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職場におけるストレスはなぜ減らないのか?
2015年6月、労働安全衛生法の改正により、労働者が50人以上いる事業場はストレスチェックが義務化された。また厚労省は、2017年までに「メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合を80%以上とする」という目標を設定し、メンタルヘルス不調になりにくい職場環境づくりを促進すると掲げてきた。
ストレスチェック義務化からもうすぐ3年。職場におけるストレス状況は本当に変わったのだろうか?その現状を探るべく、今回はメンタルヘルス企業「lafool・ラフール」に取材した。
lafoolはストレスチェック義務化以前からメンタルヘルス対策を実施し、延べ約3000社のデータを分析している。またAIを活用したメンタルヘルス対策にも意欲的で、産学連携にも力を入れている業界のリード企業だ。
lafool(ラフール)の代表を務める、結城啓太氏に話を伺った。
「ストレスチェック義務化は、残念ながら根本的な改善にはなっていないというのが私の結論です。ストレスチェックは57項目の質問に答える形式ですが、あなたは「高ストレスです」と判定されて、その後どうするかは本人次第。会社に申告し、医師の面談を受けることができますが、そもそも会社に言いたくない人も多いのです。
その理由は、キャリア形成に傷がつく、病気というイメージをもたれる、さらには経営者側が「高ストレス者=仕事ができない」と本気で思っていること、などさまざま。会社側も、本人の同意なしでは誰が高ストレスなのか閲覧できず、コストだけがかかっていると感じています。」(結城氏)
労災請求件数も年々増加しており、2017年は1586件にのぼった。労災決定理由としてもっとも多いのは「仕事の質・量」であるが、ストレスチェックの結果だけを見ればストレスの原因として、多いのは圧倒的に「対人関係」だと、結城氏は語る。
上司との人間関係に問題をかかえている場合、自分が高ストレスであることを、その上司に告げることができるだろうか。会社には言わず、自分で最寄りのクリニックに行き、薬を処方してもらう人が増えているという。医師の治療が必要になる前に予防目的ではじまったストレスチェックが、逆転現象を生んでいる。
また、昨今の働き方改革も、ストレス要因になりえると結城氏は指摘する。時間を短くするだけで仕事の量や内容は変わらず、現場にしわ寄せが来ているケースもあるという。働き方改革、ストレスチェック、同じく国の方針であるが、現場の実態と理想には乖離がある。
義務化だからやるのか?何のために行うのか?経営者やマネジメント担当者が本来の目的をよく考え、従業員にその意義を理解してもらうための努力をしなくてはならない。