どの金融機関も、RPA導入のアプローチはほぼ同じ
上記以外にも、金融機関のRPA導入は増加しているが、アプローチに大きな違いはない。三菱UFJによると、RPAに適した業務は以下の3つとされており、これはすべての金融機関のRPAに当てはまっている。
1つめは、処理件数が多く1件あたりのデータ量も多い業務だ。これは、申込書や請求書の処理を思い浮かべると分かりやすい。
2つめは、連続したプロセスが多い業務だ。たとえば、複数の人や複数の部署を渡って、やっと業務を完了できるような業務などを思い浮かべると分かりやすい。
3つめは、一つひとつの負荷は高くないが、日に何度も実行する業務だ。例として、1時間に1度、専用端末から抽出したデータをエクセルに転記する業務をあげている。大量ではないが、確実に人を拘束しストレスも大きな業務をロボットにより正確かつストレスなく実施できるようになる。
RPAに適した業務は「難しい作業ではないが、大量だったり面倒だったりする作業」である。そして「繰り返し作業による人為的なミスを起こしやすい作業」でもある。よって、RPAに置き換えることでより高速に、よりミスが少なく処理できるのだ。
今後は各地方銀行にも導入の動きが広がってゆくことは必至だ。
RPA導入が雇用にどう影響するのか
各金融機関のニュースリリースにあるとおり、RPAにより「業務時間削減」「コスト削減」が実現できることは明らかだ。では、雇用の観点でどのような影響があるのだろうか。
非正規雇用では、事務処理スタッフの大規模な雇い止め
金融機関の事務センターや営業店の事務スタッフの大部分は非正規雇用であるが、RPAにより徐々に不要となる。これまで人間が行っていた作業の大半がロボットに置き換えられ、しかも人間よりロボットの方が正確でコストも安い。つまり人間よりも処理効率が優れている。
よって、事務処理スタッフの大半は雇止めとなる可能性が高い。残ったごく少数の事務スタッフは、「RPA化できない事務処理」や「エラーが出た事務内容の確認」など、例外処理対応がメインとなる。
なお最近の求人情報を見ると、東京の金融機関の事務センターの派遣社員の時給は1300円から1700円程度と、他の派遣社員業種やアルバイトから比べると相当高い。こうした「高いスキルは必要ないが時給がよい、割のいい求人」も相当数なくなるのは間違いない。
正社員は、事務に携わるスタッフの子会社への転籍
日本の金融機関では、特に業務に問題ない社員を「ポジションが不要となった」という理由で解雇することはまずない。
解雇して社員から訴えられると会社のイメージ低下につながり、(日本は労働者の権利が強いため)訴訟に負けるリスクも高い。金融機関は無理に従業員を解雇したりはしないだろう。
ポジションがなくなった社員を、金融機関が持つ子会社に転籍させ定年まで飼い殺しにするのが一般的だ。ちなみに、子会社に転籍すると、給与が3割程度カットされるのが標準的だ。
金融機関からすると「不要な人材を雇い続ける必要はあるが、訴訟リスクは回避でき、コストも3割減らせる」ことになる。
このように、効率化と利益の裏側には、削減されていく非正規雇用と、「本当はリストラしたいが仕方なく転籍」させられる正社員がいるのである。