パナソニック「働き方改革支援」に疑問符、日本型雇用はもう限界だ

「業務習慣を『見える化』し、業務の無駄をなくしたり負担が重すぎないかをチェックする」というパナソニックの働き方改革支援ツールだが、果たして「監視の強化」だけで働き方改革が進むのだろうか?多様な働き方を実現するために本当に必要なのは、日本型雇用の改革だ。

パナソニック「働き方改革支援」に疑問符、日本型雇用はもう限界だ

パナソニックの"おかしな"ツール

パナソニックは、働き方改革を何だと思っているのだろうか。

時間や場所にとらわれない働き方や残業抑制を推進する一方で、テレワークのツール開発に着手し、対外的もサービスを展開したいという。それは、業務用の各種ソフトウェアにおける使用時間を計測し、自動で記録するというもの。これによって、会社は、働き方を「可視化」して、仕事の状況をチェックできるというわけだ。

パナソニックでは、これを「業務習慣を『見える化』し、分析・改善に役立て、また社員が業務の無駄をなくし、負担が重すぎないかチェックが可能」と考えているようだが、上手く行く気が全くしない。このようなツールが、はたして働き方改革の本丸となっている生産性向上に本当に寄与するのだろうか。

スマホやタブレットの普及につれて、自宅や外出先で仕事をするシーンは増えた。BYODなどの概念も登場し、それにともない公私混同を避けるために業務と関係のないアプリケーションの起動、私的なソーシャルネットワークへのアクセスなどを物理的に遮断することも、仕事の生産性向上には必要だ。そうした課題ツールは以前からある。

また在宅勤務は、同僚や上司などの目がないうえに日本の住環境では公私を区別しづらく、ついつい集中力がそがれて生産性が大幅に落ちるリスクがある。テレワークに限らず、仕事をしながら私的なことを行うと集中力が削がれるのは誰しも経験していることだろう。

しかし、今回パナソニックが開発に着手しているとされたのは、インターネットに接続するすべてのデバイスの中身を精査し、それを操作する従業員を徹底的に監視下におくためのツールのように感じられる。

テレワークだと従業員が怠けるという性悪説のもとで徹底管理し、生産性を高めることを強制していこうと考える企業には、うってつけのツールだろう。ちなみにパナソニックと同じく日系メーカーのNECも、テレワークに顔認証を導入し、働いているかどうかシステムで管理する予定だという。

パソコンにつけたWebカメラで常時ストレスチェック

驚きはそれだけではない。なんとパナソニックは、パソコンにつけたWebカメラから顔画像を認識し、リアルタイムに脈拍を読み取ってストレス度を計測するサービスも予定している。一般的なコンピュータに付属するWebカメラでは、どうしても顔色がよく映らず、脈拍が正確に読み取れるかわからないが、それを加味せずとも、これもおかしなツールだ。

2016年に登場した、Webカメラ上で映像に自動でメイクをほどこしてくれたり、家の中が見えないように背景をぼかしてくれたりするツールは、資生堂とマイクロソフトの共同開発なのだが、社員のニーズを深く掘り下げており、在宅でWeb会議に参加する従業員にはすこぶる評判が良い。メイクが必要な女性社員だけでなく、男性社員も顔色がよく映るため利用満足度が高く、これからの時代、欠かせないアプリとして普及することだろう。

パナソニックの働き方可視化ツールが滑稽なのは、そうした社員の潜在的なニーズの本質を汲み取らず、労働集約型のビジネスモデルはそのままに、ただいたずらにITを導入しようとするからではないだろうか。

2015年12月から、厚生労働省によって会社には従業員に対するストレスチェックが義務付けられた。社員のストレス管理をサポートし、メンタルヘルスをケアしていかなければならないのだが、それをツールで実現しようとしているのだ。あくまで会社側からみた都合のみを考え、そうした監視下におかれることこそが従業員のストレスの源泉だということを、パナソニックは理解していないのか。

ちなみにパナソニック子会社のパナソニックソリューションテクノロジーでは、ビーコンで従業員の位置情報を把握し、歩数や失眠状態などのチェックツールを展開している。これらも、最新テクノロジーで従業員を監視下に置くという「徹底管理傾向」が伺える。