スマートコントラクトとは? ブロックチェーン活用の仕組みとKDDIの実証実験を紹介

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記事の情報は2018-01-10時点のものです。

スマートコントラクトとは、ガートナーが発表した2018年10大技術トレンドにも選ばれており、ブロックチェーンを活用した仕組みとしていま注目されている。2017年実証実験に踏み切ったKDDIの事例を紹介しながら、スマートコントラクトとは何か、仕組みおよび産業をどう変えるのか図解した。
スマートコントラクトとは? ブロックチェーン活用の仕組みとKDDIの実証実験を紹介

スマートコントラクトとは

スマートコントラクトとは、専門家のあいだでも定義が完全には合致していないといわれていますが、一般的にはデジタルの形式でプログラム化された契約・約束を指すことが多い。分散データベース技術であるブロックチェーンを活用しスマートコントラクトプラットフォーム上で動くプログラムのことを指す場合もある。

スマートコントラクトに活用される「ブロックチェーン」とは何か

ブロックチェーンは「集中」から「分散」へのパラダイムシフトとして、いま注目されている技術だ。仮想通貨にも用いられており、ニュースで聞かない日はないだろう。

ブロックチェーンは分散型データベースに分類される。その名の通り複数の取引データから構成されるブロックが互いにチェーンで連なっている形態だ。

スマートコントラクトについて解説を始める前に、ブロックチェーンという技術についておさらいしておこう。

ブロックチェーンが注目されるワケ

従来データベースを構築する場合には管理者がサーバーやデータベースソフトを用意する必要があった。

それに対してブロックチェーンは、ブロックチェーンに参加する不特定多数の有志のコンピュータの資源を借りてデータを暗号化し、保持するマイニングの作業を行う。コンピュータを貸した有志は見返りに仮想通貨で報酬を得る。

従来の集中型の場合は他の誰かとやり取りするためにサーバーを介する必要があるが、ブロックチェーンの場合は参加する人なら直接やり取りができる。

この中央管理者を必要としないP2P(Peer to Peer)であることが従来のシステム概念と一番大きく違う点だ。

処理を分散するので、大量のデータを扱う場合でも比較的低コストで構築でき、一部分が壊れても他で復旧ができる堅牢性がある。

また、ひとつのブロックにその前に連なるすべてのブロックと関連性を持っているため、ひとつのブロックを改ざんしても他のブロックで整合性があわずエラーとなる。こうした仕組みで改ざんしにくくしている。

一方でデメリットも指摘されている。

処理に時間がかかるという問題がある。1秒に7取引しか処理できない仕様になっているからだ。高速化すると普通の処理速度のコンピュータを持つ参加者がマイニングできない。マイニングする人が極端に絞られてしまうと分散というコンセプトがそもそも成り立たない。

処理に時間がかかるので消費電力もかかる。ビットコインを1時間マイニングするとエクアドルの電力年間需要に相当するとされる。

スマートコントラクトの仕組みとは?中古住宅購入の活用事例

ブロックチェーンは2008年にサトシ・ナカモトという正体不明の人物による論文をもとに開発された技術で、もともとはビットコイン向けの個人間取引ができるプラットフォームとして設計された。

その後、分散データベース技術の革新性が注目され、仮想通貨以外にも活用することが模索されている。そのひとつが「スマートコントラクト」だ。

スマートコントラクトがどういうものなのか、中古住宅の購入の例で考えてみよう。

売り手はスマートフォンで家のカギをロックしておく。スマートコントラクトは買い手が契約条件通りの金額を支払うと、そのイベントを検知して自動的に家の所有権を移し、カギが購入者に移転して買い手のスマートフォンで家の鍵が開けられるようになる。このように一定の取引条件を満たしたことを確認して契約を自動的に執行する。

こうしたエクスクロー取引は、現状でもいろいろなサービスに導入されているが、スマートコントラクトではエクスクロー取引のように仲介者を必要としない。そのうえ契約内容は改ざんしにくく、ブロックチェーンの参加者全員にそのデータが公開される。透明性が高く安全な取引が実現できることが特徴だ。

さらに中古住宅取引では、売り手・買い手の他にも土地登記所、不動産審査会社、住宅ローン会社、リフォーム会社が関わるが、それぞれの手続きも自動化することで煩雑な事務手続きが自動化され、かつすべての履歴が誰でも見ることができる電子データとして残る。

スマートコントラクトは今までのサプライチェーンを根本から覆す第四の革命となる可能性を秘めているのだ。

とはいえ、スマートコントラクトには課題も多く残る。一番の問題は残した記録に法的拘束力がないことだろう。加えて、デジタル世界しかチェックができないため、契約がアナログで執行される場合は本当に執行されたのかがわからない。

現在スマートコントラクトを提供する代表的なブロックチェーンを紹介しよう。

名称 特徴
イーサリアム スマートコントラクトのデファクトスタンダード。内部通貨は仮想通貨「イーサ」
エリス(Eris) 企業向けに特化したオープンソース。金融機関向けの使用を想定
ハイドラチェーン(HydraChain) イーサリアムの拡張版で参加者が限定されるブロックチェーン
ハイパーレジャー(Hyperledger) 金融、物流、IoTなどへの応用も想定
ルートストック(Rootstock) ビットコインのサイドチェーンでイーサリアムのスマートコントラクトを実行可能にする