【図解】2018年問題「無期転換」への対策まとめ
では2018年、無期転換について、どのように対応するのが望ましいのでしょうか。有期契約労働者を雇用する会社は次のステップで対応を進めましょう。
(1)2018年問題の対象者を把握
まずは、対象となる有期契約労働者の状況を把握しましょう。部門別の対象者数、無期転換権の発生時期、業務内容などによって、選択できるアプローチは変わってきます。
すでに複数回契約更新を繰り返している有期雇用契約者は雇用継続への期待値が高いでしょう。
仕事の内容も労働時間も正社員とほぼ同等の業務に就く有期雇用契約者は、正社員との待遇差になにかしらの不満を抱えていることが多いはずです。
こういった方に極端な対応をすればトラブルにつながる可能性が高く注意が必要です。申し込みの一次窓口になりそうな中間管理職の方々には、対応いかんによってはトラブルにつながりかねないという危機意識を持つよう働きかけておく方が賢明でしょう。
(2)方向性の決定
次に、会社や部門・職種ごとに方向性を決定しましょう。対象者から無期転換の申し込みがあった場合、大きく3つの選択肢が考えられます。
・正社員に切り替える
・無期雇用に切り替える
・雇用契約を終了する
無期転換の申し込みに対応する際の判断基準とポイントをまとめたので参考にしてください。
無期転換のうち以下のような理由で、正社員化は難しいが有期契約労働者とは待遇を分けたいというケースもあるでしょう。
・正社員とは業務内容が異なる
・労働時間が正社員と比較して少ない
この場合は、準社員やパートナー社員などの名称で新たな雇用区分を設け、取り扱いを分けることがおすすめです。
企業によっては希望者全員を切り替えるのが難しいという切実な背景を抱えていることでしょう。
この場合は属人的な判断ではなく、過去の人事評価の結果をもとに判断する、昇格テストを行いその結果をもとに判断するなどの客観的な判定を取り入れましょう。
客観的な説明があれば、対象者の納得感は得やすいと思います。
(3)雇用契約書の見直し
前述の(1)(2)を踏まえて、次に行うべきなのは雇用契約書の再確認です。
無期転換を積極的に受け入れていく場合には、雇用契約書に無期転換を申し出る場合の窓口を記載しておくことで会社の姿勢を示すことができます。
選抜して無期転換を行っていく場合には、あらかじめ選抜の基準を記載しておくことで納得感を高めましょう。基準が公表されてあれば、企業側としても歓迎したい有期契約労働者が遠慮して無期転換の申し込みをしなかった、という事態も未然に防げる確率が高まります。
育休社員の代替要員など、あくまでも雇用期間は限定的で無期転換の可能性はない場合には、あらかじめ更新期間の上限を契約書に盛り込んでおくことで、認識の相違を避けることができます。
人事部門のマネージャーを務めた経験を振り返ると、会社や人事の認識と所属部門の上司の認識自体に相違があって有期契約労働者が困惑することも、少なからずありました。いずれも口頭説明でカバーできることではあるのですが、書面に盛り込んでおくことをおすすめします。
無期転換を機に、人材が育つ組織へシフトを
企業が有期契約労働者を抱えている背景や事情はさまざまです。
継続性が見えない補助的な作業を任せているため、無期雇用や正社員雇用は検討が難しいという場合もあるでしょう。この場合、業務マニュアルを整備し、短期的な労働者の入れ替えに対応できる体制をつくるほかありません。
もっと踏み込んで考えるのであれば、外部への発注や業務自体の見直しも検討が必要です。業務の効率化を助けるツールの導入や、ロボットを活用した業務の自動化も、今後は避けては通れないでしょう。
いずれにしても、はっきりしていることは有期契約のまま長期間雇用していくということが今後は不可能になるということです。
未曾有の人材獲得難を迎えたいま、この無期転換という新たな制度を前向きにとらえて人材育成にシフトしてはいかがしょうか。
5年を限度とした段階的な育成、無期転換の基準策定や転換可否の判断を行う体制を整えて、未経験の有期契約労働者を採用し、社内で育成し無期雇用や正社員雇用に切り替えていくという方法です。
非正規で働く方の約15%が、正社員雇用を希望しているがポジションが無いという「不本意非正規」です。正社員へのモチベーションが高い方なら育成コストをかけても長期的にはプラスに働くのではないでしょうか。
ぜひ、「2018年問題」をきっかけとして、働く方と会社の双方が「5年しかない」ではなく「5年もある」と受け止められるような労働環境をつくっていただきたいと願っています。