グーグルの研究機関エックスが、検索も広告も研究しない本当の理由

グーグルの持ち株会社アルファベットには謎に包まれた研究機関エックスが存在する。サイバーセキュリティのクロニクル社を分社化させる等、ときおり動きを見せるものの、予算規模や従業員数さえも正式には公開されていない。エックスが持つ真の狙いは何か。

グーグルの研究機関エックスが、検索も広告も研究しない本当の理由

サイバーセキュリティの新事業クロニクルを生み出した研究機関エックス

2018年1月、グーグルの親会社であるアルファベットは、サイバーセキュリティを扱う新会社クロニクルの設立を発表した。企業内に蓄積されたデータを分析し、これまで見つからなかった脆弱性を悪意のあるハッカーよりも早く発見し、適切な対策を講じるよう支援するサービスだ。グーグルが持つ強力なインフラと分析技術、並びに優秀なエンジニアたちを最大限に活用する。

サイバー攻撃はインターネットに関わる全ての人に影響する世界的な問題だ。仮想通貨取引所コインチェックで580億円相当の仮想通貨が不正に流出したのも記憶に新しい。また、主要ベンダーのコンピュータに搭載されているインテル製CPUに脆弱性が発見され、サイバー攻撃のリスクが指摘されたのも大きなニュースとなった。

サイバー攻撃のような世界的な問題に画期的な解法をもたらすために設立されたのが、アルファベットが抱える研究機関「エックス」だ。前述のクロニクル社は2016年にエックス内の研究プロジェクトの一つとして始まり、今回、エックスから独立する形で設立されている。

エックスはメディアの取材を受けることも稀で、その実態は謎に包まれている。年間10億ドルの研究予算が費やされているという噂もあるが、正確な予算や従業員の数は投資家にさえ明らかにされていない。

数十億人が抱える問題をまだ見ぬ解法と最先端の技術で実現するのがエックスの流儀

エックスを理解するには、アルファベットという持ち株会社を設立した経緯まで遡る必要がある。グーグルは検索を軸にした広告ビジネスや、そのインフラとなるクラウド事業を強みとする一方、独占禁止法への抵触リスク等を勘案し、成長戦略を描きにくい状況にあった。

そこで、自動運転車開発のような経営の多角化を推進するにあたり、持ち株会社の設立とグーグルと結びつきが弱い事業の分社化を行ったのだ。

エックスが持つ役割は「次世代のグーグル」を生み出すことに他ならない。グーグルが扱う検索や広告といった事業領域に縛られる必要もない。数百万人~数十億人に関係する大きな問題を発見し、これまで不可能と思われたような解法を見出し、最先端の技術でそれを実現するよう挑戦する。この「問題・解法・技術」が重なったところにエックスは焦点を合わせるのだ。