at will work主催「Work Story Award」受賞チームの「働き方改革」ストーリー

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先ごろ、虎ノ門ヒルズフォーラムにて、at Will Workの主催による「Work Story Award」が開催された。本イベントは「“働き方”を選択できる社会へ」をミッションに、昨年5月に設立されたat Will Workの事業のひとつとして催されたものだ。ここでは今回のWork Story Awardの趣旨や狙い、さらにアワードに選ばれた20部門から、特に編集部が注目した企業の取り組みについて、概要を紹介していこう。
at will work主催「Work Story Award」受賞チームの「働き方改革」ストーリー

Work Story Awardは、なぜストーリーが大事なのか?

at Will Workの代表理事を務める藤本あゆみ氏は冒頭にこう語った。

「働き方改革は、副業や残業規制といったことだけはありません。私たちはサービスを作り出すわけでなく、まだ気づいていない世の中のワークスタイルに関する情報を提供することで、働き方改革の選択肢の可能性を拡げ、変化のスピードを速めたいと考えています」

そこで同団体では、大規模なカンファレンスや各種イベント、さらに今回のWork Story Awardの3本柱によって、働き方改革をバックアップしようとしている。働き方改革を進めようとする企業からよく聞かれることが「何か良い事例を知りたい」という要望だった。

藤本氏は「働き方改革の選択肢を多く捉えていくためには、人でも企業でもなく、チームや複数の企業間での取り組みから生まれる“ストーリー”にヒントがあると考えています。大事な点は結果ではありません。そこに至るまでのプロセスです。私たちは、働き方改革を進める際に起きたこと、その背景や関わった人の思いがつまった“働くストーリー”を集め、それらを表彰することにしました」と、本アワードの目的について強調する。

つまり、どんな課題を認識し、それに対してどのようなアプローチを取り、その結果として、副次的なものも含めて何が得られたのか。その取り組みのストーリーにスポットを当てることで、ロールモデルになりそうな事例を世に広く紹介し、働き方を選択できる社会を加速することが狙いなのだ。

at Will WorkをサポートするPR Table 代表取締役社長の大堀航氏も「“エモイ”(エモーショナルな右脳的な部分)を発信する仕組みで企業を応援し、エンゲージメントを高めたいと考えました。TVドラマの“陸王”や“下町ロケット”といった番組がウケるのは、ニュース性がなくてもストーリー性があるから。業種を問わずとも、企業のなかには何かストーリーがあります。私たちのWebサイト上で、受賞企業のストーリーを公開していきます」と語る。

今回のWork Story Awardは、5年間限定で実施される。at Will Workでは「これからの日本をつくる100の働くをみつけよう」というテーマで計100の事例を発掘する方針だ。

藤本氏は期間限定の縛りで活動する理由について「5年後には働き方の多様性は現在よりも進んでいるはず。そのため5年間で事例を集めることに決めました。とにかくストーリ性が大事です。働き方の視点はさまざまで、企業の立場が違えば、課題も求めることも違ってきます。このアワードは、大企業だけでなく、中小企業や個人の取り組みについても紹介するようにしました」という。

「テーマ部門賞」と「審査員賞」の2部門計20チームが、栄えあるアワードに選出

ここからは「Work Story Award」に選出された企業の取り組みについて、特に目についた活動をピックアップして紹介していこう。アワードを受賞したチームは「テーマ部門賞」と「ゲスト審査員賞」に分かれ、各10ずつ計20チームが選ばれた。

今年のテーマ部門賞は「テクノロジー・AI」「働きがい、モチベーション」「チームワーク、コラボレーション、組織活性」「人材育成」「イノベーション」「人事評価と仕組み」「可視化、データから判断する」「採用・人材獲得」「WILL」。一方、ゲスト審査員賞のほうは、社会性・インパクト・新規性・未来性などが十分に考慮されたストーリーに対し、審査員が自らの判断によって賞をつくり、企業を選出した。

前編では、「テーマ部門賞」と「ゲスト審査員賞」の両方を受賞したチームのなかから、ビヨンド編集部が特に注目したストーリーを紹介する。

高野山の神社仏閣モデルを採用した世界一集中できるワークスペース

「ロックなWork Story賞」に選ばれたのは、メガネメーカーのジンズだ。同社は「世界一集中できる環境」を目指したワークスペース「Think Lab」の取り組みが評価された。審査員によれば、働き方の課題設定を「交流」に視点を置くプロジェクトが占める中で、あえて逆に「集中」に視点を置いた点に“Rock”を感じたという。

本スペースは、すでに飯田橋でオープンしている。高野山の神社仏閣のイメージを取り入れた集中特化型スペースで、鳥居や参道の石畳、手水の開けた空間など、山奥の神社仏閣を訪れたような環境の奥に、ワークスペースとして、視線の角度が異なる椅子とデスクがある「拝礼」、植栽で外部と遮断された個室集中スペースの「本殿」がある。

本スペースは、17社の企業がコラボレーションしている。植物、椅子、光、音、照明、飲食などに工夫が凝らされ、最高に集中した状態でパフォーマンスを発揮できるという。なぜメガネメーカーがワークスペースをつくるのか、不思議に思うかもしれない。実はThink Lab構想は、同社の眼鏡型ウエアラブルデバイス「JINS MEME」がきっかけだった。このデバイスは、専用アプリと連動し、装着者の集中力や姿勢を可視化するものだ。

プロジェクトの立役者である井上一鷹氏はJINS MEMEを自身で試したところ、カフェや図書館より、オフィス作業が一番集中できないことを知ったという。冗談のような話だが、オフィスはコミュニケーションに最適化されたインフラが増えても、個人が集中できる場所ではなかったのだ。そこでオフィスで集中できない「集中難民」を救うキャンプを作ろうという発想に行き着いたという。

グラフィック好きのメンバーが集まり、コミュニケーションの触媒に

「これぞ本質だ賞」には、富士通デザインの「グラフィックカタリスト・ビオトープ」(以下、GCB)が選ばれた。同社は、グラフィックレコーディングという手法を用い、「かいてつたえる、かいてはぐくむ」というテーマを掲げて活動するチームだ。本手法は、ミーティングや議論をイラストで記録し、ノンバーバルな概念や想いを可視化し、議論全体を俯瞰できることが特徴だ。

GCBのメンバーは現在15名で、いずれも富士通デザインの社員だが、発起人のタムラカイ氏を中心に、賛同者が自然発生的に集まったチームだという。望まぬ異動になった同氏だったが、2014年にコワーキングスペースの社外イベントとして「ラクガキ講座」を始め、大きな注目を浴びた。同氏は、この活動をグラフィックレコーディングの手法として社内に取り入れることを思いつき、社内Webに活動を公開すると同志が集まったそうだ。

昨年2月には、at Will Work主催の「働き方を考えるカンファレンス2017」で、グラフィックレコーディングの依頼を受けた。また自社の「富士通フォーラム2017」でも、本社の役員から高い評価を受けた。結成から1年足らずだが、GCBのエコシステムが社内外に広がり、ますます存在感を増している。

母親が活躍できるテレワーク! 人でなく、会社が電車で通勤する時代

Trist代表・尾崎えり子氏も、審査員賞の「次代の働き方を創るWorkSroty賞」とテーマ賞の「WILL」をダブル受賞した。Tristは「都内の企業に所属しながら、キャリアを活かして地元のシェアサテライトオフィスで働く」というスタイルをとっている。2017年11月現在、7社27名の母親テレワーカーが働き、尾崎氏もライフイズテックにテレワーカーとして勤務している。

Tristが注力するのは「マインドセット」「ITセット」「テレワークセット」という3つの無償教育プログラムだ。重要な点は、ブランクのある母親に自己肯定感を持たせるマインドセット。本来のスキルやキャリアを最大限に活かすには、まず自信をもつことから始める必要があるからだ。さらに子育て経験も活かして働けることも伝えている。

テレワーカーは、各企業の契約により働き方も異なるが、週に何度か本社に出社する。その際に多くの人と話すことを勧めたり、企業にもチャットや掲示板の導入を提案中だ。単なる業務委託先でなく、同じ会社のメンバーと認識されることが、テレワーカーが成功する際のポイントになるからだ。

同氏の活動は「待機児童の解消」と「地域活性化」という相乗効果も生み出しているそうだ。自転車通勤が可能な距離での勤務ならば、家から遠い保育園に子供も預けられる。また近所のお年寄りも子どもの面倒を見てくれるなど、地域ぐるみのサポートによる活性化を期待できるのだ。現在、自治体などから、Tristへ問合せが後を立たないという。

働き方改革は、何を課題ととらえ、何を達成したいのか、主体者の意図と意識が成功如何を左右するのだと確信を得られるストーリーだ。後編では、働くの健康・幸せにフォーカスしたストーリーを紹介したい。