三菱総研が2019年度までの世界経済見通しを発表、金融市場は米国株安の影響をうけ不安定化

15日、三菱総合研究所は、2017 年 10-12 月期 GDP 速 報の発表を受け、2017~2019 年度の内外景気見通しを発表した。世界全体として景気は堅調である一方、2月上旬の米国株安ショックや保護主義政策などによる金融市場のリスクに警鐘を鳴らしている。

三菱総研が2019年度までの世界経済見通しを発表、金融市場は米国株安の影響をうけ不安定化

同研究所によると日本の実質成長率予測値は、2017 年度+1.7%、2018 年度+1.1%、2019 年度+0.7%
となっている。※2019 年度の予測は 2019 年 10 月の消費税率引上げを前提。(前回予測値(12 月 8 日):2017 年度+1.8%、2018 年度+1.0%)

日本経済は、輸出・生産の堅調が予想されるなか、雇用・所得環境の改善による内需の前向きな循環が回り始めており、18 年度は+1.1%と潜在成長率並みの成長を見込む。19 年度も緩やかな景気拡大持続を予想するが、消費税率引上げ(19 年 10 月)の影響から+0.7%と若干の減速となると予測している。

また政府は、 平成29年12月に閣議決定した「新しい経済政策パッケージについて」の中で、経済を支える最大の柱は「人づくり革命」と「生産性革命」だとし、予算を投じることを発表している。同研究所発表による世界経済の動向とともに解説していく。

世界経済は堅調に推移、米国の株安により影響で金融不安定化

GDPは世界全体でプラス、注目すべきはタイの高成長

米国は雇用・所得環境の改善が続くなか、18 年は、税制改革による減税効果が表面化してくることから、実質 GDP は+2%台半ばの高めの成長を見込む。19 年は、減税による成長押上げ効果が一巡するほか、長期金利の上昇が成長の減速要因となる一方で、インフラ投資の拡大が景気の押上げ要因となることから、+2%程度の成長を予想する。

ユーロ圏は、雇用環境の改善が見込まれることから、消費を中心に緩やかな景気回復を予想する。実質 GDP は 19 年にかけて+2%程度の成長持続を見込む。

新興国は、先進国経済の安定成長や国内のインフレ圧力の緩和が予想されるなか、景気は総じて堅調を維持する見込み。
世界経済の中でも注目すべきは、東南アジアで2番目に経済規模が大きいタイ。2017年のGDPは、物価変動の影響を除く実質で前年比3.9%増。タイは輸出を伸ばしており、今後新興国の中で存在感を強めてくることは間違いないだろう。

世界経済のリスク要因

同研究所は、先行きの経済的なリスク要因として特に注視すべきは次の 3点だとしている。

●金融市場のリスク回避姿勢の強まり
米国発の大幅な株安などを受け、金融市場では積極的にリスクをとりにくい状況が続いている。米国株価の割高感は依然として残っており、今後、米国の金融引締めペースの加速などを契機に、金融市場が本格的にリスク回避姿勢に転じる可能
性がある。また、新興国を中心に債務調整圧力が強まれば、新興国の経済活動を抑制する。

● 米国・中国経済の同時急減速
中国では不動産価格が上昇、企業債務も拡大しており、今後、金融規制による貸出抑制が強化される可能性が高い。米国でも、財政赤字の拡大、減税・インフラ投資による景気過熱により、長期金利が急上昇するリスクがある。世界 GDP の 4 割を占める米中経済が同時に急減速した場合、世界経済の成長率は大きく低下するだろう。

● 米国の保護主義姿勢の強まり
18年11月に中間選挙を控えるトランプ政権が、再交渉中のNAFTA に加え、貿易赤字額の大きい中・日・独に対して保護主義化の圧力を強めてくる可能性がある。輸入物価上昇を通じた米国経済の下振れのみならず、世界的な貿易の停滞につながるリスクをはらむ。


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日本経済は「人づくり革命」と「生産性革命」で安定化をはかる

日本は経済の成長軌道を持続するために、少子高齢化という大きな課題を抱えている。その対策として掲げられているのが「平成29年12月に閣議決定した「新しい経済政策パッケージについて」の中の、「人づくり革命」と「生産性革命」の2本柱だ。

「人づくり革命」は、幼児教育の無償化、待機児童の解消、高等教育の無償化、私立高等学校の授業料の実質無償化、介護人材の処遇改善の施策であり、これらを実現するために安定財源を確保するという。

また「生産性革命」とは、中小企業・小規模事業者の投資促進と賃上げの環境の整備や、賃上げおよび設備・人材投資の加速
、Society 5.0 の社会実装と破壊的イノベーションによる生産性革命、規制の「サンドボックス」の制度化、第4次産業革命の社会実装と生産性が伸び悩む分野の制度改革、イノベーション促進基盤の抜本的強化、Society 5.0 のインフラ整備などを行うとしている。

人づくり革命で、人材を育て、生産性革命で人工知能、ロボット、IoTなど、生産性を劇的に押し上げるイノベーションを実現していく。政府主導のこの革命が企業をどこまで後押しできるのかはまだ未知数であるが、日本の成長の底上げは中小企業の成長や大きいことは間違いない。6年目に入るアベノミクスの実行力にも注目したい。