「パーベイシブAI」への転換期、デジタルネイティブ企業に生まれ変わる秘訣とは

「2018年以降、国内コグニティブ・AIシステム市場は本格的なビジネス活用フェーズに入り、どこでも、誰でも、何にでも、AIが適用される『パーベイシブAI』の時代に突入するだろう」と予測するのは、IDC Japanの眞鍋敬氏だ。2018年以降は、従来AIの活用とは無縁だと考えられていた領域まで急速に進み、企業がどのように知的創造を行っていくべきかという点が問われる時代になるという。

「パーベイシブAI」への転換期、デジタルネイティブ企業に生まれ変わる秘訣とは

2018年、コグニティブ/AIシステム市場は2017年の2倍に拡大

まずIDCが提唱する「パーベイシブAI」とは、どのようなものだろうか? これは普及型あるいは普遍型AIのことで、どんな業界でも当たり前のようにAIが使われる時代になるということだ。同社は、2018年がコグニティブ/AIシステムの普及元年になると予測している。

IDC Japan ソフトウェア&セキュリティ/ITスペンディング グループディレクター 眞鍋 敬氏

2016年、2017年とAI市場動向を見てきたIDCだが、これまで市場規模は思ったより大きくはならなかったという。おおむね160億円、230億円と右肩上がりに推移しているものの、IT市場全体からすると数字的には微々たるものだった。

「この理由を考えると、ユーザー企業もITベンダーもAI、PoC(Proof of Concept 実証実験)への疲れがみえていたようだ。しかし第3次AIブームの幕開けから2年が経ち、これからビジネス活用の変局点が起きるだろう」(眞鍋氏)

そもそもAIは教師データからモデルを作るため、効果が出るには時間がかかる。これまでのPoCがいよいよ結実し、実際に効果が見えてきてビジネス活用フェーズに入るのが、2018年なのだ。IDC Japanでは、市場規模が一気に2倍の540億円に跳ね上がり、以降も倍々ゲームで拡大し、2021年には約2500億円になるものとしている。

国内コグニティブ/AIシステム市場の支出額予測

従来のAI活用というと、たとえばコンタクトセンターのオペレータ補助や、製造プロセスの品質向上などで使われてきた。

「このようなAIの活用範囲が広がると、どこでも、誰でも、さらに人が意識しないでも、AIを使う時代が2〜3年のうちにやってきそうだ。今年のCES2018では、スマートスピーカーや自動車向けのAIなど、コンシューマ向けのAIが多かった。このような製品が産業分野でも応用されるとビジネスへの影響は大きく、AIがパーベイシブ化されてくる」(眞鍋氏)

コブニティブ/AIシステムは、エコシステムのなかで発展していく

では、具体的にAIがどのような分野に広がっていくのだろう? 前出のように、これまではコンタクトセンターの補助など、顧客の行動を予測するフロントエンド側で利用されてきた。

「ところが今後はバックエンド業務にもAIが使われていくだろう。IT(情報技術)からOT(運用技術)へ、IoTデバイスでデータが収集され、それらがAIで分析・活用される流れが増えてくる。このように広範囲にAIが使われはじめ、我々が意識しないところでAIが使われる状況が訪れそうだ」(眞鍋氏)

そもそもIDCが考えるコブニティブ/AIの定義とは、人間の思考や感情をもったジェネラルAIではなく、人間の意思決定や行動を助けてくれる補助的なものだ。ここでは自然言語処理・解析、リアルタイム学習、類似経験認識、スコアリングといった機能要件を満たす先端技術が活躍する。つい先日も、マイクロソフトが自然言語処理・解析で人間を超えたという報道があり、中国の百度も同様の技術を持っている。

IDCでは今後、コブニティブ/AIシステムがエコシステムのなかで発展していくとみている。自然言語処理・解析など、さまざまなコブニティブ/AIシステムのコンポーネントがコアにあり、その周りでプラットフォームが構成され、その上でいろいろな学習データを活用していく流れがあるのだ。

コグニティブ/AIシステムのエコシステム

つまり、ビジネスで重要なアプリケーションやサービスの背後でAIが隠れて動き、どこでも、誰でも、AIを使うことになるということだ。

「ビジネスで重要な点は、エコシステムの外周にあるアプリケーションやサービスの部分だ。実際には人事やセールス、購買・調達といった分野は、従来のアプリケーションとは何ら変わりはない。しかし、この背後でAIが隠れて動き、どこでも、誰でも使えることがパーベイシブAIの本質だ」(眞鍋氏)

ただしコグニティブ/AIシステムの利用状況(2017年)を見ると、約3割のユーザー企業が前出のようにPoC先行型。また残りの3割が様子見の段階だ。さらに残りの3割は、AIについて役立つか分からないという懐疑的な見方をしていた。

2017年のコグニティブ/AIシステムの利用状況

利用状況を詳しく見ると、まだユーザー企業では、AI利用はハードルが高いといえる。

「まだユーザー企業では、AIの利用方法や効果に迷いがあることがハードルになっている。これからユーザー企業と一緒に有効な適用領域を見つけていく必要があるだろう。しかし最も効果的な方法は、AIをビジネスにしたい企業が自社で使い、その効果をユーザーに説明することだ」(眞鍋氏)

知的創造性のある企業になるためのB2Bのアプローチとは?

では、企業が知的創造性のある企業になるためには、一体どうしたらよいのだろう? IDCではインテリジェントERPに関する予測も行っており、この中で眞鍋氏は日本企業に関係する予測を紹介した。

「まず2020年までに、管理部門の従業員の業務の15%が自動化の業務代行によってルーチン化される。あるいはバックオフィスのトランザクション処理の30%がAIアプリで自動化されるだろう。またグローバルビジネスの60%が、インテリジェントのERPシステムを使い始める」(真鍋氏)

これらは、いま働き方改革を進めている日本にとって、労働力不足や労働生産性の向上における対策のひとつとなるもので、効果も見えやすい。

もうひとつの予測は、従来は想定されていなかった領域にも、AI活用が広がってくるということだ。たとえば、オラクルやルネサスエレクトロニクスの事例があるという。

オラクルやルネサスエレクトロニクスでは、新しいAIの活用も模索しているところで、今後は同様の事例が登場するのではとの見方が強い。

このように、B2B領域でのAI利用方法が変化し、より多くの利用領域へのAI適用が広がり、「どこでも、誰でも、AI」が進行していくことになるわけだ。製造業ではプロセスの自動化にAIが活用されるだろう。


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