高リスクなICOを凌駕する、社内仮想通貨で働き方改革に成功した事例

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記事の情報は2017-10-30時点のものです。

リソースの獲得や競争に有利な機会創出のための飛び道具としてICO(新規仮想通貨公開)が脚光を浴びているが、競争力向上や業績のV字回復に効果的で堅実な方法は「社内仮想通貨」を活用した働き方改革である。ノーリスクで効率化と残業削減を両立できるのだ。

フィンテック技術の社内通貨の可能性を広げたカブドットコムの事例

さらに社員通貨は進化しつつある。三菱UFJフィナンシャル・グループの子会社であるカブドットコムが導入した社内通貨「OOIRI」は、フィンテック技術を活用している。社内通貨の可能性を広げる事例になるだろう。

カブドットコム「OOIRI」

カブドットコムでは残業しないで帰宅した場合、1日1万歩以上歩いた場合などにOOIRIをインセンティブとして支給する。社員に感謝の気持ちとして贈ることもできる。

社員ひとりひとりの勤務状況を確認してポイントを付与するのは運用負荷がかかるが、ジオフェンシングという技術を使い、タイムカードではなく位置情報をもとに勤務状況を確認し、定時で帰宅した場合は自動的にOOIRIを付与する仕組みになっている。

ビットコインと同じブロックチェーン技術を利用

さらに、このOOIRIはなんとブロックチェーン技術が使われている。ビットコインと同じ暗号通貨なのだ。前章でも触れたが、ブロックチェーン技術を利用すれば、偽造がされにくくなり通貨としての信用性が高まる。

この高い信用性を活かして、OOIRIを会社周辺の商店街で使用できるようにする予定だという。通貨の信用性が高まることで、流通する範囲を社外に広げることができる。社内だけでなく、地域の経済が活性化することも期待でき、「地域通貨」の役割を担っていくことが期待されているのだ。

アイデアいろいろ、無限の可能性を秘める社内通貨

社内通貨の活用方法は無限大だ。OOIRIのような暗号通貨なら社外に売り出して資金調達をする、いわゆるICOもできる。出資者には会社から自社製品プレゼントなどの優待を受けることができ、会社が成長して需要が増えれば通貨の価値が上がる楽しみもある。

暗号通貨でなくても、社内で高価な機材が必要だった場合などにクラウドファンディングの形式で社内通貨を募り、購入に充てるやり方もできるだろう。

稟議ではなかなか通らなかったアイデアも、社員の出資によって資金調達できればフィジビリティとして事業化を実現できることもあるだろう。

あるいは「社長があなたの話を30分聞く権利」「休日にお子さんを預かります」というサービスを売りに出して社員に買ってもらうといったマーケットプレイスを主催すれば、社員同士の交流も深まるに違いない。

社内通貨の一番の醍醐味は「ワクワク感」

社内通貨の一番の効果は、業務や生産性向上はもちろんルール遵守に至るまで、「やらされる」感をなくすことではないだろうか。

社内通貨のインセンティブによって自分から選び取った、と納得できる。「仕方なくやる」から「喜んでやる」へ。社員の利益享受の実感を伴う社内通貨は、新しい働き方づくりに効果を発揮するだろう。