「PaaSは自分たちなりの成功シナリオを作る基盤」サイボウズに聞くPaaS活用

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パッケージからクラウドサービスへと事業シフトを進め、今ではクラウドからの売上が5割を超えるサイボウズ。同社の注力するPaaSプラットフォーム「kintone」の取り組みを中心にお話を伺いました。

「PaaSは自分たちなりの成功シナリオを作る基盤」サイボウズに聞くPaaS活用

伊佐政隆
kintone プロダクトマネージャー
2004年サイボウズ入社。マーケティング、営業、子会社での事業立上げを経験し、2011年より製品マーケティングを統括するプロダクトマネージャーに就任。2014年よりkintoneを担当し、製品マーケティング活動のほかユーザーやエンジニアのコミュニティ形成に注力。

売上の再成長を作ったクラウド事業

――貴社では、SaaS領域では中小企業向けに「サイボウズOffice」、大企業向けには「Garoon」を、PaaS(Platform-as-a-Service:誰でも簡単にアプリケーションを開発することが可能なプラットフォームサービス)領域では「kintone」を提供しています。すでに「パッケージからクラウドサービスへ」の事業シフトが進んでいらっしゃいますが、移行にあたって何かハードルはあったのでしょうか?

やはり売上と時間軸についての考え方は一つのハードルではあったと思います。パッケージの場合、お客さまから少なくとも1~2年分の利用料金を初期投資分としていただくので、月額利用料として料金をいただくクラウドに比べて短期的には売上が作りやすくなります。売上が下がるかもしれないという中で、クラウドへシフトすることはそれなりに勇気がいる決断でした。

とはいえ、クラウドは特に中小企業のお客さまにとってメリットがあることは明白でしたし、子会社で取り組んだ大企業向けグループウェア「Garoon」のSaaS事業も順調に大企業顧客を増やしていくことができました。

クラウドの場合、価格も安くなりますし、運用の手間もかからないため、資金力が小さく運用管理者を置くことができない中小企業にとってメリットは非常に大きなものになります。一方、大企業では人員はいるものの、システム部門が運用から価値ある仕事へのシフトをするという観点で価値を感じていただけると確信しましたので、それからは一気に移行を進めていきました。

(出典:サイボウズ提供資料)

――大企業向けといった観点では、たとえば販売管理や生産管理、会計、人事などのERP領域ではかつてユーザーの業務フローにあわせたカスタマイズ型システムとして導入が進んだ背景から、標準的な業務フローとしての提供となるクラウドが普及しづらいという話もあります。グループウェア領域でも大企業ならではのハードルはありましたか?

グループウェアのようなコミュニケーションの領域ではERP領域のような業務フローのハードルはありませんでしたが、既存の体制・基盤はハードルになりました。大企業の場合にはすでに情報システム部門の体制やデータセンターなどの運用基盤に投資がなされており、SaaSの場合は基盤の部分からベンダー側が運用することになりますので、既存の体制・基盤を考慮するとクラウドを選択することが難しくなるようです。

とはいえ、どれだけシステムに投資をしている大企業のお客さまでも投資の範囲は基本的に自社内部のコミュニケーションに留まります。取引先や管理会社などの外部も含めたコミュニケーションについてはメールや電話、FAX以外のツールに投資できている会社は圧倒的に少ないため、特に「kintone」の場合は外部とのコミュニケーションの観点でご利用いただくケースもあります。

モバイル普及で現場参加型のPaaSが選ばれるように

――PaaSの「kintone」が選ばれる理由として外部とのコミュニケーションがあげられましたが、その他にはどのような理由で選ばれるのでしょうか?

「kintone」のメインターゲットは情報システム部門ではなく、システム開発を経験したことのない事業部門やバックオフィス部門のリーダーなどです。

たとえばリーダーがチームの働き方を変えたいと考えたとき、これまでは情報システム部門に相談をすることが一般的でしたが、「kintone」ではリーダー自身がチームメンバーを巻き込みながら主体的に変えていくことができるようになります。

足りない部分があればSIerの方や情報システム部門の中で開発ができる方に手伝ってもらうイメージで、問題を抱えている本人が解決に向けてアクションできる基盤をサービスとして提供できている点が一番大きいですね。

――ITシステムはこれまでは情報システム部門が中心となって導入が進められてきましたが、近年ではおっしゃる通り事業部門やバックオフィス部門が中心となって導入する時代になってきています。どのような背景で時代の変化が進んできたのでしょうか?

やはりスマートフォンやタブレットなど、モバイルデバイスの普及が大きく影響していると思います。日常的に触れているテクノロジーと社内で利用しているシステムの差が次第に大きくなってきたことで現場による導入が進んだと考えています。

――そういった意味で、モバイルへの最適化がクラウド普及の一つの鍵になっていますが、「kintone」ではどのようなモバイル対応の工夫をされていますか?

たとえば「kintone」上でアプリケーションを開発した際、自動でモバイル画面も生成されます。言い換えれば、お客さまがPC版、モバイル版ということを意識せずに、モバイルデバイスで見れば自然にモバイル版として表示されるようになっています。

――モバイル版まで含めて、現場の担当者が自分自身でアプリケーションを開発できるようになることはとても画期的ですね。

そうですね、自分自身で作れるということは本当に楽しいことですね。私自身もエンジニアではないのですが、やはり自分でアプリケーションを作ることができるとすごく楽しいと感じます。お客さまにもまずは「kintone」を活用して自分自身でアプリケーションを作る楽しさに触れていただきたいと思っています。

また、「kintone」の場合は実際に利用する人が参加型で開発できますので、画面を見ながらこんな管理項目が必要ではないか、たとえば「営業管理ツールであればこんな項目が欲しいよね、なぜなら私たちのチームはこれを大事にしているから」というような会話をしながら開発を進めていくことが可能です。

また実際に利用してみて、大事にしたい項目が抜けている、項目が多すぎて使えないなどのフィードバックを受けてこの項目を削除しようか、あるいはこの項目を追加しようか、アプリを2つに分けようかなど、利用しながら都度改善していくことも可能です。このプロセス自体に、ものすごく大きな価値があります。

コードを見ながら皆でシステム開発に参加することは不可能なので、これまでは開発する側と利用する側は明確に分かれていました。そして開発する側にとっては開発すること自体が目的となってしまうため、結局使われない、成果に繋がらないシステムがたくさん生み出されています。

「kintone」ではドラッグ&ドロップなど直感的な操作での開発が可能ですので、現場のメンバーが開発プロセスに参加できるようになります。

システムを作ることはあくまでも手段で、ゴールはやはり働き方の改革や売上が上がりやすいチーム作り、ノウハウを共有しやすいチーム作りなどですので、そのゴールに向かって実際に利用する人が一緒に開発できる点は非常に重要なポイントです。

PaaSは「自分たちなりの成功シナリオ」を作る基盤

――「kintone」のようなPaaSでは、顧客管理機能など、SaaSとして提供される用途でも利用可能です。いずれもクラウドアプリケーションという意味では同じものですが、PaaSとSaaSはどのようなすみ分けになるのでしょうか?

私のイメージでは、SaaSは1つの成功シナリオをパッケージにしたものです。利用シーンも含めて1つのシナリオが合致する場合にはSaaSを利用した方が良いでしょう。また、シナリオ自体を思いつかないお客さまの場合も、そのシナリオを信頼して期待する成果が出ると思えばSaaSのシナリオに乗るべきですね。

一方で弊社の「kintone」のようなPaaSの場合は、シナリオ自体をお客さま自身で作りましょうという発想のものです。自分たちらしいシナリオを作っていくことができる点に価値がありますので、実はSaaSとPaaSは組み合わせて利用することが理想的です。

――「kintone」のようなPaaSは自分たちらしいシナリオを作る基盤ということですね。基盤として、アプリケーションの開発機能以外にはどのような機能を提供しているのでしょうか?

このあたりは我々が存在しているビジョンにも関係してくるのですが、サイボウズでは「チームワークあふれる社会づくり」をビジョンとして掲げていて、そのためには「チームワークあふれる会社を増やしていくこと」が大切だと考えています。

とはいえ、弊社も社員数は限られてきます。チームワークあふれる社会や会社づくりのために共通化できる要素をプラットフォーム化してサービスとして提供していこうという発想で生まれたものが「kintone」です。

弊社ではこの共通化できる要素を「データベース」「プロセス管理」「コミュニケーション」の3つの機能と考えていますので、これらの機能を「kintone」で提供しています。

仕事の基本は同じ情報を見ながらステータス管理やコミュニケーションをすることです。昔はこれを、紙を用いて印鑑を押して、口頭でコミュニケーションして、口頭だと発言の記録が残らないので議事録を作成して、ファイリングするというやり方でした。昔からこの根本的な部分は変わっていなくて、「kintone」はこれをバーチャル化して時間や場所に依存しない形にすることができるツールです。

成功シナリオがセットされたSaaSと組み合わせて使う

――貴社ではSaaSとして中小企業向けグループウェア「サイボウズOffice」、大企業向けグループウェア「Garoon」、PaaSとして「kintone」を提供していますが、「kintone」にはグループウェアの機能も搭載されています。貴社の中ではどのようにそれぞれのサービスを位置づけているのでしょうか?

弊社では「kintone」もグループウェアとして位置付けています。サイボウズではチームワークを支援するツールをすべてグループウェアと定義していますので、そういった意味では「kintone」もグループウェアになります。

その前提で、「サイボウズOffice」と「Garoon」はグループウェアとしての成功シナリオで、たとえばスケジュールはこのように共有すると会社としてはチームワークが向上しやすいなどといったサクセスストーリーが付随しているものです。このようにサクセスストーリーがアプリケーションとしてセットされているグループウェアが「サイボウズOffice」と「Garoon」、セットされていないグループウェアが「kintone」ということになります。

このような違いから、たとえば「サイボウズガルーン」と「kintone」など、組み合わせてご利用いただくお客さまも増えてきています。弊社のサービスを組み合わせてご利用いただく場合には1ユーザーとしてすべて共通管理できますので、他社のサービスと組み合わせる場合と比べて管理がとても楽になります。


「kintone」と「Garoon」の連携例:スケジュール連携(出典:サイボウズ提供資料)

また、共通管理になるため何度もログインする必要もありません。管理と認証の観点ではとても使い勝手が良いと思っています。サイボウズと他社のサービスをまたぐ場合には、連携ツールで補完しながらになりますね。

――連携ツールで補完しながらということは、サイボウズ自身がシングルサインオンツールの役割を担うことは考えていないのでしょうか?

そうですね、我々はSAML(Security Assertion Markup Language)という認証規格に対応していますので、どちらかと言えば認証情報を受ける側です。認証情報を受けるとサイボウズのクラウドもログインした状態でお見せすることが可能です。現時点ではマイクロソフトさんのActive Directoryという認証サーバーとの連携が多いですね。

ハイブリッド・マルチクラウド時代におけるデータ連携

――「データ」の観点では、SaaS市場ではオンプレミスとクラウドを併用するハイブリッドクラウド化、また複数のクラウドを利用するマルチクラウド化が進んでいて、オンプレミスとクラウド、あるいはクラウドとクラウドの間でデータ連携する重要性が高まっています。「kintone」のデータ連携はいかがでしょうか?

「kintone」ではAPI連携によってデータ連携を実現しています。たとえばオンプレミスの基幹システムとの連携では、基幹システムの中にある販売管理データや従業員データを「kintone」に移動させて、「kintone」で現場担当がデータを更新後に上長が確認済みのものをまた基幹システムに戻すということも簡単にできます。

基幹システムはライセンスが高価なので数人にしか配布できず、多数の従業員がデータを見るためにはExcelで落として…という手間がかかっている状況です。「kintone」であれば、比較的安価に多数の従業員が基幹システムから連携されたデータをクラウド上で見ることができるようになります。

最近では、オンプレミスやクラウドとのデータ連携だけでなく、IoTデバイスとのデータ連携も増えてきました。たとえば工事現場では80デシベルを超えると騒音扱いになりますが、センサーから閾値を超えた音量データを「kintone」に受け渡すようにすれば、80デシベルを超えたら「kintone」上で現場監督にメールで通知がいくという仕組みも作れます。その他にも農業や地方創生など、さまざまな文脈でご利用いただいています。

――データの連携にあたっては、補完ツールとしてアプレッソさんの「DataSpider Servista」やインフォテリアさんの「ASTERIA WARP」も利用されています。API連携でもデータ連携は可能かと思いますが、こういった補完ツールは具体的にどのようなシーンで利用されるのでしょうか?

REST APIでのデータ連携が可能ですが、たとえばOracleさんのデータベースであればこう、IBMさんのデータベースであればこう、SAPさんであればこうといったように、システムによってデータ連携のお作法は異なります。「DataSpider Servista」や「ASTERIA WARP」では、データベースごとのコネクターがありますので、そのコネクターを利用することでノンコーディングでのデータ連携を実現することが可能です。

「失敗コストの低さ」というイノベーション

――「kintone」でできることは多岐にわたりますので、この世界観を伝えることは難しいのではないでしょうか?

そうですね、PaaSはとても説明が難しいので、この世界観を理解していただくためにじっくり5年ほど時間をかけてきました。お陰さまでこれまでに6,500社以上のお客さまにご契約いただけていて、現在は毎月200~300の新規契約も頂いています。日本には約400万のお客さまがいらっしゃいますので、今後はさらに多くの事業者に「kintone」というプラットフォームの価値を知っていただき、「kintone」を活かしてチームワークあふれる会社を目指していただきたいと思っています。

(出典:サイボウズ提供資料)

――「kintone」上では簡単にアプリケーションを開発することが可能ですが、アプリケーションはどれぐらいあるのでしょうか?

現時点(2017年2月時点)で総数としては34万件以上のアプリケーションがあり、毎日880件もの新しいアプリケーションが作られています。業種と業務の掛け算でアプリケーションは作られていきますのでバリエーションは多岐にわたります。こういった数値からもこれまでのシステム開発とは比べ物にならないぐらい手軽に開発できることがご理解いただけるかと思います。

「kintone」によって実現したシステム開発における失敗コストの低さはイノベーションだと思っています。これまでのシステム開発では、たとえば1年間で1,000万円以上のお金をかけて開発するといったように失敗コストが高すぎましたが、「kintone」であれば開発してもし失敗したら削除すれば良いので、そもそも失敗コストを考える必要がありません。

――毎日880件、総数で34万件以上もあるとは驚きですね。これらのアプリケーションはユーザーの間で共有される仕組みになっているのでしょうか?

今はアプリケーションを共有するというよりは、良いシナリオを共有する場として「kintone hive(キントーンハイブ)」というユーザーの会があります。この会の中でシナリオを、ちなみに良いシナリオを我々はアイデアと呼んでいるのですが、アイデアをシナリオ形式で共有していただいています。我々はこういう会社で、このような課題を抱えていて、このようにアプローチしていきましたといったようなイメージです。

たとえ同じアプリケーションを利用したとしても同じ成果は出ませんので、実はアプリケーション自体には価値がなく、シナリオ形式でアイデアを共有することに大きな価値があります。弊社では「kintone hive」を通じてこのような形での情報共有を進めています。

パートナー連携を強化する仕組み

――PaaSの場合はSIerがPaaSを基盤としてアプリケーションを開発し、そのアプリケーションを販売するという動きも見られますがいかがでしょうか?

実際にパートナーのSIerさんが主導でSFAのパッケージや、多店舗展開している小売事業者さま向けに店舗管理ツールを開発して販売したというケースはありますが、このようなケースで弊社が追加で料金をいただくということはしていません。

弊社では「チームワークあふれる社会づくり」というビジョンの実現に向けて良い選択肢を選んでいこうと思っていますので、難しいバランスではありますが、必ずしも売上や利益の最大化に繋がらなくても良いという考え方をしています。

ちなみにクラウドサービス全般に言えることですが、特定の用途でしか利用できないとなると費用対効果が厳密に評価されます。一方「kintone」の場合にはあらゆる用途で利用できますし、また1ユーザーあたり月額1,500円でのアプリケーションの上限が1000件で、1000件には到底到達しないので実質的には無限のような状態で、たとえば100件のアプリを使用した場合に1件あたり月額15円になりますので、費用対効果を評価せずとも安いと感じていただけています。

――SIerとの連携という観点で「cybozu.com developer network」というコミュニティも運営されていますが、こちらはどのようなコミュニティでしょうか?

まず前提としてREST APIやJavaScript APIのドキュメントを公開しています。その上で連携や開発の仕方などのガイドライン、そしてノウハウとしてのTips集も公開しており、また良いtipsがあれば公開していただけるような仕組みも整えています。この仕組みが「cybozu.com developer network」というコミュニティサイトです。

SIerさんとの連携という点では、「cybozu.com developer network」以外にも「kintone devCamp」というイベントも開催しています。Tipsをオンライン上のコミュニティサイトに載せるだけでなく、リアルの場で実際に利用してみて体験型で学習してみましょうというイベントです。このように、学習するきっかけをオンラインとオフラインを組み合わせて提供しています。

「kintone」を中心とした海外展開

――海外展開について、「サイボウズOffice」や「Garoon」の展開はあまり上手くいかなかったと伺いましたが、こちらは日本特有のサクセスストーリーを持っていこうとしたためでしょうか?

そうですね、特にコミュニケーション領域は文化依存が強いため、日本の企業がチームワークあふれる会社をつくるために生み出されたサクセスストーリーを持っていっても合致しませんでした。一方で「kintone」はサクセスストーリーがアプリケーションとしてセットされていないグループウェアになりますので、文化依存の影響を受けず順調にユーザー数を拡大しています。

――中国や米国を中心に展開されていると伺いましたが、それぞれでの展開状況はいかがでしょうか?

海外展開で言えば、中国は一番早く本格的に取り組み始めた市場です。10年ほど前からサイボウズ中国として拠点を構えておりますし、クラウドも日本で展開した1年後にはスタートしたのでかなり早い段階で参入できていました。そのような背景もあり、中国ではすでに200社以上のお客さまに「kintone」をご利用いただいています。

米国では現時点で100社を超えてきている状況です。米国で組織を立ち上げてから2年ほど経ち、徐々に導入のペースが上がってきました。その他、東南アジア地域でも100社以上のお客さまに導入しております。

チームのらしさを大切にした「kintone」による働き方改革

――最後に、貴社のビジョンは「チームワークあふれる社会づくり」とのことですが、現在トレンドとなっている「働き方改革」の観点で目指している姿とはどのようなものでしょうか?

すべての人が同じ働き方ではなく、各事業者さまが各事業者さまらしい働き方を追求していくことが重要だと思っています。場所や時間にとらわれない働き方が「働き方改革」として取り上げられることが多いのですが、モノづくりの現場では会社に来ることが必須となる従業員が大半というケースもあるなど、やはり会社によって状況は異なってきます

「kintone」は自らシナリオを作っていくことができる基盤ですので、チームのらしさを出すことができるような環境構築をお手伝いするプラットフォームになっていきたいと考えています。

――ちなみに、貴社では「働き方改革」の取り組みとして独特の制度を設けている印象があります。具体的にはどのような取り組みをされていますか?

チームがビジョンを共有できていることを大前提として、基本的には自立を促し、自立しているメンバーが自分らしく働くことができるための制度・風土を整備しています。制度で言えば、働く時間と場所のかけ算で働き方を9つに分類し、それを毎月宣言することで変えられるような仕組みになっています。

その他には「副業採用」というものを始めました。個人として本業を持ちつつ、時間や場所のコミットメントを本業とのバランスで決めて仕事をしてもらう人材の採用制度です。「起業していたが、ある程度会社が回り始めた」という方や、「これまでフリーランスで仕事をしていたため既存のお客さまとの関係性を考慮したい」という方など、本業を続けながら週2、3日はサイボウズで仕事をするといった人材も活躍しています。

SaaS業界レポート著者の視点

SaaS業界では自社サービスをプラットフォームとして位置付け、ユーザーやパートナーに開発環境を提供して自動で価値を高めていってもらえるメカニズムを構築する動きが進んでおり、サイボウズの「kintone」はその代表例です。

サイボウズでは「Garoon」や「サイボウズoffice」といったグループウェアSaaSをこれまでも提供してきましたが、同じくチームワークを支援するグループウェアPaaSとして「kintone」の展開に注力し、今(2017年2月時点)では34万件以上のアプリケーションが存在し、毎日880件の新しいアプリケーションが作られる大規模なプラットフォームに成長しています。

このような大規模プラットフォームを構築するためには、ユーザーやパートナーが情報交換し合う場としてのコミュニティ形成が一つの重要な要素となります。例えば、サイボウズでは「kintone hive(キントーンハイブ)」や「cybozu.com developer network」など、ユーザーやパートナーが繋がるコミュニティ形成に力を入れており、情報交換を通じてユーザーやアプリケーションの増加を実現しています。

成長ステージが進んだSaaSベンダーの中にはプラットフォーム化を検討するケースが多くみられますが、プラットフォーム化にあたってはAPIの公開・連携はもちろんのこと、「kintone」のようにコミュニティ形成に投資をしていく必要があります。いかにコミュニティを形成していくかといった高度なマーケティング戦略が求められます。


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著者紹介:阿部 慎平 (あべしんぺい)新卒でデロイトトーマツコンサルティングに入社後、大手企業の事業ポートフォリオ戦略、成長戦略、新規事業戦略、海外事業戦略、ベンチャー企業買収戦略など戦略プロジェクトに従事。 より主体的に事業に取り組みたいという思いから2017年3月にスマートキャンプに参画。現在はSaaS業界レポートや事業企画・営業、新規事業立ち上げを推進。