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三菱東京UFJ銀行がAWSへの移行を着々と進めている
2017年5月に行われたアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)のイベント「AWS Summit Tokyo 2017」にて、三菱東京UFJ銀行の村林聡専務取締役が、AWS上で既に5システムを稼働させ、今後100システムを移行させていく旨について発表しました。
ITの利用において最も保守的といわれた金融業界。メガバンクは、その金融業界のなかにおいても最も保守的だと言われて来ました。メガバンク最大規模を誇る三菱東京UFJ銀行が、自社の管理が及ばないAWSのデータセンターにシステム移行を実施した事実は、金融業界で大きなインパクトを与えたのです。
同年9月には三菱東京UFJ銀行を傘下に収める三菱UFJフィナンシャル・グループが「デジタルトランスフォーメーション戦略」と題し、クラウド活用方針を明らかにしました。
三菱UFJフィナンシャル・グループのクラウド以前の歴史
クラウド以前のシステム開発運用を改めて振り返ってみると、三菱UFJフィナンシャル・グループは、他のメガバンクと同様に国内に複数のデータセンターを持ち業務システムの開発運用を行ってきました。銀行の業務システム、それが顧客情報を含まないものであっても、外部のデータセンターで管理するのはご法度で、「全てのシステムを社内で揃えて自社で運用する」のが当たり前とされてきました。
三菱UFJフィナンシャル・グループの最初の転換期となったのが、クラウドの一つ前のソリューション、つまり「仮想化技術を用いたシステム基盤の構築」です。2010年には、IBMのAIX (Unix)やEMCの大規模ストレージ基盤を導入して、仮想化基盤を構築。これを機に、新システムの構築を行う際は、仮想化基盤上のリソースを利用して構築することが可能となりました。言い換えるなら、「自社グループ専用のクラウド基盤を自前で作った」ようなものです。
自前での仮想化基盤構築の課題
自社グループ向けの仮想化基盤の構築により、プロビジョニング、プラットフォーム選定、ハードウェア選定といった導入時の工数低減、仮想化技術によるハードウェアリソースの効率的な利用により運用コスト削減を、ある程度見込むことはできます。
しかし、そもそも仮想化基盤を自社データセンターで運用することは、VMwareなどの仮想化製品のアップデート適用、定期メンテナンスなど、基盤を維持するための工数が必要となります。当然、これらの作業に行うための人件費は自社で負担しなければなりません。さらには、物理的なハードウェアを置いておくためのデータセンターという「ハコ」の維持費もかかります。