ポカリスエットはなぜ「ラマダン明け」に売れたのか?国内ブランドが海外で勝ち残るには

いまナショナルブランド・メーカーは、取引相手の食品スーパーやコンビニやファストフード店向けに、食材の調達加工をローカル対応にせざるをえない状況だ。法政大学 経営大学院 教授の小川孔輔氏が、大塚製薬やキッコーマンの例を挙げた。

ポカリスエットはなぜ「ラマダン明け」に売れたのか?国内ブランドが海外で勝ち残るには

マーケティングの歴史は「三段階+1」で発展。次に来るものは?

「日本マーケティング学会」に登壇した小川氏は、ナショナルブランド・メーカー(以下、NBメーカー)の地域対応戦略を考える前に、これまでのマーケティングの発展史をヒモ解いて解説した。

法政大学 経営大学院 教授 兼 一社日本フローラルマーケティング協会 会長 小川孔輔氏


マーケティング史家のR.S.テドローは、自著の「マス・マーケティング」のなかで、マーケティングの誕生と発達の歴史を3段階に分類した。それは「分断の時代」「統一の時代」「細分化の時代」だ。

同氏は、これを醤油メーカーのキッコーマンを例に挙げて説明した。

「戦前まで、キッコーマンはローカルなメーカーだった。醤油というカテゴリーで当時はNBメーカーは存在せず、市場は分断されていた。しかし複数のメーカーが全国展開を果たし、スケールメリットにより味も大きく改善された。さらに広告を打つことで、地方の小さな醤油屋が駆逐され、NBメーカーが全国市場の数割のシェアを占めることになった。これが統合の時代だ」(小川氏)

このように全国市場が現れると、次に勝ち残ったメーカーは、従来と異なる商品を出すようになる。全国を視野に入れると、顧客の好みも異なるからだ。

「NBメーカーが総取りするには差別化が求められる。そこで細分化の時代へ流れていく。しかし全国規模で大きくなったNBメーカーは、これで終わらない。次の四段階目で世界に打って出ようとする。これがグローバリゼーションの時代だ」(小川氏)

大塚製薬のポカリスエットが「ラマダン明け」に売れるワケ

ではグローバライズしたメーカーは、海外でどんな活動をしているのだろう? 同氏は複数の事例を挙げて説明した。

たとえば、大塚製薬の「ポカリスエット」といえば、誰もが知るヒット商品だろう。同社の売上の50%は海外で占めているが、そのなかで特に成功しているのがインドネシアだ。発売当初、ポカリスエットはシリアスなランナー向けの商品として発売されたが、その後、一般向けに水の代替品として展開された。

「しかしインドネシアでは売り方が日本と異なっている。実はラマダン明けのドリンクとして販促中だ。断食後の飲み物として、水より体に良いという発想だ」(小川氏)

キッコーマンも米国で海外展開を果たしたが、日本と同じ売り方をしなかった。醤油としてではなく、それを加工した「テリヤキ」のコンセプトで、シーズニングの一種として展開した。これが成功要因のひとつになった。

また資生堂の「オプレ」は、中国専用ブランドとして、傘下の資生堂麗源化粧品有限公司が現地商品化したものだ。

「これまでも中国人の肌に合うように何度かリニューアルしてきたが、中国は国土が広大で南北で乾燥状態も異なる。そこで北京と上海など南北でスキンケアの訴求を変えている」(小川氏)

吉野家の牛丼も日本と海外では売り方が違う。日本ではカウンターがT字型になっているが、海外はテーブル席に変更し、マクドナルドのように対面式でパネルを見て注文する。またメニューも異なり、米国やアジアでは「ミックスプレート」を出し、牛肉だけでなく、豚肉などを混ぜて販売しているのだ。

小川氏は「このように日本から海外に商品展開をする際は、現地に合う売り方に変えている。しかし逆のアプローチで、日本国内でも同様に展開できるかどうか。その可能性はあるのだろうか?」と問題を提起する。