アマゾンはなぜ勝ち続けられるのか?ジェフ・べゾスに学ぶ「後悔を最小限にする思考」

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ECサービス最大手として君臨するアマゾン。しかし、2000年前後はアマゾンと似たECサービスが雨後の筍のごとく誕生し消えていった。 アマゾンはEC業界で圧倒的な立場を築き上げたわけだが、その要因の一つが、CEOジェフ・ベゾスの行なってきた「とある思考」だ。

「後悔を最小限にする思考」を支える「カズオ・イシグロ」の小説

アマゾンの実店舗書店「Amazon Books」にベゾス氏の5冊の推薦図書の一冊として『日の名残り』という本が展示された。べゾス氏の推薦文は「私の大好きな本。どんなにノンフィクションを読んでも得られない、人生の後悔による悲しみやリスクを教えてくれる」だった。

『日の名残り』は日系英国人の小説家カズオ・イシグロ氏が執筆した本だ。イシグロ氏は2017年10月5日ノーベル文学賞を受賞したことで記憶に新しい。イシグロ氏の小説はどの国の人が読んでも共感できる普遍性あるテーマが伏在している点が特徴である。

推薦文にあるように『日の名残り』は「後悔」がテーマである。小説の主人公は執事としてプロフェッショナルな仕事をしてきたスティーブンス。しかし、仕事以外のことはそっちのけ。好きだった同僚の女中頭に自分の好意を伝えることができなかったなど「ああしておけばよかった」という後悔を多数引きずっている。

イシグロ氏は、小説が持つ役割について次のような見解を示している。小説が持つ役割とは感情を物語に載せて運ぶということだという。

「この時代、人々は、情報に事欠くということはありません。素晴らしいジャーナリストや歴史家たちによる見事なルポルタージュなどもたくさんあります。しかし、その一方で、ある事がらについて、ともに感情を共有する空間も必要だとわたしは思います。事実を知るだけでは、十分ではありません。世界のどこかで人が餓死している、という事実を知ることだけでなく、たとえば、そうした環境で育つことがどういうことなのかを感情において知ることもとても大切です。小説や映画、あるいは演劇といったものは、そこで大きな役割を果たします。」

(引用:「時空を超えて伝わる『感情』を描き出す」作家、カズオ・イシグロの野心

ここで、小説の話をしたいわけではない。『日の名残り』は小説であるがゆえにべゾス氏の感情を強烈に揺さぶった。「絶対に晩年に人生を後悔するような人生を送りたくない」と「後悔を最小限にする思考」が強化されたのだ。

べゾス氏の「後悔を最小限にする思考」が小売を変える

べゾス氏の執念ともいえる「後悔を最小限にする思考」は今後もアマゾンが長期的視野に立った事業やサービスを続々と誕生させる原動力となるだろう。

アマゾンはドローン配送、AIによる無人コンビニ「AmazonGo」をはじめAI、IoT、クラウド、ビッグデータなどの最新のテクノロジーを結集させた事業やサービスを立ち上げている。

短期的に見ると、これらの事業やサービスがすぐに利益につながるとは考えにくい。しかし、長期的視野で見ると近い将来の小売や物流のスタンダードになる可能性は高そうだ。

アマゾンが続々と変える小売業界、それも、もとをたどればべゾス氏の「後悔を最小限にする思考」から。そんな風にアマゾンを見ると、また違った一面が見えてきて面白い。