」の流れを好機と捉え、企業も個人も、今こそ自分自身のOS(オペレーティング・システム)をアップデートする時です。

皆さんも、これを機にご自身の働き方、生き方を見つめ直して、明日から、いえ、今日から新しい一歩を踏み出してみませんか?