依然として日本企業に蔓延する「残業体質」―パーソル総合研究所×東京大学調査

総合人材サービスパーソルグループの総合研究機関であるパーソル総合研究所は2月8日、東京大学 中原淳准教授との共同研究「希望の残業学プロジェクト」の研究結果を発表した。これによると、最も残業している業種1位は運輸・郵便業で、職種1位は配送・物流であることがわかった。 

依然として日本企業に蔓延する「残業体質」―パーソル総合研究所×東京大学調査

常態化する日本企業の「残業」の実態とは

政府や各企業で「働き方改革」が進められている。その中で、政府は残業時間についても上限や企業に対する罰則を定める提案をするなど、残業の削減を推進しようという動きをみせている。

労働基準法32条では、「使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。」「使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。」と定められている。しかし、過労死をはじめとする長時間労働の問題はあとを絶たない。

残業の実情についてはどうなっているのだろうか。今回は、東京大学の中原淳准教授とパーソル総合研究所の共同研究である「希望の残業学プロジェクト」の研究結果をもとに紹介する。このプロジェクトでは、会社員6,000人を対象に定量調査を実施し、日本企業で常態化する「残業」の実態や発生要因、効果的な対策について検証したものである。

繁忙期には平均50時間を超える業種も

まず、管理職を除くメンバー層の残業時間について調査したところ、30時間以上残業している人の割合が多い業種1位は運輸・郵便業、2位は情報通信業、3位は電機・ガス・熱供給・水道業だった。

職種の1位は配送・物流、2位は商品開発・研究、3位はIT技術・クリエイティブ職という結果となった。

一方、係長以上の上司層では、業種は建設業、製造業、運輸・郵便業、職種は商品開発・研究、専門職種、生産管理・製造の順となっており、繁忙期に平均50時間を超える業種が存在することも明らかとなった。

残業施策している企業ほど上司への業務集中につながっている

残業が発生する職場の特徴について分析し、残業発生のメカニズムを検証したところ、残業は「集中」して、「感染」して、「麻痺」させて、「遺伝」することが明らかになったという。以下でこの4つの特徴を説明する。

優秀な部下や上司層に残業が集中

1つ目の「集中」とは仕事のシェアがうまくいっておらず、優秀な部下や上司層に残業が集中していることを指す。これについては、上司を対象に調査したところ、「優秀な部下に優先して仕事を割り振っている」と回答した人が60.4%を超え、スキルの高いメンバーに残業が集中している実情が伺える。

また、残業削減の対策を実施している企業ほど、上司に業務が集中していることが推察されている。「部下に残業を頼みにくくなった」かどうかの質問では、残業削減の対策を実施している企業で働く上司層のうち約30%が頼みにくくなったと回答したのに対して、残業対策を実施していない企業の上司層では17.6%に留まる。

職場に帰りにくい雰囲気が蔓延

次に「感染」とは、職場内の同調圧力によって「帰りにくい雰囲気」が蔓延し、結果として残業が発生していることを指す。これについては、残業が発生しやすい組織特性を調査した結果、「先に帰りにくい雰囲気」がもっとも残業への影響力が大きいことが明らかとなったという。


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残業60時間を超えると健康リスクは2倍に

そして、「麻痺」とは、長時間労働によって「価値・意識・行動の整合性」が失われ、健康被害や休職リスクが高まることを指す。ここでは、このような問題を「幸福度」と呼び指数で分析した。その結果、残業時間に応じて、「幸福度」は徐々に低下するが、月60時間を超えると上昇することが明らかとななった。

幸福度が高いからといって、残業時間が長くなっても良い、ということではない。残業が60時間を超えると健康リスクが2倍に膨れ上がるというのだ。

60時間以上残業している人のうち、強いストレスを感じている人の割合は残業しない人の1.6倍、重篤な病気・疾患がある人は1.9倍にものぼるという。長時間残業している人は、高い健康リスクにさらされているのだ。この結果から過度な長時間労働は、主観的な幸福感を上昇させ、健康被害を軽視してしまう可能性があると警鐘が鳴らされている。

残業体質は世代と組織をまたいで受け継がれる

4つ目の「遺伝」とは上司の若い頃の長時間労働の習慣が、下の世代(部下)にも継承されていることを指す。上司が「若いころ、残業をたくさんしていた」場合、その部下も残業時間が長くなる傾向にあることが明らかになったのだ。

また、上司が新卒入社時に「残業が当たり前の雰囲気だった」「終電まで残ることが多かった」経験をしていると、転職して就業する企業が変わったとしても、部下に残業をさせている傾向にあるという。残業体質は、世代と組織をまたいで受け継がれているという現実が改めて浮き彫りとなった。

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