イクメン・イクボス、受賞企業に学ぶ「男性が育児と仕事を両立できる」会社の作り方

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24日に開催された「イクメン推進シンポジウム」で「イクメン企業アワード2017」「イクボスアワード2017」 の表彰式が行われた。男性の家事育児と仕事の両立について、企業と上司がどういう支援を行うのが良いか、成功企業の事例からヒントを探る。
イクメン・イクボス、受賞企業に学ぶ「男性が育児と仕事を両立できる」会社の作り方

「イクメン企業アワード2017」「イクボスアワード2017」とは

厚生労働省が「イクメン企業アワード」の受賞企業と「イクボスアワード」の受賞者を決定し、10月24日に開催された「イクメン推進シンポジウム」で表彰式が行われた。

加藤勝信厚生労働大臣は表彰式冒頭の挨拶でこのように語った。

「女性活躍推進や一億総活躍社会を実現するためには、育児に積極的に参加する男性(イクメン)への支援と業務の見直しを伴う労働時間短縮について、企業が主体的な取り組みが不可欠である」

「今回の『イクメン企業アワード』『イクボスアワード』の受賞企業の取り組みを参考にし、男性も子育てをしやすい職場環境作りに役立てて欲しい」

「イクメン企業アワード2017」受賞企業

今年で第5回目となる「イクメン企業アワード」は、男性の仕事と育児の両立を積極的に促進し、業務改善を図る企業を表彰するもの。今回の応募数は42社で、グランプリと特別奨励賞をそれぞれ2社が受賞した。

<イクメン企業アワード2017 グランプリ>
・ソニー(東京港区・電気機器)
・ヒューリック(東京中央区・不動産)

<イクメン企業アワード2017 特別奨励賞>
・アクサ生命保険(東京港区・保険)
・あわしま堂(愛媛県・製造業)

「イクメン企業アワード」表彰式総評では、イクメンプロジェクト推進委員会座長の駒崎弘樹氏(認定NPO法人フローレンス代表理事)が登壇。

男性の育児休業制度など、「制度があっても、企業や労働者が知らなければ利用されない、制度を利用しようという風土がなければ、世の中は変わらない」としたうえで、「男性の育児休業取得や、男性が家事育児と仕事を両立できる職場環境作り、管理職のマインドチェンジなど、地道な積み上げから大きな成果を出した「社会を変革する先端にいる企業」と受賞企業を賞賛した。

「イクボスアワード2017」受賞者

また、今年で第4回目となる「イクボスアワード」は、部下の仕事と育児の両立を支援する管理職=「イクボス」を企業などから推薦によって募集して表彰するもの。今回の応募数は90名で、グランプリと特別奨励賞をそれぞれ2名が受賞した。

<イクボスアワード2017 グランプリ>
・上野綾子氏(オイシックスドット大地・東京都・小売)
・廣岡隆之氏(あいの土山福祉会エーデル土山・滋賀県・介護福祉)

<イクボスアワード2017 特別奨励賞>
・神田充教氏(ストライプインターナショナル・岡山県・アパレル)
・高金智久氏(大和リース長野営業所・建設)

「イクボスアワード」表彰式総評では、イクメンプロジェクト推進委員である小室淑恵氏(株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長)が登壇。

今の出生率のままだと、2100年には人口は今の4割、高齢者比率は41%となり、人口の3割で7割を支える構造、これは財政破綻。あと1〜2年のうちに出生率が2.07になれば人口減少は下げ止まり、人口ピラミッドの形も改善して「成熟した社会」になると説明し、イクボスの必要性を訴えた。

「自分が時短で帰宅するのにみんなが残業していると、肩身が狭く、いかに意欲が落ちるか」を痛感したという自身の体験から、受賞者に共感しつつイクボスたちの取り組みに敬意を表した。

自社にイクメンを増やすために企業ができること

「イクメン企業アワード」受賞企業の取り組みから、男性が積極的に家事育児に参加しやすくなる「風土」作りに効果的なものを紹介しよう。

育児休業中の収入補填や育児にかかる費用負担など金銭面での支援や、在宅勤務の推奨などはもちろんだが、「養子縁組の場合の育児」といったマイノリティへの視座、「自社だけ働き方改革が進んでも、女性が時短で夫が長時間労働だと時短側に大きなしわ寄せがくる」という女性活躍の課題の本質を捉えたアプローチを見ると、まさに「社会を変革する先端にいる企業」である。

イクメンの最大の気がかりを払拭する、育児休業の有給化

育児休業を取得する一番の不安要素は世帯収入が大幅に減少すること。アクサ生命では育児休業の最初の20日間は有給とし、養子の場合は16週間の有給取得が可能である。

ソニーでは、育児休職と併用利用が可能な一律20日の有給休暇制度も。ヒューリックも育児休業最初の1ヶ月を有給としている。イクメンの最大の関心事とも言える、「無収入化」へのアプローチが功を奏していることがよく分かる。

これぞイクボス、上司の側から育児休業取得を促す

日本では男性の育児休業率はわずか3.16%であり、取得したとしても約半数が5日未満という現状がある。育児休業するというだけで出世に響くケースも少なくない。あわしま堂では、配偶者が出産した男性従業員に対して管理職から育児休業の申請を促し、計画的な育児休暇取得を推進している。

ヒューリックでは、育児休業取得者に対して「取得してくれてありがとう」と上司や人事から感謝する文化も根付いているとか。イクボスを目指すなら、ぜひ見習いたいスタンスである。

イクメンに対する、強いセーフティネットを構築

ヒューリックでは、ベビーシッター、学童、病児保育など育児サービス利用料の補助を行っている。あわしま堂でも、育児休業を1ヶ月以上取得した場合には保育料の補助手当として最大10,000円を支給。

仕事と子育ての狭間で心身疲弊しがちな”突発的な有事”の際、セーフティネットが用意されているだけで会社へのコミットメントも随分上がるのではないだろうか。「イクメン」は、会社のサポートがあってこそ成り立つのかもしれない。

他社を巻き込み、「イクメン」「イクボス」を増やしていく

妊娠中の女性のパートナーは、往々にして社外の男性である。アクサ生命で実施している「産休前面談」では、女性従業員の他社に勤務するパートナー向けに育児計画についてアドバイスを行なっている。

「自社だけ働き方改革が進んでも、女性が時短で夫が長時間労働だと時短側に大きなしわ寄せがくる」という視点は、まさに女性活躍の本質である。「イクメン」「イクボス」を多数排出するためには、企業という枠組みを超えた連携が必要なのかもしれない。

イクボスは、スキル表の活用

ソニーやあわしま堂でも共通していたのが、スキルを可視化し他の人でも業務を代替する仕組み構築に役立てることで、業務時間の平準化や短縮を試みている。

誰かが抜けても仕事が止まらない、また抜けた人も引け目に感じなくて済む、体制づくりをできることこそ、「イクボス」の真髄かもしれない。

ボトムアップで改善策を出す

あわしま堂では、改善提案シートを1枚提出につき、300円の報奨金を支給。業務改善の案を現場から出せる仕組みを作り、年間4000件以上の改善提案がある。

ソニーでは「じかんPJ」を発足。「会議30分以内」や「会議5分前終了ルール」「17:30以降の会議設定原則禁止」など、各職場の実態に応じた取り組みを職場ごとに主体的に最適解を模索し、コア業務にかけられる時間を増加させているという。

ファミリー見学会の実施

子どもの職場見学を受け入れると従業員同士の理解が深まり、子どもの急な病気のときにも「あの○○ちゃんが病気なのね、早く帰ってあげて」と自然な会話が生まれやすくなるという。

休暇を取得したときだけの「一時的なイクメン」では、課題の本質的な解決には至らない。こうしたヒューマンな温かみある周囲の理解があれば、「継続的にイクメン」であることを目指せるのだ。

「無意識のバイアス」に対する研修実施

家事育児の主担当は女性であるといった固定的役割分業意識は、無自覚に持っている場合が多い。男性が残業していても誰も何も言わないが女性が残っていると「お子さんは?」と聞いたり、男性たるもの大黒柱として稼がなければならないというのもその一例。

「40代後半〜50代のマネジメント層には奥様は専業主婦という方も多く、育児は女性の仕事だとどこかでに出ている。悪気はないけど態度に出てしまう」と根強い男女役割意識に課題感を持つソニーでは、自分のジェンダーバイアスに気づくための研修を管理職向けに実施している。

イクボスになるためには、まず「自身が無意識に持っているバイアス」に気づき、それを取り払っていく努力を要する。イクボスは1日にして成らず、不断の努力が求められている。