教員の過重労働にメス、文科省の「30億円投下」で過労死を防げるか

公立中学校教員の約6割が過労死ラインで働いていることが浮き彫りとなった。部活、テスト問題作成と採点、進路指導に親対応…。過重労働で鬱を発症する教員も少なくない。子どもたちの未来を預かる教育の現場にこそ、働き方改革推進が急務である。

教員の過重労働にメス、文科省の「30億円投下」で過労死を防げるか

教員の過重労働が問題に。部活にテスト、進路指導などで疲弊

NHKが自社の過労死問題を3年間も隠蔽していた、というニュースが波紋を呼んでいる。4年前の2013年、女性記者が心不全で死亡したのは過重労働が原因であるとして、渋谷労働基準監督署から労災の認定を受けたのは2014年。

NHKは実に3年余りに渡り、自社で起きた事実の報道を怠ったまま、電通の過労自殺事件をはじめとするさまざまな過重労働問題、長時間労働問題の報道を続けて来たことになる。

日本企業の長時間労働是正は、これだから進まないのだろう。国が旗を振る働き方改革が進んでいるはずの大手民間企業でもこの有り様なのだから、残業規制、長時間労働の罰則などが適用されていない公立小中学校の教員の過酷な労働環境はいかばかりだろう。

公立中学校の先生は授業を担当するだけではない。部活、テスト問題作成と採点、そして生徒の将来を左右する進路指導、さらには生活態度の指導など、受け持つ業務は幅広い。

過重労働などで鬱を発症する教員も少なくなく、残された教員にはさらに負担がかかる。

先生たちは今、極度な過重労働状態にある。インターネット上にも、SNSなどで現役の教員が、「我々も人間だ」という怨嗟の声をあげているのを見かけた人もいるのではないだろうか。

実際、公立小中学校の教師の多くが、過労死ラインを超えている。

月80時間制限の過労死ラインを大幅に超えて、週に60時間以上勤務する教員は小学校で33.5%、中学校では57.6%にものぼる。週に60時間というと、週休2日取ったとしても一日12時間労働だ。

土日も休めるとは限らない。土日の勤務時間は小学校が1時間7分で10年前より49分の増加、中学校では3時間22分と10年前より1時間49分とほぼ倍増しているのだ。

教員の時間外勤務については政令により「実習や学校行事、職員会議、非常災害などに必要な業務(いわゆる超勤4項目)に従事する場合であって臨時または緊急のやむを得ない必要があるときに限る」とされているが、有名無実化しているといわざるを得ない。

しかも、これらの業務には、時間外手当がほとんどつかない。わずかに、基本給のうち4%程度だけが、加算されているのみだ。4%というと、基本給が30万だとしても12,000円にしかならない。

教員の負荷軽減を目的として来期予算30億円確保

事態を重く見た文部科学省では、教員の加重労働にメスを入れることを決めた。

教員の事務負担軽減にスクールサポートスタッフを配置、予算は約15億円

まず、「スクールサポートスタッフ」と称した、事務的な作業をサポートしてくれるスタッフを、公立の小学校・中学校で雇用することにしたという。教員たちの授業準備、プリントのコピー、掲示物の作成、行事などの準備と片付け、そして調査資料作成のデータ入力など、雑務を担当してもらいたい構えだ。

全国に公立小中学校は3万校あるが、特に負担の重たい大規模校3600校から配置を急ぐ。

文科省が公立中学校の部活動、外部指導員予算に約15億円

文科省は、土日も部活などで疲弊する教員をサポートするために、部活動の外部指導員を採用することも決定している。来年度の予算に15億円を計上し、部活動に専門の指導員をつけることで、部活の顧問という、教員にとって大きな負担となっている職務を軽減することとした。

部活の顧問を担当していると、指導や引率などが早朝や放課後のみならず休日にもあるので文字通り無休状態に陥る。とくに公立中学校でこの傾向が強く、部活の顧問は引き受けざるを得ないため、教員にとって大変な負担となっていたのだ。

少子化にも関わらず、公立中学の教員が土日の部活動に費やす時間は10年前から倍増しているとの報告もあり、教員の過重労働の原因として看過できない。教員として働く友人の話を聞くと、働き盛りで体力のある20代、30代の教員に活動が活発な部が割り当てられるという年功序列的な圧力も見受けられる。

これらの対策が講じられれば、教員は部活動と事務作業のふたつの業務が負担軽減されることになる。

教師の過重労働は、教育の質の低下につながる。教育の質が下がれば国力が下がり、みんなが損をする。これほどの過重労働の実態を知ってもなお、税金でサポートスタッフをつけることに異議のある人は少ないのではないだろうか。