中小企業「働き方改革」の進め方を人事労務の専門家が解説、労働基準法改正前に行う3ステップ

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2019年4月以降に労働基準法の改正が予定され、働き方改革は待ったなしだ。しかし、具体的に何から始めればよいのか、特に中小・中堅企業ではとまどう企業が多い。ここでは、労務リスク回避と労働生産性の向上という観点からみた働き方改革の進め方を解説しよう。
中小企業「働き方改革」の進め方を人事労務の専門家が解説、労働基準法改正前に行う3ステップ

労基法改正で一体何が変わる?企業がいま考えるべきこと

大手広告代理店・電通の新入社員が過労死した事件が取り沙汰されるなど、長時間労働が大きな社会問題になっている。これは大企業に限った話ではなく、中小企業であっても同じような課題を抱えているのではないだろうか。

「現在、働き盛りの30代男性のうち、2割弱が過労死ラインの月80時間を超えた時間外労働を行っている。長時間労働の労務リスクが、ますます高まっている」と危惧するのは、「奉行フォーラム2017」の基調講演に立った社会保険労務士法人 迫田・村上リーゼンバーグ 合同会社 労務トラストの村上 剛久氏だ。

社会保険労務士法人 迫田・村上リーゼンバーグ 合同会社 労務トラスト 代表社員 特定社会保険労務士 村上 剛久氏

長時間労働のリスクに対する考察

同氏によれば、長時間労働のリスクは「内部環境」と「外部環境」の2つの視点から考える必要があるという。

外部環境と内部環境の2つの視点から労働環境を捉えた図

すでに厚生労働省では、長時間労働の指導に従わない企業に対して、Webサイトに企業名を掲載する方針を打ち出した。そういった企業はブラックなイメージがつき、新入社員が来なくなる恐れがある。長時間労働が恒常化すれば、社員の心身が不調をきたし、休職退職者が続出するかもしれない。

村上氏は「こういった状況は損益計算書に現れないが、とても大きな損失になる。労務リスク・損失を回避するために、いまこそ働き方改革を実践する必要がある。国は、本格的に労働時間の規制に取り組んでいる」と指摘する。

長時間労働に対する国の規制

今年1月に公開された労働時間適正把握ガイドラインでは「使用者には労働時間を適正に把握する責務がある」と明記されている。例外規定の自己申告でも、その申告と実際が合致するかを必要に応じて調査し、誤りがあれば所要労働時間を補正するというルールが定められた。

また、労働基準法(以下、労基法)の改正案が2019年、あるいは2020年に施行される予定だ。ここで残業時間の上限規制や60時間超の残業代割増、有休5日消化の義務化などが盛り込まれる予定で、経営者や労務担当者には法規遵守の重圧がのしかかる。

2019年あるいは2020年までに施行される予定の労働基準法改正案のポイント

社員に残業をさせる場合には、いわゆる「36協定」を所轄の労働基準監督署に届けなければならない。労働延長の限度時間は「月45時間、および年間360時間」と決められているが、事情がある場合には特別条項を締結できる。

その際、延長時間の限度は定められていなかった。そこで、労基法に上限(年間720時間、月単100時間、2か月ないし6か月の平均80時間以内など)を明記し、その実効性を罰則付きで強化する。

また、現在は残業時の割増率は60時間を超えると50%増だが、これまで中小企業にはインパクトが大きく、適用されていなかった。年次有給休暇も必ず5日は消化させなければならない。これらについても法改正で適用される。

「いずれにせよ、経営者は優先順位をつけ、企業に合った働き方改革を進めなければならない。まずは労務リスクの回避と労働生産性の両立という難題に対し、1年程度で段階的に取り組む必要がある」(村上氏)