セゾン、パナソニック、アクセンチュアほか「正社員化」の成功事例、3つのパターン別に解説

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記事の情報は2018-01-15時点のものです。

「非正規という言葉をこの国から一掃する」――、2016年の第3次安倍内閣発足時に安倍首相が発した言葉だ。実際に、非正規社員の「正社員化」に踏み切る企業も出てきている。その背景と施策の内容から、今後企業として取り組むべきことを探る。

パターン(2)専門スキル人材の確保・離職防止

有資格者や専門スキルを持った人材が必要不可欠なビジネスでは、そのような人材にとって魅力ある働き方や待遇を提示できるかどうかが重要になる。

日本でも、ワークシェアリングのしくみを作って短日・短時間で働けるようにしたり、リモートワーク可にして住む場所に関わらず働けるようにすることで、人材の採用とつなぎとめを図る企業が出てきているので3社の事例を紹介しよう。

事例2. 介護職員需要の高まりに備え、時間制正社員制度を導入したパナソニック エイジフリー

パナソニックの子会社で介護サービス事業を展開するパナソニック エイジフリー株式会社は、1年以上勤務したパートタイムの介護職員が「時間制正社員」に転換できる制度を2018年4月から開始する。「時間制正社員」は無期雇用であり、パートタイムにはない退職金や福利厚生制度の対象にもなるという。

厚生労働省が2017年6月に発表した「2025年に向けた介護人材にかかる需給推計」によると、2025年度には37.7万人の介護職員が不足する見込みとなっている。高齢化の進展に伴う介護人材の採用難に手を打つために「正社員化」に踏み切ったのが、同社のケースだ。

事例3. 看護師の定着策として短時間勤務を可能にした社会医療法人天陽会中央病院

介護職同様に医療関連の人材確保も重要な課題だ。夜勤などもあることから育児や介護などとの両立が難しく、資格を持っていても働いていない潜在看護師の多さも問題になっている。

鹿児島市の天陽会中央病院では、全職種、全職員を対象とする「短時間正社員」の制度がある。正式な制度となったのは2001年だが、看護師の定着のための働きやすさの向上には20年以上にわたって取り組んでおり、正社員の短時間勤務もそのひとつとして行われてきた。

取り組みの結果、2005年に20%を超えていた離職率が、2009年には8.3%まで低下したほか、離職した看護師が同院で復職するケースが増えたり、短時間正社員がいることで業務の効率化が進んで看護師の残業時間が減るといった効果が出ているそうだ。

事例4. 優秀なテクノロジー人材と女性を引きつけるために柔軟な働き方に転換したアクセンチュア

外資系コンサルティング会社のアクセンチュアは、2016年4月に在宅勤務制度の対象を管理部門限定から全社員へと拡充し、週20時間および週3日以上の範囲内で勤務時間を選択できる短日・短時間勤務制度を導入した。

スキルはあるがフルタイムで働けない、地方でリモートワークしたい、といった人材も積極的に採用している。

外資系のコンサルタントといえば、都心のクライアントを相手に徹夜も厭わず激務をこなすというイメージが強い。アクセンチュアもかつてはそれが当たり前だった。だが、そういう働き方を続けていては人材の多様性は実現できないし、今の時代に必要なデジタル系の高度なスキルをもった人材を獲得できない。

人材に求めるレベルの高さゆえだろうが、同社ほどの知名度があっても、東京でフルタイムで働ける人を獲得するのはとても難しいという。働き方の枠を広げることで優秀な人に来てもらうという考え方は徐々に実を結び、在宅でデータ分析の仕事をする専門家や、週4勤務や1日4、5時間勤務をするワーキングマザーなどが増えているそうだ。