「現金お断り」キャッシュレスロイヤルホスト、店舗運営の働き方改革ロールモデル

現金お断りの飲食店が東京都内に誕生した。運営はロイヤルホールディングス(以下、ロイヤルHD)で、ロイヤルホストの系列だ。楽天ペイとの協業で完全キャッシュレスによる業務負担軽減を目指すという。開店して間もない11月9日に来店してみた。

「現金お断り」キャッシュレスロイヤルホスト、店舗運営の働き方改革ロールモデル

新型ロイホは、まったく「ファミレス感」なし

11月1日にオープンした店舗「GATHERING TABLE PANTRY 馬喰町店」。この店舗は、ロイヤルHDの生産性向上と働き方改革を目指し、次世代の店舗運営の研究開発を目的としてつくられた。

この店がソーシャルで話題になった時、「ロイヤルホスト」を運営するロイヤルHDが手がけることも広まった。しかし、GATHERING TABLE PANTRYに訪れてみると、いわゆるロイヤルホストのようなファミレス感はない。

44席のカウンターにふかふかタイプの椅子だが、全面モルタルづくりのテーブルである。

筆者は店舗を見て「あまり長居できるようなタイプの店作りではないな」という印象を受けた。

たとえば、食事をとるテーブルが固い。これは客数の回転を早めるためだろうか。ファミレスのようにダラダラと長時間滞在できるタイプの店ではないと感じた。

また、どこの座席も全スタッフから丸見えで、客としては彼らの視線が気になる。なんだか「食べたら帰ってね」というプレッシャーを感じてしまいそうで、ここで長居するのはなかなか厳しいだろう。

客層はほぼサラリーマン。一人客もちらほら見えるが、サラリーマン同士でペアとなって、何か仕事の話をしながら会話をしているグループ客がほとんどであった。あとは取材班が来ている。

複数人客が多いため、カウンターがメインの店だと席を一つ開けて座ることになる。そのため、回転数が落ちるのではないかと心配した。ファミリー客は一切いない。馬喰町という土地柄だろうか。

他のファミレス店舗との違いは?

クレジットカードが使える飲食店、電子マネーが使える飲食店は数多くある。では、GATHERING TABLE PANTRYは他の飲食店と何が違うのか。

それは完全にキャッシュレスに特化した店舗であるということだろう。

すでにオペレーションもキャッシュレス用に最適化され、店全体が労力をおもてなしとスピードに力を注ぐようできているのだ。

現金処理がなくなるということは、オペレーションに大きな影響がある。そもそも都心部では特にクレジットカードや電子マネーがかなり普及している。今は2017年の終わりである。いまどき、そこに特化した店がなかったほうが不思議なのだ。

ホールとキッチン「3人ずつ」で、店内業務はどう変わった?

まず、完全キャッシュレスになったことで、店内業務がどのように変わったかを見ていこう。

入店時

入店すると「キャッシュレス」と書いたボードを持った女性スタッフがやってきて、「当店はキャッシュレスチャレンジの店で現金が使えないのですが、よろしいですか?」と来店客にていねいに確認してゆく。

ホールで動き回っているスタッフの数は3人。若い女性ながら、とても慣れた様子で動いており、かなり研修をしたか、既存のロイヤルホストで優秀な仕事ぶりを発揮していたスタッフを連れてきたようだ。新人の動きとは思えず、非常に接客に慣れているのが見てとれ、好感を抱いた。

筆者は40分ほど滞在したが、その間に1組、現金が使えないことがわかり帰ってしまった客もいた。ていねいな確認がなければ、トラブルに発展しかねなかったので、先ほどの説明はさすがである。ちなみに、最寄りでチャージする際には近所のコンビニか、地下にある馬喰町の駅までいかねばならない。

筆者の滞在中には10名ほどの来店があり、そのうち1名は現金が使えないと聞いて諦めたので、10%程度は、ここがキャッシュレスの店であることを意識せずに来店したようだ。

着席、そしてオーダー

そして、着席するとスタッフがiPadを持って来て、ていねいにオーダーの仕方を解説してくれる。しかし、説明が長い。入店時の案内からオーダーまでかなりのおもてなし感があり、そこに時間を割いている様子だ。

日本の飲食店のおもてなしが過剰であり、クレームを極端に恐れていることが伺える。筆者は率直にいって、「キャッシュレスの店だから」ということで来店している。そのような客にていねいなiPadの使い方を教えることは不要ではないだろうか。実際、来店客でオーダーにモタついている人はいなかった。

しかし新規の来店客が相次ぐと、このiPadの解説に時間が取られ、待たされる列も軽くできていた。結局、親切すぎる解説は時間の無駄ばかりか、スムーズなオペレーション上も好ましくないのだ。特に他の客は気にしている様子はなかったが、筆者は少し気にかかった。

奥にはオープンキッチンが見える。3名のシェフで回しているようだ。ロイヤルHDの説明によると、「通常店舗ではピーク時に7人で運営している」とのことから、今回はオープン間もないということで、やや多めに人を配置しているのだろう。

時給1,150円、1日7時間勤務とした場合、ホール3人とキッチン3人で合計の人件費は1日あたり4万8,300円。通常のロイホが7時間営業するのに7人体制で時給1,000円だとして、7時間で4万9,000円。

今回は明らかに接客に慣れているスタッフだったため、時給を高めに見積もったが、それほど営業時間中の人件費は大差ないと感じられる。

なにより重大なことは、店を閉めたあとの現金精算と売上報告の業務だ。飲食では当たり前のこの店長業務は非常に負担が大きく、それがなくなるだけでもモチベーションに大きな差がつくだろう。

オーダーはiPadでスムーズに

先ほども見たとおり、オーダーはiPadとなる。メニュー数はそれほど多くない。今回は、ロイヤルホスト系列で有名なジャワカレーをオーダーした。値段は880円プラス消費税で950円。少し高い気がするが、調べてみると本家ロイヤルホストのジャワカレーは900円プラス消費税なので、20円ほど安い。


「都内ではカレー200円の店もある時代に……。」と一瞬思ったが、ガストでも800円前後するため、外食でちゃんとしたカレーを食べようとすると、今はそこそこお金がかかる時代だ。それに、単価が高いことは悪いことではない。

15時のオープンと同時に入ったため、店内はワンドリンクプラス一品を頼んでいる様子だった。客単価1,200円~1,500円といったところか。

夜になり飲み客が増えると、細かい一品の注文が増えることが予想され、そうなると客単価は2,500円前後に伸びるだろう品揃えだ。回転数さえ伸びれば悪くない単価だろう。

座席44席で7割埋まり、90分滞在したとしてアフターファイブの時間から5時間で売上およそ1日あたり29万3,000円である。

おもてなしに力を注ぐ

途中、カバンを入れるボックスを持ってきてくれたり、お水をひんぱんに換えてくれたり、おもてなしはかなり行き届いている。

ロイヤルHDの説明によると「現金やりとりの負担がなくなったぶん、接客に力を入れることができる」とのこと。たしかに、オペレーションに慣れた様子の3人のウェイトレスがテキパキと動き回っている。

しかし、ジャワカレーはなかなか到着しない。不安になって、オーダーが通っているか確認してしまった。これではタブレット注文の意味がない。

結局、7分かかった。他のファミレスのようにレンジで温めていないだけマシだと自分に言い聞かせ、実食に入る。実際、店で調理しているとウェイトレスは話してくれた。

ロイホでも厳選されたメニュー

ジャワカレーは美味しかったが、950円は決して安くない。コーヒーもファミレスのような飲み放題はなく、432円と少しばかり懐に痛い。

15時台という時間だったためか、食事を頼んでいる人は少なく、ほとんどがコーヒーか、どさくさに紛れてハイネケンを飲みながら仕事しているサラリーマンだった。

社内ルールがどうなっているかはわからないが、木曜日の昼下がりから飲めるのは、それが認められるなら良い。しかもかなりのおしゃれ感で罪悪感は少ない。コーヒーが高いからどうせならお酒にしたという言い訳も立つ。

ジャワカレーやコーヒーのほかにも、ペンネ、手作りポテトサラダ、パンチェッタ、焼きブロッコリーと、ロイヤルホスト系列でも味に力を注いでいるラインナップだった。ビールやワイン、カクテルもある。