働き方改革成功の秘訣は、愛とハッピーと巻き込み力?

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前編に続き、at Will Workの主催による「Work Story Award」受賞チームの働き方改革取り組み事例を紹介する。今回は、働き方改革が成功する組織の共通項を探った。
働き方改革成功の秘訣は、愛とハッピーと巻き込み力?

Work Story Award受賞チームのストーリーにみる働き方改革成功の鍵とは

前編に続き今回も、ビヨンド編集部が特に注目したストーリーを4つ紹介する。働き方改革でハッピーになれる未来像を確信し、ポジティブに取り組む姿が共通して感じられた。

組織活性度を示す“温度計”のような「ハピネス度」で働き方改革を

デジタル技術で組織活性度を示す手法を開発したのは、日立製作所の研究開発グループだ。同グループは、テーマ部門の「未来のウェルビーイング賞」を受賞。かつて「名札型ウェアラブルセンサー」を開発した同グループは、このセンサーを使い、チームの連携構造をネットワーク図で可視化したが、検証により新たな課題も見えてきた。

メンバーのつながりかたは、チームや状況によって異なるため、基準が示しにくいのだ。そこで新たに「ハピネス度」という指標を考えたという。無意識も含む体の細かな「揺れのリズム」から、組織のハピネス度を判定するものだ。この統計処理データと、メンバーに対するストレス度合いなどを調査したところ、組織活性度と関係があり、主観や経験に依存しない指標であることがわかった。

そこでハピネス度を図る「温度計」と位置づけ、「働き方アドバイスアプリ」を開発した。これはチームのハピネス度を数字と絵で可視化し、毎日の行動ログと共に分析することで、どんな働き方が向くかという「タイプ診断」と「今日の働き方アドバイス」を示してくれるもの。個人の強みを引き出し、多様な働き方の材料に活用できるのだ。

日立グループの営業職に実証実験を行った結果、ハピネス度が向上して翌四半期の受注達成率が目標より11%も上回ったそうだ。このハピネス度を社会に広めるために、新たな活動も展開。第一歩としてスマホの加速度センサーを利用したハピネス度計測アプリのβテストを2018年1月下旬から開始する予定だ。

社員が健康になれば企業も元気! 地域を巻き込む健康増進活動

「元気がすべての基本で賞」を受賞したのはディー・エヌ・エー(以下、DeNA)の平井孝幸氏だ。同氏は「一緒に働くみんなを健康にしたい」という思いから「CHO室」(Chief Health Officer)を設立し、現在は室長代理を務めている。

同氏は人事部だったが、雑誌でフィーチャーされた「健康経営」に触発され、社員の健康改善に乗り出した。DeNAは約7割の社員が腰痛・肩こりをもち、生産性が著しく低下していた。そこでトップの南場氏に掛け合い、誕生したのがCHO室だった。同室は、まず健康を学ぶ機会を増やし、身体の歪み調整の研修など、年間90以上の健康イベントを実施。

啓発ポスターやLINEスタンプを作成したり、カフェのメニューや弁当を徐々に健康的な素材に変えていった。これにより52%もの社員の健康意識が高まった。「DeNA流腰痛撲滅プロジェクト」では、参加者の85%が腰痛を改善。またメーカーや大学教授と連携し、デスク周りの環境改善に関する実証研究を行った結果、6516万円のROIを数値で算出できた。

2017年9月時点で、取り組みの参加者は延べ約1000名、提携企業数は83社に拡大。社内外の人々を巻き込む「健康経営の輪」が広がった。渋谷区や商工会議所、東急、ミクシィらと「渋谷ウェルネスシティ・コンソーシアム」を発足したり、渋谷のヘルシーな店を紹介するアプリもリリース。さらに同氏は、健康経営スペシャリストの指導員を育成する「日本健康企業推進者協会」を設立し、事務局長に就任。従来のノウハウやネットワークを全国展開する準備をしているところだ。

逆転の発想で社員も定着! 愛のあるホワイト企業を目指す派遣業

「日本社会を救うで賞」と「人材育成」のダブル受賞となったのは、建設人材派遣業のアイアールだ。ご存知のとおり建設業界は3Kのイメージが強く、人手不足が続いている。同社は創業しても門を叩く人材がいないという問題が続いていた。そこで「未経験者」に焦点を当てた対策を考えた。

たとえば人材に対して愛を持ち、ケアする営業担当者を積極的に採用。「若手技術者育成プロジェクト」として、研修や資格取得支援、単身寮、給与体系なども整備したという。また研修も、現場経験後に座学を受けてもらうことで理解度を高めた。

派遣業では、なかなか社員同士が会えないため、メールの社内報で発信したり、LINEでグループをつくり、若手の質問をベテラン技術者が答える場づくりに努めた。そして本プロジェクトの半年後には「ホワイト企業宣言」を打ち出した。

しかし社内研修が実を結ぶなか、ステップアップした技術者の引き抜きも行われるようになった。当初は技術者の囲い込みも考えた同社だが、人材流出を防止するのでなく、自社の役割を「若手技術者たちのスプリングボード」と考えることにした。外に出して恥ずかしくない人材にまで徹底的に育てる方針に転換すると、逆に定着率も向上したのだ。

同社が育てた人材は、多くの企業から直接雇用のオファをもらえるようになり、ホワイト企業宣言による社風の変化も生まれたという。同社は今後も社内整備をしっかりと進めていく方針だ。新制度として「屋外手当」や、結婚へのハードルが高い建設業でも家庭を築けるように「恋愛部」も発足したそうだ。

倉庫・配送業者などを巻き込んだ3つのコミュニケーション改革

審査員賞の「きょうそう<共創・競争>力のあるWork Story賞」と、テーマ賞の「チームワーク、コラボレーション、組織活性」をダブル受賞したのは大塚倉庫だ。同社は、大塚製薬の運輸倉庫部門としてスタートし、現在は他社の物流も担いつつ、年間1.6億梱包の実績をもつ企業になった。

かつて同社は、本社機能が東京と大阪に分かれ、部署も部屋ごとに分離し、社員同士の名前もわからない状態だったという。そこで社長に就任した大塚太郎氏の掛け声のもと、総務人事部などの奮闘により、会社の壁を取り払うコミュニケーション改革が始まった。

1つ目の改革は、本社機能を東京に一本化し、オフィスの壁も本当に物理的に取り払って、全部署が入る大部屋へリニューアルしたこと。さらにユニークな点は、大塚氏の発案による和太鼓の活用だ。当初は社員も意味がわからなかったが、みんなに発破をかけたり、新規営業の獲得時などに「ドーン!」と太鼓を叩き、全員で喜びあう合図などに使われた。

2つ目の改革は、距離の壁を壊すために、テレビ会議システムを導入したこと。全事業所が「ひとつの部屋」で働く環境になった。また社長と社員10名ほどが年に100回ほど「テレランチ」を実施し、雑談を交えながら会社への意見交換を行うことで、コミュニケーションを活性化させた。

そして3つ目の改革は、会社の壁も超えてしまうことだ。同社は自社でトラックを持たない。そこで外部ドライバーが、荷受け時間をWebで予約できるシステムを導入し、待機時間をなくした。さらに車両トラッキングシステムも構築。このように倉庫・配送業者や社外も含めた働き方の改善により、<共創・競争>力のあるワークスタイル変革を成功させたことが、評価のポイントになった。

本アワードの主催団体at will workでは、2月15日(木)に第2回目となる「働き方を考えるカンファレンス2018」を開催するとしている。さらに多くの、組織と個人が働き方を変えて行くヒントが発信されることを期待したい。