ソフトバンクが信用スコアで狙う「次世代社会インフラ」構築とは

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ソフトバンクは2016年、みずほとともにJスコアを設立しAIレンディングを提供している。続いてソフトバンク・テクノロジーは、決済ソリューション事業のインサイト社と連携して信用情報プラットフォームを構築した。ソフトバンクが狙う「次世代社会インフラ構築」について考察をまとめた。

信用情報プラットフォームの構築

また、ソフトバンクグループのソフトバンク・テクノロジーはブロックチェーンを使用した信用情報プラットフォームを構築した。決済ソリューション事業のインサイト社と連携し、家賃の支払い状況や不動産の賃借状況などを取り込んだ信用情報プラットフォームを構築した。

プラットフォームにはシビラ社のブロックチェーン基盤を採用し、クラウドMicrosoft Azureに構築し世界規模の冗長性をとることで信頼性を高めている。

前述したとおり個人情報を扱うだけに、セキュリティリスクは大きな課題だ。ブロックチェーンとクラウドを活用することで安心して使える基盤を用意したところが特徴だ。

このプラットフォームでは個人が自分の信用情報を自由に利用し、利便性の高いサービスを受けられるようになるとしている。となると信用スコアの算出も当然視野に入っているだろう。Jスコアが持っているデータや算出モデルをプラットフォームに取り入れるという可能性もありそうだ。

「次世代社会インフラ」の鍵を握るのは、携帯事業会社の上場

こうした信用情報プラットフォームの構築はソフトバンクのテクノロジー戦略の一環だ。この戦略の中で信用情報プラットフォームはどのような位置づけなのだろうか。

それを考えるうえで注目されるのが、傘下の携帯事業会社ソフトバンクを2018年春にも上場させるとの報道だ。

ソフトバンクグループは「選択肢の一つだが決定事項ではない」と公表したが、もし上場が実現すれば時価総額約7兆円、売却総額約2兆円の過去最大級のIPOとなり、ソフトバンクグループは2兆円もの新たな資金を手にすることができるのだ。

かねてから孫正義社長は「ソフトバンクグループの株価が事業価値と比較して低い」という不満をもらしていた。2015年にニケシュ・アローラ副社長(当時)が発表した自己資金約600億円で自社株買いをするという「奇策」ももっと株価が上がるべきという市場へのメッセージともとれる。

事実、2017年10月にアナリストが試算したところによると、ビジョンファンドを除く事業価値から計算した理論株価よりも実際の株価が実に約4割も割安になる結果となった。

市場がこのように低く評価するのは「コングロマリット・ディスカウント」と「財政状況」が原因だ。コングロマリット・ディスカウントは積極的なM&Aをする企業が市場から本来の事業価値よりも相対的に低く評価される現象をいう。

携帯会社として知られるソフトバンクグループだが、実態はほほ投資会社だ。2016年に設立した「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」は10兆円という前代未聞の規模を持つファンドになり、レイターステージの企業へ出資するような規模の金額をアーリーステージ企業に出資しているといわれるほど積極的な投資をしている。

また、華々しい買収・出資の話題を振りまく影で財務状況に問題を抱える。2013年には米携帯電話会社のスプリント社を2兆円、2016年には半導体開発メーカーのARM社を3.3兆円で買収し、2018年には自動車配車大手ウーバー・テクノロジーズに約8,000億円を出資している。その結果、有利子負債は総額15兆円にも上り、海外格付会社からの評価は低い。

このような状況を考えるとソフトバンクの上場はグループで埋もれていた携帯事業の価値を市場に問うことで価値を引き上げ、グループは資金を手にして財務状況を改善したうえでテクノロジー投資に専念できるという意義を持つ。(もちろん、負債の返済にまわすべきだという意見も強いのだが。)

ソフトバンクグループがこれほどのリスクを取ってテクノロジー投資をするのは、ビッグデータを形成して新たな社会インフラを構築するためだと見て良いのではないだろうか。

ARM社を買収したのもウーバーに出資したのも、IoTから収集するデータを手に入れることが目的にある。スマートビルへの設計開発にも着手している。そして今度は、信用情報という金の卵を手中に収めるべく虎視眈々と外堀を埋めている。

果たして日本でも中国のように、個人の信用力が可視化され、信用スコアが次世代社会インフラとして機能する日は来るのか。それはソフトバンクの動向を無視しては語れない段階に入っているのではないだろうか。