CASE車両市場のゆくえ…EV・自動運転の鍵を握るもの

ここ数年、1月は自動車業界が騒がしくなる。1月にラスベガスで開催される家電ショーCES(セス)で、EVや自動運転などCASE車両が発表されているのだ。CASE車両の動向をチェックするため、直後に開催されるデトロイトモーターショーよりもここでの発表を重視する自動車業界関係者もいるという。CASE車両の最新動向や今後のゆくえについて紹介する。

CASE車両市場のゆくえ…EV・自動運転の鍵を握るもの

CASEによって市場が広がる自動車業界

いまさらだが「CASE」とは、コネクティビティ(Connectivity)自動運転(Autonomous)、シェアリング(Shared)、電動化(Electronic)の頭文字をとったもので、EV、自動運転カー、コネクテッドカーといった次世代車両やその技術を表す言葉である。

これらの技術を取り込んだクルマは、単にAIやバッテリーといった技術を搭載した新しい製品というだけではない。交通インフラの機能拡張、移動の意味の再定義など、モビリティ社会の変革を担おうとしている。

さらに注目すべきは、EVや自動運転の技術においては、既存の自動車産業が培ってきた技術が必ずしも有利には働かないという点だろう。社会環境の変化とともに、新しいビジネス、新しいプレーヤーを呼び起こしている。

CES(セス)に見られる自動車業界の変化

このような変化は、近年見られるCES(セス)の基調講演や出展企業の顔ぶれに端的に現れている。

コンシューマー・エレクトロニクス・ショー、通称CES(セス)は、毎年1月にアメリカのネバダ州ラスベガスで開催される大規模な見本市である。新製品が数多く発表され、2018年はソニーが大型ブースを構え「aibo」の実機を公開し、日本国内でも大いに話題になった。

このCESに、自動車業界からの出展が相次いでいるのだ。マイクロソフトがCES出展をやめたあとを受けるように、フォードやGMなど自動車メーカーが出展、基調講演を行うようになり、フォルクスワーゲン、トヨタ、ダイムラー、フォード、GMら大手OEMメーカーから、ボッシュ、デンソーといったサプライヤーまでがブースを出展。盛大なプレスカンファレンスを開き、テレマティクス技術、EV、自動運転など新技術の発表を競っている。

同じ時期、世界5大モーターショーのひとつに数えられるデトロイトモーターショー(NAIAS)の直前だどいうのにもかかわらず、だ。CASE車両にまつわる革新的技術やビジネス環境の変化を象徴している。

2018年は、前述の新興ベンチャーのみならずトヨタ、ホンダ、日産など日本の大手自動車メーカーもCASE車両開発の勢いを増すだろう。日本の雇用は製造業を無視しては語れない。CES・NAIASを終えたこのタイミングで、現状のCASE市場を理解しておくべきだろう。

「HV」と「EV」、最終的に普及するのはどっち?

経済メディア、自動車メディアをにぎわす議論のひとつに、「EVは普及するのか、本命はHVなのか」というものがある。この議論の前にHV、EVといった用語が何を指すか、用語を整理しておく。

HV(Hybrid Vehicle)とは?

本稿では、HV(Hybrid Vehicle)は内燃機関とモーターの2つのパワートレインで走行する車両の総称とする。HV車にもバッテリーは搭載されるが、外部からの充電口を持っていない。

PHV(Plug-in Hybrid Vehicle)は外部充電が可能なHVだ。HVよりもバッテリー走行は長くなる。

PHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)は、PHVと機能的な違いはないのだが、トヨタはPHVと呼び三菱はPHEVと呼ぶなど、メーカーごとの呼び名の違いと思っていいだろう。以降、HVと表記された場合、原則としてHV、PHV、PHEVまでを含むものとする。

EV(Electric Vehicle)とは?

EVはバッテリーとモーター「のみ」で走行する車両だ。

この分類では、日産ノートe-Power(内燃機関エンジンを搭載するが、発電のみに使い駆動力には使っていない)はHVになるが、動力としてはモーターひとつなのでHVではなくEVとする意見もある。

また、水素で発電してモーターで走行するFCV(Fuel Cell Vehicle)は一般にEVに分類される。内燃機関を持っている日産ノートe-Powerも100%バッテリー走行をするならEVという分類も合理性がある。

なお、ピュアなEVとFCVを区別するためBEV(Battary Electric Vehicle)という呼び名も存在する。

EVは普及するのか

EVやHVの議論で、よく俎上にあがるのは、航続距離や充電時間にからんでEVは実用的でないので普及しないという議論だ。関連して、この2つの問題に対応できるのはHVだという意見。どちらが正しいのだろうか。

答えは歴史がだしてくれるものなので、現時点での評価は難しい。HV推進派の総論は、長期的にはEVの流れは止められないが、30年先でもEVは全体の数パーセントから10パーセント台しか普及しないので主流はHVだというもの。

大筋では間違っていないが、普及率の予想は、あくまで技術や社会情勢が現状レベルという前提のシミュレーションだ。

EV普及の鍵を握るのは「バッテリー技術」の進歩

しかしこの予想は、技術革新や市場の変化によって変動する可能性が高い。

ひとつはバッテリー技術の進歩だ。充電時間の短縮、電力容量のアップの技術開発は進められており、重量さえ許容できれば、航続距離で250km以上、カタログ値なら600km程度の乗用車が存在する。バッテリーで重くなるといっても、トランスミッションやエンジンがなくなるので(インバーター、モーターに置き換わる)、車格に比して重いクルマになるわけではない。新型リーフ(約1.8t)は、プリウスPHV(約1.7t)より100kgほど重いだけだ。

容量アップと充電時間の短縮については、すでにパナソニック、サムスン他が全固体電池の開発を進めている。電解質に液体を使わないため、容量アップや急速充電がしやすくなる特徴がある。クアルコムはワイヤレス充電、走行中充電の技術を研究している。

バッテリー問題はEV開発において致命的な問題とはいえなくなってきているのだ。技術の進歩いかんによっては、HVが主流ではなくなりEV大逆転のシナリオも現実味を帯びる。

ちなみに中国をはじめとする新興国ではガソリン車自体が普及していないので、HVかEVかの議論を飛び越えて、EVがシェアを拡大する可能性が比較的高い。市場規模を考えれば、グローバルでのEV化の波に乗り遅れることはリスクでもある。

環境問題・市場戦略からみたHVとEV

グローバルでのEV化の背景にはCO2削減という環境問題がベースとなっている。それに加えて、グローバル市場における国ごとの思惑が絡み合っている。

日本は、高度成長期から他国に類を見ないレベルの排ガス規制を敷いてきた。また、内燃機関の効率化、低燃費化、環境性能強化の技術も抜きんでている。EVに多くを依存せずとも排ガス問題に対応できる力をもっており、ゆえにEVを主力に据えてこなかった。

しかし、内燃機関の環境性能で劣る欧米・中国が市場戦略的にEV化を推進しているという分析があるのだ。

とくに中国は、国内自動車産業を保護、育成し国際競争力をつけるため、環境問題を旗印としてEV化を推し進めている。日欧米メーカーが本腰を入れていないEVで市場を先行しようという戦略だ。そのため中国は、2018年から新車販売の10%をZEV(Zero Emission Vehicle:排ガスを出さないクルマ、EV、FCVなど)にする規制を導入する。中国がいうZEVには、トヨタが得意とするHVは含まれていない。

またEU圏では、クリーンエンジンとして普及させていたディーゼルが、フォルクスワーゲングループの不正発覚により、エンジン戦略の見直しが迫られている。ディーゼルエンジンは、日本ではNOxやPMなどの問題からクリーンなイメージはないが、EUではCO2排出量が少なくでき、燃料コストも下げられるためメジャーな存在だった。このような事情からEUでもEVを指向する動きが活発だ。

このような動きに対して、日本は独自路線を歩めばよいという意見がある一方、内需拡大が見込めない国内市場だけでは展望が開けない。中国や欧米市場を無視した戦略はガラパゴス化するという懸念も指摘されている。