駒澤大学 井上智洋氏が指南「AIについて正しく知り、未来に備えよう」

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AI(人工知能)の進化は止められず、私たちの未来も確実に変わることになりますが、心の中のどこかで「まだ先のことだから」と「知る」ことを先送りしている人は多いのではないでしょうか。止められない未来であればまず「正しく知る」ことから始めることが大切です。AIが社会に与える影響をマクロ経済学の視点から分析している駒澤大学経済学部准教授・井上智洋氏にお聞きしました。
駒澤大学 井上智洋氏が指南「AIについて正しく知り、未来に備えよう」

駒大井上先生インタビュー前編はこちら。

AIの進化によって金融業界は大きく変わることになる

ーー前回は特化型AIから汎用AIへと進化しつつあるAIの現状や、今後AIが工場以外でも広く使われるようになるというお話をお聞きしましたが、AIはドイツで始まっている「インダストリー4.0」というか「第四次産業革命」などとも関係するのでしょうか。

井上氏:「インダストリー4.0」を「第四次産業革命」と訳さない方が良かったなと思っています。勘違いが生じやすいので、「製造業4.0」と訳す方がいいですね。インダストリー4.0は、ドイツ政府が推進している製造業の高度なオートメーション化を目指す国家戦略プロジェクトで、言わばドイツならではの取り組みを表す固有名詞です。アメリカでは「インダストリアル・インターネット」、中国では「中国製造2025」といった似たような取り組みが行われています。

第四次産業革命は、そういう各国の取り組みをすべてひっくるめた一般名詞と見なされるべきでしょう。さらに、第四次産業革命というのは、製造業だけでなく、農業やサービス業などにも広がるものと予想されます。製造業は第一次産業革命以降どんどん変化していますが、サービス業の方はあまり効率が上がっていません。それがどれだけ変われるかが第四次産業革命のポイントになります。

ーー第四次産業革命が工業に寄り過ぎるのはよくないですね。

井上氏:第一次、第二次は製造業寄りでしたが、第三次はコンピュータやインターネットなので、ここからは少しサービス業寄りなのかなと思っています。第四次ではますますサービス業への影響が強くなるでしょう。

ーー日本にとって重要なポイントになってくるのはサービス業なのですね。

井上 今では、GDPの大きな部分を占めるのはサービス業で、日本では7割以上です。なので、そこがどれだけ変われるかはとても重要になります。これまでは事務作業や事務手続きがIT化されてきましたが、これから変わるのは肉体労働と頭脳労働です。

今でも事務作業のIT化は進んでいて、求人倍率は0.45倍と人がだぶついています。よく人手不足と言いますが、事務職はすでに余っています。さらに今のAIは言葉の意味はよくわからないが数値には強いので、金融業ではとりわけAI化が進むことになります。

金融業の中でもとりわけ銀行業が最初に大きな影響を被るでしょう。2017年、メガバンクが相次いで人材削減などを発表しています。

たとえばみずほフィナンシャルグループは100店舗、1万9,000人の削減を発表していますし、三菱UFJフィナンシャルグループも100店舗の自動化と6,000人の人員削減、三井住友フィナンシャルグループも全店舗の自動化と4,000人分の業務量削減を発表しています。

「いつまでに」という時期や規模には差がありますが、AIの進化によって金融業界が大きな影響を受けるのはたしかです。じゃあ、金融業に携わっていた人たちが安全に転職できるのかというと、金融業に詳しい人は「そんな甘くない」と言っています。


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技術に触れ、AIを使いこなす側に回れば活躍できる

ーー恐ろしい話ですね。具体的に企業の現場ではRPA(ロボットによる業務自動化)などを使うことで事務作業は楽になっているのでしょうか。

井上氏:リクルート社の総務に関わる事務職のスタッフは今30人くらいだそうです。減らせるところまで減らしています。

既存の大企業は総じてIT化の動きが遅いのですが、中小企業や新興企業の中には早いところもあります。大手銀行は余裕があるので逆にこれまでフィンテックの導入をそれほど進めてきませんでしたが、地方銀行は経営者次第で非常に早いところもあれば遅いところもあり、バラつきがあるようです。

ーー他の業界でも差が出ているのでしょうか?

井上氏:証券業界の方々と一時期かなり議論をしましたが、意識の高い人は「俺たちの仕事ってなくなっちゃう、どうやって生き残ればいいのだろうか」と生き残り戦略を考えているし、AIをいち早く導入したところが証券市場を支配するのでは、と予想する人もいます。しかし、あまり危機感がない人、企業もあって、やはり差を感じます。

ーービジネスパーソンは今後、急速に進化するAIをどうとらえ、どう付き合っていけばいいのでしょうか?

井上氏:文系でも若い人はプログラミングをやった方がいいと考えています。自分で経験するとAIで何ができて何ができないかがわかるようになります。私が大学生の時に属していた学部では、学生全員にプログラミングをさせていますが、そうするとアルゴリズム的思考ができるようになります。

建築でコンピュータを使うというとこれまではCADが中心でしたが、今では「こういう要件で設計を」と指示するとあらゆるバリエーションの建物を設計することができます。その分野「アルゴリズム建築」の第一人者に私の学生の時の友人がいます。

その人は自分ではプログラミングはできないものの、学部で一度プログラミングを習っていてアルゴリズムの何たるかはわかっているので、人に指示することはできる、と話していました。ビジネスパーソンもそれと同じことができるようになればいいのです。

文系の人でも技術者と話ができて、的確な指示ができるようになればいいのです。技術に一度は触れておかないと議論が空回りするので、一緒に議論するためにもそのためのベースはあった方がいいし、AIを使いこなす側に回ればもっと活躍できるのです。