高島屋オンラインストアがMAツール「Probance」導入、3ヵ月でメール経由の売上33%増

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高島屋グループでは複数のECサイトを運営している。なかでも、ギフトを中心とする「高島屋オンラインストア」は、2017年5月からブレインパッドが提供するMAツール「Probance(プロバンス)」を導入することで、わずか3ヵ月で売上を33%伸ばすことに成功したという。一体、同社は何が決め手でProbanceを採用し、実りある結果を出せたのだろうか? これまでのEC施策について、同社の長峰 崇氏が語った。
高島屋オンラインストアがMAツール「Probance」導入、3ヵ月でメール経由の売上33%増

ツールは道具。使ってなんぼ。自分たちがやりたいことを十分に実現できる点が重要

高島屋オンラインストアは「ギフトNo.1のサイトを目指す」をスローガンに成長してきた同社EC事業の稼ぎ頭だ。「ただし」と長峰氏は前置きし、「ギフトを購入していただくだけのサイトでなく、結婚や出産の内祝いなどを起点に、その後のライフイベントをフォローし、お客様の関係性を継続することが重要」と説明する。

高島屋 クロスメディア事業部カタログ・ネット・テレビ販売部 ネットチャネルグループ 次長 グループマネジャー 長峰 崇 氏

いまは顧客とのコミュニケーション手段には、メール、チャット、SNSなど多くの方法がある。その中でも高島屋では、メール経由の売上が好調だが、その手法は全顧客に対して、同じタイミングで同じ情報を手動で配信するというものであった。

「そんな我々が、初めてMAツールを知ったとき、まさに魔法の接客ツールに思えました。すぐにWebで情報を収集し、MAツールを導入した企業を調査すると、リピーター獲得という同じ課題を抱えており、よいヒントを得ました。一方で、ある企業はシナリオ作成やチューニングにスキルの高いエンジニアを多く投入しており、MAツールが魔法ではないことも理解できました」(長峰氏)

実は同社は、過去に別ツール導入で失敗した苦い経験があった。提案を鵜呑みにしてツールを導入したところ、期待した結果が得られず、ベンダーに相談してもサポート外と断られ、泣く泣く解約せざるを得なかったという。

「ツールは道具。使ってなんぼです。ツールを導入する際は、何ができるかよりも、自分たちがやりたいことを十分に実現できるかどうかが重要です。さらに自社リソースもベンダーサポートも両方確保したうえで導入しなければいけないと心に刻みました」(長峰氏)

本格的なMAツールの導入を見据え、着々と社内に武器を準備

長峰氏は、これまでの失敗を踏まえ、MAツール選定のポイントを挙げた。いままでは自分たちがやりたいと思うこと、ベンダーにしてほしいことをきちんと伝えきれていなかった。特に、データ構造の共有は必須の情報だ。顧客セグメントや商品レコメンドの情報が、すべてデータの基になるからだ。

「ギフトが多い高島屋オンラインストアは、“商品の構造”(商品分類を表すカテゴリ、テナントやブランドを表すカテゴリ)と、“売り方の構造”(特集、ギフトシーン、贈る相手、予算、注文締切日など)が複雑に絡み、データが多次元に紐付いています。MAツール選定にあたり、自分たちが思い描く接客パターンのシナリオをベンダーに説明し、具体的なデータも提示しました」(長峰氏)

もうひとつ、同社のような業種では、社内にこれらの導入や運用を担う専門IT部隊がないため、できるだけベンダーのサポートが手厚いこともMAツール選定の大きな条件になったという。長峰氏はこう回想する。

「いろいろなベンダーから高機能なツールを紹介いただきましたが、我々にとって必要なのは、高級外車ではありません。仮に高級外車を手に入れても、乗りこなせるドライバーもいません。それを運転する道路もありません。いまの自分たちの身の丈に合ったものを選びたかった」(長峰氏)

さらに同社は、ツールの検討と同時にオンラインストアのサービス拡充にも着手。

たとえば、2016年4月には送料無料クーポンの導入を始めた。これまで定価販売が基本で、顧客に対するインセンティブがなかったが、これによって大きな武器を持つことになった。

同年9月には「LINE@」をスタートさせた。クーポンをメール会員やLINE@の友達に限定する施策も打ち出した。

10月には簡易MAツールの導入にも踏み切った。シナリオ分岐はないが、カート放置やブラウザー離脱といったタイミングでユーザーに自動メール配信できるもので、鉄板シナリオをつくる訓練になったという。

これらの施策は、その後の本格的なMAツールの導入を見据えたものだった。本格的なMAツールであるProbanceを導入する前に、同社では少しずつ武器をそろえていったのだ。

「Probance Day2016」参加が、本格的なMAツール導入のきっかけに

このように同社では少しずつ武器をそろえながら、いろいろな施策を試みることで、鉄板シナリオの効果も実感し、手ごたえを感じられるようになった。そんな折り、同社はブレインパッドとプロバンスジャパンが主催する「Probance Day 2016」に参加した。

「MAツールを検討中の我々にとって、導入事例や開発元の生の声を聴け、自分たちの運用イメージを描けた良いイベントでした。フランスの開発元とブレインパッドの距離が近いことも確認し、この時点でProbanceの採用を心に決めました」(長峰氏)

次に同氏は、社内稟議を通すため、コストについてさまざまな角度で精査したという。

「MAツールの費用では、特にランニングコストに注意が必要です。各ツールで課金方法も異なるため、しっかり確認したほうがよいと思います。メール配信対象外も含めたID保有数をベースとするケースや、配信総本数がベースのケースもあります。これらと初期コストが組み合わさって最終料金となります。将来的に料金が変わる可能性も頭の片隅に入れたほうがよいでしょう」(長峰氏)

Probanceを選定する際に、決め手になった4つの理由

慎重なプロセスを経て、最終的に2017年初頭にProbanceの導入が決まった。このMAツールは、機械学習を搭載し、顧客ニーズを予測する「Predictive Communication」を実現するB2C向けのMAプラットフォームだ。採用の決め手になったのは、以下4つの理由だったという。

まずは「高島屋オンラインストア」の運営メンバーが考えたシナリオが実現できること。

「すでにメール配信や簡易MAツールを導入していたこともあり、そのシナリオを引き継ぎたいと思っていました。さらにProbanceならば、新しい本格的なMAツールとして、お客様の行動をトリガーとしたシナリオを実装できると判断しました」(長峰氏)

次に、データのインプット・アウトプットに拡張性があることも決め手になった。高島屋の複雑なデータ構造を扱う際に、ブレインパッドからひとつの提案をもらったそうだ。

「その提案は、弊社のECシステムとMAツールの間に、DMS(データマネジメントサービス)を設置することでした。ブレインパッドが、我々のシステムにおけるデータのインプット構造を理解してくれた証左であると実感しました。一方、データのアウトプットは、ProbanceがダイレクトメールやLINEなどチャネルを横断したコミュニケーションが可能で、MAのシナリオと連動したWebサイトのパーソナライズ化が実現できる点も評価しました」(長峰氏)

またブレインパッドのサポート体制が充実している点もポイントになった。前出のように、同社は過去に苦い経験をしたため、サポート体制を特別に重視していた。長峰氏はこう強調する。

「ブレインパッドに、提案から導入、運用までのサポートをお願いして、それに対する満足のいく条件をご提示いただいたことが大きかったと思います」(長峰氏)

もちろん、効果的・効率的な業務運営につながる点も重要な決め手だ。

「これまで複数のツールを利用していましたが、Probanceを活用すれば過度な業務負荷を回避し、メール設定から管理までをひとつのツールに集約できること、また実運用においても担当者が簡単に使いこなせるという点もクリアしていました」(高峰氏)

60本以上のシナリオを運用し、売上も33%増に!

導入を決めてからの高島屋の動きは迅速だった。上期最大の商戦になるお中元シ−ズンに間に合わせるために、正式リリースの目途を5月上旬に定め、導入決定からわずか5ヵ月弱でリリースした。

「MAツールの準備で我々が一番こだわったのは、やはりシナリオ作成です。お客様の顔を想像しながら、どんな接客をすべきか、それを反映するものにしたいと考えました。旧シナリオを統合・改善しつつ、新シナリオも実装しました。この点はブレインパッドに大きな協力をいただきました。あれもこれもと盛り込み過ぎる我々に、よい意味でブレーキをかけていただきました」(長峰氏)

5月のリリースに向け、作業が進行していった。MAのキモとなるのは、顧客ごとにパーソナルな情報を、最適なタイミングで、最適なメッセージを発信すること。これが本当に実現できるのかという点に気を遣った。

「たとえば、商品の購入実績を持つお客様に対し、どの商品がレコメンドされるのかをチェックしました。自身のご購入か、ギフト購入かによってレコメンドも異なるため、その変化などを調べました」(長峰氏)

そして、なんとか当初の予定から2週間遅れの5月下旬にリリースすることができた。実際の配信スタートは“父の日”の商戦。前年実績のある顧客や、直近の“母の日”の実績がある顧客に対してシナリオに沿ったメールの配信を開始したという。

最後に長峰氏は、Probance導入後の3ヵ月間の実績についても触れた。

「60本以上のシナリオを運用できました。メール経由でサイトに訪問したユーザーは前年同期比で39%増、決済件数は27%増で、売上も33%増となりました」(長峰氏)

売上も単に数字が伸びただけではない。新シナリオによるメール経由の売上が増え、一方で従来の一斉送信型メール経由での売上は減った。つまりパーソナルメールの接客がうまくいっている証拠になったのである。

さらに現行策のチューニングも実施し、新シナリオの追加や、メール配信タイミング、コンテンツのA/Bテスト、LINEなどの他のチャネルによる接客や、Webコンテンツのパーソナライズ化も進める方針だ。

最後に長峰氏は「店舗では、DMを見て来店するお客様と、そうでないお客様では接客方法も異なります。同様にオンラインでも、メールとサイトの対応がチグハグにならず、一貫性のあるパーソナルな対応にしなければなりません。オム二チャネル施策も大切です。最終的に百貨店の主戦場は実店舗。オフライン情報も取り入れ、オンラインとオフラインの相互で接客しあえる施策を実現できれば、我々の強みを最大限に発揮できるでしょう」とまとめた。