「残業時間の上限規制」あなたの会社は抵触する?診断チャート付徹底解説

2018年6月29日、働き方改革関連法が成立しました。2018年初にはすでに経団連と連合の間で基準について合意し、今国会会期中の成立は確実とみられていた「残業時間の上限規制」も2019年4月からスタートすることが決まりました。(初回公開日:2018年1月23日)

「残業時間の上限規制」あなたの会社は抵触する?診断チャート付徹底解説

残業時間の上限規制を含む「働き方改革案連法」が、6月29日に成立しました。大企業は2019年4月、中小企業においても2020年4月からは正式にスタートする見込みです。あなたの会社が抵触するかどうか、診断チャートでチェックしておいてはいかがでしょうか。

残業が当たり前だった世の中は「時間生産性重視」にシフト

なぜ時間あたりの労働生産性の向上が求められているのか、経営の視点で人材マネジメントを考えてみましょう。

いまや大量生産・大量消費の時代は終わり、企業の経営目標も「何をいかにうみだすか」がより重要視されるようになってきました。従来どおりにビジネスモデルを守り抜くだけでは、大手企業でも生き残れない時代です。

人は会社にとって目標を達成するために必要な資産です。大量生産が目標ならば、企業内で人を囲い込んで質を担保しながら、たくさん働いてもらうことがそのまま目標の達成に直結します。しかし、昨今の会社の戦略目標に照らし合わせて考えると、たくさん働いてもらうことより、人をどのように活かすかの方が重要なのではないでしょうか。

以上の理由で、「時間生産性」の向上を経営課題と据える企業が増えているのです。今後は、時間生産性を重視した人材マネジメント手法もどんどん開発されていくでしょう。

残業賃金の割増率がアップ

このほかにも、長時間労働が経営課題となる背景があります。平成22年の労働基準法改正により60時間を超える時間外労働は、賃金の割増率が25%から50%にアップしたのです。

現状、義務化されたのは大企業のみで中小企業は義務化が猶予されていますが、いずれはこの猶予期間も終了します。残業のコスト負担はいよいよ企業にとって重い負担となることでしょう。

優秀な若者ほど、残業や長時間労働に拒否感あり

人材の確保の問題もあります。就活生向けの情報サイトやアンケートをみると、現代の学生は残業や長時間労働に対して強い拒否感を持っていることがわかります。

キャリアを積み専門知識を持つ女性も同様の傾向があります。育児や介護のため働く時間に制約が発生したところ、十分な経験とスキルを持つにも関わらず待遇が著しく下がる現実を知り"引退表明”してしまうのです。

たとえばアクセンチュアでは短日・短時間勤務制度を導入し、こういった女性の離職防止につとめています。優秀な人材を確保、多様な人材を活用するためには、時間の制約にどのように対応していくかはキーポイントだといえます。

変わっていく世の中において、人という資源をどのように活用していくかを考えるとき、経営目標や人材マネジメントと「時間生産性」の概念は切っても切り離せない関係なのです。

残業・長時間労働をめぐる企業の3大リスク

次に、残業・長時間労働が企業にとってどのような点でリスクとなるのか知っておきましょう。

(1)労働基準監督署の検査リスク

労働基準監督署の立ち入り検査や呼び出し調査の対象となる可能性は、どんな会社にもあります。定期監督といって年度計画に基づいて行われる検査は、年によって重点検査対象が変わるからです。

現在は、月80時間を超える残業がある企業の立ち入り検査に力をいれているというのが通説です。36協定で1か月の残業時間の限度を80時間以上としている会社は、対象となる可能性が高いと思った方がよいでしょう。

また、従業員や元従業員からの申告に基づいて行われる申告監督は、どんな会社も対象となる可能性があります。

長時間労働は、労働時間の管理不備や残業代の未払い、安全衛生管理体制の不備などの問題につながっているケースが多く、是正勧告、指導等の行政処分とあわせて企業名が公表される可能性もあります。

企業名公表は、ステークホルダーへの影響を考えると企業にとって何としても避けたい事態でしょう。

(2)未払い残業代の請求リスク

サービス残業や残業代の算出誤りがあると、過去の未払い残業代を請求される可能性があります。労働基準監督署から是正勧告を受けるケースのほか、民事訴訟により請求されるケースも増えています。

また、厚生労働省は残業代請求の時効を2年から5年に延ばす方針を打ち出しました。この先、請求リスクはより大きくなることが見込まれています。

(3)従業員の健康被害のリスク

心疾患、脳疾患、精神疾患などの発病の業務因果性を考える際、労災の判断基準では最初に労働時間を確認します。労働時間の長さは健康被害のリスクと比例していると考えられているからです。

使用者が長時間労働の是正のための措置や健康管理を十分に行っていなかったと判断され、労災の補償とは別に従業員や遺族から損害賠償請求が発生する可能性もあります。

近年は、経営戦略としての「健康経営」も提唱されています。企業経営と従業員の健康管理の両立を目指すことが結果としてリスクの低減につながります。


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残業の上限規制、抵触する可能性があるのはこんな会社

平成29年3月28日決定した「働き方改革実行計画」では、残業の上限規制についての具体案が示されました。

•週40時間を超えて労働可能となる時間外労働の限度を、原則として、月45時間、かつ、年360時間とする。
•特例として、臨時的な特別の事情がある場合として、労使が合意して労使協定を結ぶ場合においても、上回ることができない時間外労働時間を年720時間とする。
•かつ、年720時間以内において、一時的に事務量が増加する場合について、最低限、上回ることのできない上限として
(1)2か月、3か月、4か月、5か月、6か月の平均で、いずれにおいても、休日労働を含んで、80時間以内
(2)単月では、休日労働を含んで100時間未満
(3)原則を上回る特例の適用は、年6回を上限

原則と特例、時間外労働と休日労働、月ごとの上限などを含む規制で、一度で全体の理解が難しい複雑な規制です。そのため、今のままの雇用管理で、規制に抵触するのか?しないのか?判断できないという会社も多いと思います。