残業時間の上限規制に抵触する企業の見分け方【診断チャート付】

平成22年の労働基準法改正により60時間を超える時間外労働は、賃金の割増率が25%から50%にアップし、いまや長時間労働是正は経営課題です。さらに2019年4月からは残業時間の上限規制が義務化されます。本記事では、残業時間の上限規制に抵触する・しない企業の見分け方を診断チャート付きで解説します。(初回公開日:2018年1月23日)

残業時間の上限規制に抵触する企業の見分け方【診断チャート付】

残業・長時間労働をめぐる企業の3大リスクとは

残業時間の上限規制を含む「働き方改革案連法」が成立し、大企業は2019年4月、中小企業においても2020年4月からは正式にスタートする見込みです。残業・長時間労働を是正しないまま放置しておくことが、企業にとってどのような点でリスクとなるのか知っておきましょう。1つめは「労働基準監督署の検査リスク」、2つめは「未払い残業代の請求リスク」、3つめは「従業員の健康被害のリスク」です。

(1)労働基準監督署の検査リスク

労働基準監督署の立ち入り検査や呼び出し調査の対象となる可能性は、どんな会社にもあります。定期監督といって年度計画に基づいて行われる検査は、年によって重点検査対象が変わるからです。

現在は、月80時間を超える残業がある企業の立ち入り検査に力をいれているというのが通説です。36協定で1か月の残業時間の限度を80時間以上としている会社は、対象となる可能性が高いと思った方がよいでしょう。

また、従業員や元従業員からの申告に基づいて行われる申告監督は、どんな会社も対象となる可能性があります。

長時間労働は、労働時間の管理不備や残業代の未払い、安全衛生管理体制の不備などの問題につながっているケースが多く、是正勧告、指導等の行政処分とあわせて企業名が公表される可能性もあります。

企業名公表は、ステークホルダーへの影響を考えると企業にとって何としても避けたい事態でしょう。

(2)未払い残業代の請求リスク

サービス残業や残業代の算出誤りがあると、過去の未払い残業代を請求される可能性があります。労働基準監督署から是正勧告を受けるケースのほか、民事訴訟により請求されるケースも増えています。

また、厚生労働省は残業代請求の時効を2年から5年に延ばす方針を打ち出しました。この先、請求リスクはより大きくなることが見込まれています。

(3)従業員の健康被害のリスク

心疾患、脳疾患、精神疾患などの発病の業務因果性を考える際、労災の判断基準では最初に労働時間を確認します。労働時間の長さは健康被害のリスクと比例していると考えられているからです。

使用者が長時間労働の是正のための措置や健康管理を十分に行っていなかったと判断され、労災の補償とは別に従業員や遺族から損害賠償請求が発生する可能性もあります。

近年は、経営戦略としての「健康経営」も提唱されています。企業経営と従業員の健康管理の両立を目指すことが結果としてリスクの低減につながります。

残業時間の上限規制に抵触する可能性がある会社とは

残業時間の上限規制は原則と特例、時間外労働と休日労働、月ごとの上限など、様々なパターンごとに規制がかかる、複雑な制度です。残業時間の上限規制の概要を説明し、次項では残業時間の上限規制に抵触する・しないをチャートにしていますので、ぜひチェックしてみてください。

規則の概要
•週40時間を超えて労働可能となる時間外労働の限度を、原則として、月45時間、かつ、年360時間とする。
•特例として、臨時的な特別の事情がある場合として、労使が合意して労使協定を結ぶ場合においても、上回ることができない時間外労働時間を年720時間とする。
•かつ、年720時間以内において、一時的に事務量が増加する場合について、最低限、上回ることのできない上限として
(1)2か月、3か月、4か月、5か月、6か月の平均で、いずれにおいても、休日労働を含んで、80時間以内
(2)単月では、休日労働を含んで100時間未満
(3)原則を上回る特例の適用は、年6回を上限

一目瞭然、残業上限規制に抵触するブラック企業の診断チャート

あくまでも目安ですが、恒常的に残業が多い、休日労働が多い、時期によって極端に残業が多いと思われるような社員を数名ピックアップして、過去1年間の各月の勤怠がわかるものを準備すると、以下の診断チャートを使って抵触する可能性について確認することができます。


(提供元:星野SR事務所開発「労務診断チャート」