セールスフォースやBoxはなぜ強いのか?勝てるSaaS企業「5つの共通点」

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記事の情報は2017-11-02時点のものです。

Sansanプロダクトアライアンスマネジャー山田 尚孝氏による本連載のテーマは、「強い法人向けクラウドサービスの正体に迫る」。第1回目は、サービスそのものであるプロダクトについて、勝ちパターンの裏側を語っていただきました。

5. エンジニアを引きつける手段としてのミッション

プロダクトの継続的改善を行うには十分な開発リソースが必要です。そしてスピーディーな開発を行うには、自社でエンジニアを確保するほうが有効です。では優秀なエンジニアを多数、自社で抱えるにはどうしたら良いでしょうか?

その答えは、自社がエンジニアにとって魅力的な会社になることです。ではエンジニアにとって魅力的な会社とは何でしょうか? 私はエンジニアからキャリアをスタートしたので、エンジニアの気持ちはそれなりに分かるつもりですが、ここは王道的にまずは世間の調査結果を調べてみましょう。以下は2015年10月8日に公開された、マイナビ転職「ITエンジニアの転職意識調査」の結果です。その中でも私が着目したのは、「関わりたいプロジェクトの条件」でこの回答にはエンジニの仕事に対する欲求が如実に現れていると思われます。

この中の回答の多くは技術習得、キャリア形成にまつわるものであり、エンジニアの技術に対する純粋な欲求が見て取れます。 しかしその他で注目すべきは以下の2つです。

• 世の中の役に立つものを開発できる
• イノベーションを起こすものを開発できる

私の経験からも、技術者は技術の追求に貪欲であり、技術者として成長できるか?が興味の範囲であることが多いのですが、実は優秀なエンジニアであればあるほど、単なる技術オタクを抜け出し、その技術をどのようにビジネスに転嫁するかを考える傾向があります。企業側としては優秀な技術者を確保したいのですから、むしろ技術者としての成長を全面に押し出すよりも、世の中へのインパクトを訴求して惹きつけられたエンジニアの方が自社の要求とマッチしている可能性があります。

そして、エンジニアの採用には「サービス=会社≒ミッション」であることが活きてきます。冒頭に説明したように、このようなサービスを持つ会社はその存在意義や会社と社員が目指すべきゴールを完璧に語ることができるため、上記の希望を持つエンジニアには劇刺さりします。特にインフラエンジニアなどは、従事している事業がなんであってもやることはほぼ変わらないため、自分たちのやっていることの社会的意義がわからなくなることもしばしばです。しかし、このようにミッションとサービスの関連性を明確に説明できる会社の場合、自分たちのやっていることがどのように価値を紡ぎ出しているかをストレートに理解することができるため、そこに惹かれて入社を決めるエンジニアも少なくないのです。

※現に私の所属するSansanがそうです。「ビジネスの出会いを資産に変え、働き方を革新する」というミッションに共感して入社されるエンジニアは多数います

そしてこのことは優秀なエンジニアの確保しやすい → スピーディーな開発ができる→ サービスが進化する、と繋がっていきます。世の中的には単にスローガンとしてしか捉えられていないミッションも、ここまで関連性を帯びれば強力な武器となってその事業自体を後押ししてくれるようになります。以前ZOZOTOWNの前澤社長がWebメディアでのインタビュー中で、エンジニアの確保に苦労されていることをお話されていましたが、その中で「エンジニアにアパレル通販サイトを作る意義を説明しきれていない」と仰っていました。ミッションとサービスの整合性を取るのに非常に苦心されていることが伺える一言だと感じました。

まとめ

第1回では、強い法人向けクラウドサービス構成するその構成要素の一つであるプロダクトについて説明しました。そして世の中にインパクトを与えている強い企業は、以下のような特徴を持つことを見てきました。

  1. 多くは、法人名とサービス名が一致しており、かつOne Productである
  2. ミッションの具現化物としてのサービスが存在している
  3. 多様な業種・業態を超えた顧客層をターゲットにしている
  4. 継続的なプロダクト改善が行われている
  5. 優秀なエンジニアを引きつけるミッションを有している

第2回では、マーケティング&セールスについて見ていこうと思います。強い法人向けクラウドサービスを持つ企業のマーケティング&セールス部門がいかなる体制を持ち、いかなる活動を行いながら市場を拡大しているかを見ていきたいと思います。

本連載記事を読む
#01 セールスフォースやBoxはなぜ強いのか?勝てるSaaS企業が持つ「5つの共通点」(2017/11/20公開)
#02 Sansanが最重視する、カスタマーサクセス機能「3つの役割・4つのアクション」(2017/12/4公開)