スタートアップ・スタジオが、世界経済の「重心」を変える

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失敗を最小限に抑える新たな組織形態「スタートアップ・スタジオ」が話題となって久しい。新たなイノベーション創出モデルとして先進国のみならず新興国でも注目されるスタートアップ・スタジオは、欧米、中南米、アジアを含む世界中で同時多発的に増殖中だ。今回は、中南米などの新興国でスタートアップスタジオが躍進する背景とその影響について考察をまとめた。
スタートアップ・スタジオが、世界経済の「重心」を変える

起業を「全面サポート」するスタートアップ・スタジオとは

ハリウッドの映画スタジオでは映画製作をプロジェクト単位で実行していく。プロジェクトには脚本、撮影、キャスティングなどそれぞれの分野のスペシャリストが招集される。

「スタートアップ・スタジオ」もプロジェクト単位で起業家、エンジニア、UX/UIデザイナー、マーケター、法務のスペシャリストを招集してチームを編成しプロジェクトを推進していく。スペシャリストはスタジオ所属の場合が多く、プロジェクトごとに動員される。場合によっては外部から招集されることもある。

スタジオは資金面や施設貸し出しなどのサポートも提供。スタートアップ・スタジオを自身でも運営しておりスタートアップ・スタジオに精通しているアッティラ・シゲティ氏の著書「STARTUP STUDIO」によると、サポートと引き換えにスタジオは平均してスタートアップの株式比率50%を得ているようだ。

スタートアップ・スタジオとアクセラレーターが異なる点

専門家によるメンタリング、株式と交換で資金提供する部分的なサポートに終始しがちなアクセラレーターやインキュベーターとは、スタートアップ・スタジオが決定的に異なる点がある。それは前述のように「資金・人材調達、事業設計、マーケティングまでと起業を全面的に支援する点」だ。

起業が「失敗」に終わりそうな場合においても経験豊富なスタジオの経営陣が継続するか断念するかの判断を迅速に下す。これによって失敗による被害を最小限に抑えるのだ。もし失敗したとしてもその失敗から学んだ教訓はスタジオに蓄積され、別のスタートアップ立ち上げに活かされていくことになる。

スタートアップ・スタジオはなにも米国のシリコンバレーのようなエコシステムが整っている地域だけの話ではない。欧米、中南米、アジアを含む世界中で同時多発的に起きている現象だ。前述の「STARTUP STUDIO」においては2015年世界各地で51のスタジオ、翌年2016年には150以上のスタジオを発見できたことが明らかにされている。

中南米で躍進するスタートアップスタジオ「InnoHub」の事例

スタートアップスタジオは、とりわけ中南米のような新興国地域においてこそ起業家に重宝されており、今後さらなる躍進が見込まれているようだ。事例を紹介しよう。

中南米で成功事例として注目されているスタジオにメキシコの起業家ホセ・ルイス・デ・アルバ氏とレイモンド・ブルゲラ氏の2人が立ち上げた「InnoHub」だ。

InnoHubでは最初に15万ドルを投入してスタートアップの具体的な事業設計を固める。そして、半年間はInnoHubがスタートアップの共同創業者として関わり、エンジニア、マーケターなどを招集してチームを編成し事業を推進できる体制を構築。その後は必要に応じて資金調達、インフラ支援含むサポートを提供していく。

また、InnoHubは投資家とのコネクションによりプロダクトの流通経路を確保していることも強み。市場において迅速にテストマーケティングを実行できるのだ。

InnoHubは創業1年半で以下の4つのスタートアップを立ち上げた。

・Smart Sales(営業支援アプリ)
・HotelPaq(ホテル予約管理プラットフォーム)
・EnvíoClick(オンラインで荷物の配送手続きができるサービス)
・Avanttia(中小企業向けの請求管理システム)

HotelPaqは撤退したようだが、他のスタートアップに関しては順調な模様。今後5年以内にイグジットを目指すとのことだ。これらの成功例を引っ提げて今後は中南米の各地に拡大していく予定である。