数値化できなきゃ幹部失格ーーソフトバンク社長室長が孫正義から学んだ「成功の3要素」

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ソフトバンクでADSL事業を立ち上げ、その後も重要プロジェクトにいくつも携わった三木 雄信氏は、成長するマーケティングで重要な3つの要素は「ゴール志向」「数値化」「すごいPDCA」だという。それらはどういうもので、どう実践すればいいのか。その秘訣をシャノンマーケティングカンファレンスの基調講演で語った。
数値化できなきゃ幹部失格ーーソフトバンク社長室長が孫正義から学んだ「成功の3要素」

ADSL事業でモデムを配るキャンペーンを成功させた三木氏

いわずと知れた日本を代表するグローバル企業、ソフトバンク。同社は1981年9月、孫 正義氏(以下、孫社長)が学生ベンチャーとして創業。当時、存在していなかったPC向けソフト流通というビジネスからスタートし、のちにメディア事業に進出。

2000年代に入ると、突如ADSLによる通信事業に参入し、業界に破壊的イノベーションをもたらした。さらに日本テレコム、ボーダフォンの買収を経て3大モバイルキャリアのひとつにまで成長、現在に至る。

三木氏は、孫社長に招へいされる形でソフトバンクに転職し、ADSL事業の立上げをはじめとするいくつもの事業に携わった人物である。

トライオン 代表取締役 三木 雄信氏

とくにADSL事業では、100万台のモデムを赤い袋に入れて該当で配布するという画期的なキャンペーンを展開。1000社を超える代理店をコントロールする当時としては画期的なマーケティングを成功させた。

マーケティング・オートメーション(MA)やBIが無い当時に、さまざまな試行錯誤をした結果、キャンペーンは成功し、その後のモバイル通信事業の礎となった。

三木氏は、孫社長のビジネス手法と自身の経験から、さまざまなマーケティングにも有効な3つの重要な要素を発見したという。それこそが(1)ゴール志向、(2)数値化、(3)すごいPDCAの3つである。

孫社長が「事業継承」以外の目標を達成したゴール志向の極意

三木氏は「ゴール志向とは、何事にもゴールを設定して取り組むことだ」と語る。

「孫社長は、10代のころに人生50年計画という目標を立てた。20代に名を上げて、30代に1000億円を調達する。40代に勝負をかけ、50代にそれを完成させる。60代で事業を継承する。というそれぞれの年代別ゴール設定をした」(三木氏)

2017年8月に60歳を迎えた孫社長だが、「事業をだれかに継承する」こと以外は、すべて達成している。

ゴールを設定し、それを達成するためにさまざまなことが逆算できる。ゴールが明確であれば、そこまでのスケジュールや戦略も立てられる。これこそが、ゴール志向のポイントなのだ。

「ゴール設定のスパンは、10年単位である必要はない。大きな目標や目安は、上記の例のように10年ごとに行うが、スケジュールや戦略はもっと短い単位で考えた方がいい場合がある。年単位、月単位、最終的には日単位でのゴール設定も重要だ」(三木氏)

大きな目標や節目は変わらないが、物事はすべて思惑通りにいくとはかぎらない。軌道修正やその都度の最適な戦略やスケジュールに柔軟に対応するには、短いスパンのゴール設定が必要、というわけだ。

「多変量解析できないと幹部失格」孫社長が命じた数値化

三木氏は、孫社長と仕事をしていた当時のエピソードに言及した。

「1980年代、孫社長は『多変量解析ができないやつは経営幹部失格だ』と述べていた。技術的な分析や計算の場面だけでなく、マーケティングや経営オペレーションにも科学的手法と数値によるモデル化、定量化の重要性を認識しての発言だ」(三木氏)

近年はBIや MA、さらにはAIによる経営予測などが当たり前のようになっているが、1980年代には経営やオペレーション向けのマーケティングツールなどは一般的ではなかった。

にもかかわらずソフトバンクは、孫社長指導のもと企画書や決算資料をミーティングで徹底的に分析し、経営課題やマーケティングについて、数値的な指標とともに議論していたそうだ。

ソフトバンクでは当時、日時の情報ですべての事業部についての計画を精査していたという。孫社長の先見性がわかりやすくあらわれたエピソードである。

数値化は、時としてスローガンのような目標より直観的に評価できる。そのため、結果や状況が判断しやすい。ダメな状態の軌道修正、計画の見直しも迅速に行える。ゴール志向のオペレーションには欠かせない要素だ。