そもそも労働生産性とは
日本の生産性を向上させることが、サービス残業や過労働などのハードワークを避けるヒントだ。そのためには、まず、労働生産性を増やしていく必要がある。
そもそも、労働生産性とはどのように定義されているのだろうか。日本生産性本部によると、労働生産性とは次のような式で表される。
労働生産性 = GDP / 就労人数(または就業者数×労働時間)
今後、日本は、就労人口が激減していくことがほぼ確定している。人口は減り続け、高齢者が増え、現役世代はとてつもなく減っていくだろう。
そこで、分母の就労人数が減っていくであろう今後、労働生産性を上げるとなると、GDPを増やしていくしかない、という結論になる。
労働生産性を上げるヒント
労働生産性は、GDPを上げて解決していくしかない。しかし、無償のサービスはGDPをあげるどころか、長時間労働とサービス過剰をうみ、反対に荷重労働にさらされる社員を増やしてしまうことだろう。
そこで、付加価値的なサービスを差別化して、有料化するなどのことが考えられる。
また、LCCが登場したように、遅延や紛失などのトラブルやミスがあっても文句をいわないなど、価格とサービスが市場原理で釣り合っていくべきだろう。
いまは、安いものに過剰なサービスを求めるという異常な状態だ。これは、市場原理がうまく働いていないともいえる。
無償のおもてなしは過剰サービスだ
顧客満足度が高いことは素晴らしいことで、それを下げるわけにはいかない。だからといって、善意のおもてなしという無償でサービスを提供していれば、そのぶん労働者への負担はかかる。
同じく国際評価の高い千葉県にある成田空港では、2016年4月、国際線の乗客が、間違って国内線の到着口で降ろされ、入国にまつわる手続きを行わず、入国してしまったケースもあった。こういったミスも、格安で過剰なサービスを求める「無償のおもてなし」が招いた、過重労働による判断ミスといえるのではないだろうか。
どこかで、「NO」といえる仕組みづくりも大切なのかもしれない。
冒頭に挙げた新千歳空港だけでなく、成田空港でも、保安検査員が大量離職してることが、2015年の時点で明らかになっている。過剰なサービス、かなり無理のある早朝出勤シフト、そして薄給とクレーム過多による大量離職だ。
同種の問題は、日本の空の玄関口である羽田空港・成田空港で起こっており、長時間労働かつ低賃金というのが、保安検査員による大量離職の背景にあることは、ほぼ間違いなさそうだ。
空港の現場で今、何が起こっているのか。それは増え続ける外国人観光客と空の安全、そしてサービスの過剰だ。ただし、安全を軽視するわけにはいかないため、難しい舵取りが求められそうだ。ただし、そのしわ寄せが労働者に行くのであれば、今後も大量離職と人手不足は続くだろう。
対策としては、空港施設使用料の値上げなどだろうか。増え続ける過重労働の対価は、正当にもらわなくてはならない。それが、サービス料に転嫁されれば、GDPも若干ながら増えていくはずだろう。日本の空港はこのまま「安く、なおかつ、良く」ではいけない。GDPが微増すれば、労働生産性の向上にもつながるだろう。
サービスを享受する側の意識改革も必要
「無償・無料のおもてなし」は、顧客満足度となって数値に表れるが、GDPには反映されない。そのため、労働生産性は一向に上がらない。それを理解しておく必要があるだろう。また、安いものには適度なサービスと割り切って過剰サービスを削減する、高いものにはしっかりとおもてなしをする、といったように市場原理を働かせていくことだ。
そしてこの市場原理について、サービスを享受する側の国民一人ひとりが理解することも、とても大切なことだろう。「自分はお客様だ」という意識でなんでもかんでもおもてなしを要求するのではなく、払った対価に見合ったおもてなしを見極めて、過剰サービスにはノーというべきだ。
ここで「働き方改革」を遂げて、労働生産性を大きく向上させていくことができるのか、それとも果たして、少子高齢化で労働人口不足のまま、過重労働をいつまでも全員で続けるのか、日本は今、岐路に立たされている。