「CEOの情報がないなら信用するな」ICO専門家に聞く、詐欺を見分ける3つのポイント

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ICO専門家、柿澤氏に聞いた「詐欺案件の見分け方の3つのポイント」「ICO実施者の属性の変化」「投資家に提供する情報の変化」など今後のICOを語るには外せないポイントを余さず紹介します。現状やトレンドなども詳細に解説していただきました。
「CEOの情報がないなら信用するな」ICO専門家に聞く、詐欺を見分ける3つのポイント

仮想通貨・ICOメディア「ボクシルトークン」では、仮想通貨エコシステムの発展を目指し、日々情報発信しています。

今回は、新たな資金調達の方法として世界から注目されているICO(Initial Coin Offering)の現状のトレンドや詐欺案件の見抜き方についてICO専門家の柿澤 仁氏にインタビューしました。

1. ICOを行う企業の属性が変化

ーー2017年に入ってから海外・国内ともにICO案件の数が急増していますが、その中で信頼できるICOは増えているのでしょうか?

柿澤氏:信頼できる案件が増えているのかというのは正直わかりませんが、わかりやすい案件が増えてきているという印象を持たれているのは、既存のビジネスのためにICOを行うケースが増えてきているからだと思います。

ひと昔前は、今までだれも体験したことないようなプロダクトのためにICOするケース多かったので、だれも判断がつきませんでした。

しかし最近はプロダクトがあってある程度ユーザーがついているような会社がICOを行う事例が徐々に増えてきています。

そういう意味では本来VC(ベンチャーキャピタル)が担っていたフェーズにICOが入り込んできたと言えますね。一方でもちろん流行りに乗っかって簡単に資金調達しようとしている案件も増えているように思います。

ーー実際にVCがすでに出資している会社がICOを行うケースも増えてきましたね。トークンを購入する側としてもVCが入っていたり、プロダクトがすでにあったりするということは安心材料なのではないでしょうか?

柿澤氏:そうですね。やはりプロダクトが無い会社のトークンを買うよりかは、安心して買うことができます。また、VCがすでに入っていることで、入ってない場合と比較して事業のコミットメントがあることがわかります。

しかし、一方で現実感のあるものに投資するとICOの魅力が下がる気がしています。
 
というのも、これまでVCから調達できなかったようなレイヤーの会社がグローバルに資金調達できるのがICOの魅力だったはずが、VCから調達している会社が追加資金を得る程度の感覚でICOを行うともともとのICOの魅力が損なわれるからです。

また、従来の資金調達オプションが使えなくてICOをしている企業も増えている印象です。それこそクラウドファンディングのような形ですね。

2. 信頼を築くために「地道なマーケティング」が必要

ーー一方で信頼性を上げるための取り組みとしてどのようなものがあるでしょうか?

柿澤氏:結局クラウドファンディングにまだ近しいので、個人的にはチームが信頼できるかどうかがすべてだと考えています。

特にコミュニティに対して経営陣が真摯な対応をしているかという点が一番大切です。

直近ICOに関するメディアも出始めていますが、実は最終的なトークンの購買はTwitterやSlackなど、ICO実施企業との直接のやりとりから生まれるものがほとんどのように感じます。

そのためSNS上で購入検討者の疑問や不安に真摯に対応することが求められるわけです。

ーーいくつかの記事で見かけるうちに気になってきて、最終的にSlackやTwitterで企業とやりとりした上で購入に至るというカスタマージャーニーのイメージでしょうか?

柿澤氏:そうですね。

一年前とかであればまだICOはそこまで多くなく、ノールックで投資という方もいたようですが、最近は案件が多いことや、購入者側のノウハウや知識レベルも高まったきたことからカスタマージャーニーが長い傾向があります。

また情報が少ないので買うという決断がしにくいのかもしれません。

そのため、KYC(Know Your Client)プロセスやユーザーとのやり取りを堅実に行うことで信頼に足る企業だとアピールすることが大切になってきます。

マーケティングについて、ホワイトペーパーが重要だと思われている方も多いですが、実はホワイトペーパーを読んでいる人は、ほんの一握りです。

Slackなどの質疑応答でも、ホワイトペーパーに書いてあることを平気で質問してくる人が多い。そのため、ホワイトペーパーに頼らずにサマリーやアップデートをブログで発信するなどの地道なマーケティング、コミュニティ対応が信頼をつながると思います。

ーーICOというと「テクニカルでグローバル」な印象を受けますが、実際はかなり地道で「デジタル草の根活動」という感じなんですね。

3. インフルエンサーの活用は諸刃の刃?

ーー最近だとアドバイザーに有名な方を招へいしたり、インフルエンサーを囲っていくような企業も多いですが、こういったことも案件の信頼性を築くのに大事なポイントになりうるでしょうか?

柿澤氏:マーケティングの観点からは重要だと思います。

ICOを成功させるために、仮想通貨投資に影響がある人や事業的に影響がある人をリスト化してコンタクトしていく企業もあるほどです。

特に海外のICOコミュニティは案件を精査するとき、まずブロックチェーン業界のコアな人物が案件に関与しているかを見ます。絡んでないと、その時点で後は何も見ずに対象から外れることもあります。

私の場合はコアな人物の関与があってはじめて、トークンのメカニズムとコミュニティの質を確認するというように見ています。

しかし個人的にはインフルエンサーを用いることは諸刃の剣と考えています。

おそらくインフルエンサーを巻き込むと流入は爆発的に上がると思います。

しかしICOを行うようなフェーズの企業は、本来はまず限られたコアユーザーに対してプロダクトを提供することで、小さくプロダクトのPDCAを回して改善を行い、最終的に大きくローンチするというのが正攻法かと思います。

そこでインフルエンサーに依存すると、本来初期で集めるべきコアなユーザー以外にもインフルエンサーに刺激された層が購入します。

そのようなコアでないユーザーがノイズになってしまう懸念はありますね。

実際、ICOの後にトークンの価格が下がってくるとそういう人たちは騒ぎはじめて「(価格を保つために)プレスリリースをしろ」などの主張をしはじめるんです。

とはいえ仮想通貨を持っているひとにリーチしないとICO自体は盛り上がらないので、そのバランスは難しいと思います。

4. 「囲い込み」を行うトークン設計は望ましいのか

ーートークンの設計による良しあしはどのあたりにあるのでしょうか?

柿澤氏:その点はまだ「こう使ったらトークンって正解だよね」という答えが出ていないので難しいですが、ひとつ思うのはトークンを買わせた後にプラットフォーム内でそのトークンで何か買わせるという、決済の間にトークンを挟むのはいまいちだと思います。

わざわざ汎用可能な通貨を特定の目的にしか使えないトークンをビットコインなどで購入してそれを使うというインセンティブが生まれづらいからです。独自のトークンと比べたらビットコインやTポイントとかの方が決済には向いていると思うんですよね。

また、分散型にするなど、ブロックチェーンならではの要素を入れるか、後から利益を出しにくいオープンソースのシステムを作るか、既存の資金調達が利用しにくい方や企業が行うかという場合でない限りはICOを行うことの意義は薄いと思います。

ーー個人的にはトークンの発行体である企業・ユーザーの他に、マイナーのようなトークンのエコシステムを支えるユーザーの3者にとってメリットがあると持続可能な印象を持っています。結局、発行する企業だけが嬉しいという設計は、既存の企業の考え方と近くなってしまいますよね。

柿澤氏:そうですね。囲い込み的なものになるのはイケてないですね。そもそものブロックチェーンのコンセプトとずれている気がします。

5. 投資しない方がいい案件の見分け方「3つのポイント」

ーーICO参加したことない方は特に気になると思うのですが、投資を避けるべき案件の見分け方はあるでしょうか?

柿澤氏:まず前提ですが、ICOを投資と思わない方がいいと思っています。むしろ寄付とかクラウドファンディング程度の感覚で参加した方がいいです。

実はICOは税金などを考慮すると投資効率が悪いです。それでもICOに参加したい方にはいくつか案件の選び方があると思います。

1つ目は自分の頭で理解できないものには投資しないということです。

有名人や知人から聞いた話でなんとなく投資するのは危険です。アフィリエイターの方で盛り上げるだけ盛り上げて、ご自身は参加しない方とかもいるので。

2つ目にチームのCEO、CTOのバッググランドを調べてあまり情報が出てこない人は信用できるかが判断できないので投資はしません。

逆にその名前と「ネットワークビジネス」「詐欺」などのネガティブな情報を調べて、何かヒットするようであれば投資を控えた方が無難だと思います。

3つ目ですが、仮想通貨のコミュニティのコアな人すら騒いでない案件はやめたほうがいいですね。ある程度注目を集めている案件は少なからず騒がれるはずなので。

まず注目されている案件のなかで、どの案件が本当に良いのかという自己判断をした方がいいと思います。

自己判断できないなら、投資はけっしておすすめしませんが、それでもやりたいなら、ほとんどの案件では価値がゼロになると思って、さまざまな案件に数万円ずつ投資する。そのうちどれかが当たれば良い、というのようなやり方のようが良いかもしれません。

ーーホワイトペーパーのボリュームやコンセプトムービーの有無といった、情報開示の多さが信頼に比例するということはあるでしょうか?

柿澤氏:そこは実は一概に言えないです。

凄くしっかりホワイトペーパー書いてるところが、実はプロダクトの開発が進んでないのではないかということもありますし、見栄えをよくするのはだれでもできるので、そのボリューム感はあまり関係ない気がします。

ーーそうなんですね。最終的に上場するかという点は購入者としては気になるところだと思います。

柿澤氏:投資としてみるときは、内容がしっかりしているのと価格が上がっていくかは全く別の問題だと認識する必要があります。

100億を超えるような大型調達した案件がICO後にじわじわ下がってきたり、逆にICOで大型調達しなかったトークンがICO後に上がったりということもあります。

事業内容がいけているかどうかよりも実行してくれるか(案件が本当に進捗するか、しているか)どうかが一番なので。

6. ICOエコシステムに求められるプレイヤーとは

ーーICOエコシステム全体で見たとき、どのようなプレイヤーがいたら健全に発達するのでしょうか。最近だとICO格付機関のような構想も各所で聞きますがいかがでしょう。

柿澤氏:格付機関も、中長期的に見れば必要かもしれませんが、短期的にはネガティブなのではないかと考えています。

さきほども言ったとおり、ファンダメンタルズがしっかりしているということとトークンの価格が上がるということにあまり相関が無いので、格付けが本当に有効なのかという点が不明です。

あとは格付け会社が出てくるとそこに対価を払っていい格付けをつけてもらおうという動きが必ず出てきますし、そもそもそれすらも第三者の意見を鵜呑みにしているのと一緒なのであまり意味が無いかなと思います。

あくまでも参考の指標として案件を調査してくれるのであれば有効だと思いますが。

ーーたとえば、「一律の客観的な基準で案件を評価する」というのはあってもいいと思いますか?

柿澤氏:自分で調べるときの難易度を下げてくれるプレイヤーは良いと思います。

あとは技術的な部分の評価がわからないので、技術がわかる人がコードに対して意見を述べてくれると助かりますね。また、そういうひとはだいたい業界で有名な方であることが多いので、信頼しやすい構造になると思います。

いま立ち上がりつつあるICO関連のメディアはライトユーザー向けのものが多いのですが、ICOにある程度詳しいけどテクノロジーがわからない人のためのメディアがあったらいいなと思います。

あと一部で聞かれる意見ですが、コード監査やシステム監査を入れるという構想はありますし、それを入れると信頼性が高まると思います。

いくつか成功している案件では、実際に外部の専門家にコードレビューをしてもらっているようです。

ーーそれは面白いですね。ボクシルトークンでもコードに対するレビューをユーザーの方に提供することはできそうです。

7. トークンならではのルール作りが大切

柿澤氏:また、せっかくバーチャルマネーで設計次第でさまざまな制限が加えられるはずなので、株式市場のようにひとによる審査を入れるのではなく、システムによってルールを作っていけたら面白いと考えています。

たとえばICOする際にマイルストーンを定めている企業が多いですが、マイルストーンを達成する毎にプールされている資金が分割されて企業に入ってくる仕組みとか面白いと思います。

マイルストーンの承認には社外の監査担当者や任意のユーザーが加わることである程度客観性が担保できると思います。

あと案件メンバーのソーシャルにおける信頼度を計測するような仕組みがあったら助かりますね。

たとえば案件メンバーに対して勝手にキュレーションして、「この人は過去にこの案件とこの案件に関わっていました」みたいなことができるようになったり。実際、すでに何度もICOしている人もいたりするんですよ。

そういった案件の内容に直接関係ない部分の情報がすぐ出てくるようになれば、もっとICOに参加しやすくなると思いますね。

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