フェイスブック、テスラ、アップルに共通する「売れる新製品」を世に広める方法

高機能VRヘッドセットOculus Riftに続き、手ごろで使いやすいOculus Goを発表したフェイスブック。洗練された製品ロードマップで新しい製品カテゴリを創造できるのは、テスラやアップルにも共通する、米国企業の強みだ。

フェイスブック、テスラ、アップルに共通する「売れる新製品」を世に広める方法

フェイスブックの新製品「Oculus Go」に寄せられるVR普及の期待

米フェイスブックは2017年10月、VRヘッドセット「Oculus Go」を発表した。単体で動作するのが特徴で、スマートフォンを組み合わせたり、高性能PCに接続したりする必要がない。設定の手間が省けるため、手軽にVR環境が楽しめるのが利点だ。

フェイスブックが発表した新たなVRヘッドセット「Oculus Go」

Oculus Goの価格は199ドルで、Oculus Riftに比べて安価に設定されている。2016年に発売されたOculus Riftは、高解像度の画面やスムーズなVR体験が提供できるものの、399ドル(約5万円)と高価なため、熱狂的なゲームファンなどのコアユーザー層に利用が限られていた。

加熱するVR市場においては競合も多く、低価格帯のVRも数多く登場している。たとえば、Samsung Gear VRやGoogle Daydreamは、同製品に対応するスマートフォンをヘッドセットに搭載して利用する。いずれも本体価格は1~2万円程度と比較的安価に購入できるので、はじめてVRを体験するには手ごろだ。しかし、長時間継続して使うほど洗練された機能は提供されていない。

Oculus Goは、低価格のモデルでは満足できなかったユーザーも、高価格帯には手が出せなかったユーザーにとっても新たな選択肢をもたらす。とくに、高い解像度の画像を単体で楽しめるというユニークな機能に期待が集まっている。

一般消費者のニーズに応えられるであろう使いやすさと買いやすい価格を備えたOculus Goは、VRの普及を後押しするだろう。ゲームや映像コンテンツの開発もさかんになり、VR市場の広まりが期待される。全世界のVR市場は2016年の20億ドルから毎年54%と大幅な成長が予想され、2022年には268億ドルまで拡大するとの予測もある。

フェイスブックは今後、「Santa Cruz」と呼ばれるさらに高性能な製品モデルの開発も噂されている。Oculus Riftのような高機能性と、Oculus Goと同様に単体で動作できる手軽さが両立できるモデルだ。フェイスブックはSanta Cruzの投入を含め、10億人のVRユーザーを創り出すというビジョンを示している。

イーロン・マスクとスティーブ・ジョブズに共通するロードマップの描き方

「新しい製品カテゴリの創造」は、多くの起業家が夢見る挑戦だ。これまで存在しなかったものを創り出し、新たな体験を提供すれば独占的な地位を手にでき、ビジネス的な成功が約束されるからだ。

しかし、当然ながらその挑戦は困難を極める。だれも見たことがない製品を前にした消費者は、それをどう使えばよいか、あるいはどんなメリットがあるのかを理解できないため、お金を払って手に入れようとは思わないからだ。

VRは比較的新しい製品カテゴリであり、消費者はVRでどんな体験ができるかを半信半疑に思っている。それが近年、Oculus RiftやPlayStation VRなどが登場してメディアでもVRが取り上げられる機会が増え、徐々に興味を持つ人があらわれはじめた。

高機能の製品モデルを発表して、その魅力を知らしめた後に、より買いやすい価格帯の製品モデルを投入して新しい製品カテゴリの普及を図る。今回のOculus Goの戦略によって、より多くのユーザーを獲得する可能性がある。

このフェイスブックの戦略は、これまで名だたる米国のエクセレントカンパニーでも採用されてきたものだ。有名な例は、2006年にテスラモーターズCEOのイーロン・マスクが自身のブログに掲載した「マスタープラン」である。

  • スポーツカーを開発する
  • そこで得た収益を使って、より手ごろな自動車を開発する
  • そこで得た収益を使って、さらに手ごろな自動車を開発する
  • 上記を行いながら、ゼロ・エミッションの発電システムを開発する

イーロン・マスクは、どんな製品でも開発当初は1台あたりの開発コストが高くなってしまう点を指摘している。はじめから薄利多売を目指すと利益が確保できない。そこで、消費者が喜んでプレミアム価格を払いたいと思えるような製品をはじめに手がけ、資金的な余裕を得る。

そして、開発コストを最適化した後で、手ごろな製品モデルへ移っていくという戦略は理にかなっている。

なお、この戦略を遂行したイーロン・マスクは、2016年に今後の10年を予見したマスタープランの第2弾も発表している。

量産型の電気自動車として作られたテスラのModel 3。価格は3万5,000米ドルからで、テスラの電気自動車のなかで一番安価だ

スティーブ・ジョブズが復帰した後のアップルも、これと同様の戦略をとっていたとされる。

当時のアップルは、プロ向けのマッキントッシュ(デスクトップ)とパワーブック(ラップトップ)を提供する一方で、一般消費者向けのiMacとiBookを発売。デザイン性に優れるアップルが、Windowsからの乗り換えユーザーを生み出し、そして、この戦略に成功したアップルの快進撃はだれもが知るとおりだ。