解雇規制とは?規制緩和のメリット・デメリットを日米比較から考察

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記事の情報は2018-04-18時点のものです。

最近、解雇規制の緩和についてニュースで取り上げられることが増えてきました。本記事では、解雇規制を考える前提として「解雇の種類と手続き」のおさらい、現在厚生労働省で検討が進められている規制の緩和について背景や主旨、また雇用の流動性が高いアメリカの事例をもとに、解雇規制緩和のメリットとデメリットについて考察をまとめました。

解雇規制緩和のメリット・デメリットとは

では、将来的に解雇規制が緩和されたら、世の中にはどんな変化がもたらされるのか考えてみましょう。解雇規制の緩和は雇用の流動性に繋がります。極端に言えば、失業者の増加と正規雇用の増加の両方が発生するということです。その場合、会社にどんなハッピーがもたらされるのでしょうか?

解雇規制緩和のメリット(1)人事評価と賃金格差のねじれを減らせる

人事評価制度を年功から職務や成果を前提としたしくみに変えても、既存社員の給料減額や解雇が難しいことにより、評価と賃金の間にねじれを抱えてしまう企業は多いもの。規制緩和は、このねじれを紐解く一歩になるのではないでしょうか。

解雇規制緩和のメリット(2)ハラスメントやメンタル疾患が減少する

辞めさせたい、でも辞めさせられないというジレンマからパワハラに繋がるケースを多く目にしてきました。規制緩和は、退職誘導を示唆するハラスメントとハラスメントに起因するメンタル疾患発症の抑制につながるのではないでしょうか。

解雇規制緩和のメリット(3)転職市場が活発になる

解雇されることはまずないという前提で成り立っていた企業への帰属意識は薄れ、労働者の自発的なキャリア開発が進むことが期待できます。やりたい仕事やよりよい待遇を求めて、魅力的な転職者が転職市場に舞い込んでくることでしょう。

解雇規制緩和のデメリットとは

もちろん、良いことばかりではありません。転職市場が活発になるということは、魅力的な人材から流出しやすくなります。また雇用の流動性が高まれば、ブラック企業で耐え抜く理由はなくなります。これまでのようなゼロからの長期的な人材育成では育成コストの回収は難しくなるでしょう。

また、解雇の金銭的解決が認められれば、自ら退職を申し出るよりも解雇扱いにしてもらう方が良いと考える社員が出てくる懸念もあります。

企業は解雇規制緩和のメリットとデメリットを真摯に考えるべき

つまり、解雇規制に悩まされている企業は、規制の緩和は手放しで歓迎できるものではなく、メリットがありつつもデメリットも同じようにあるということを認識しなくてはならないということです。結局のところ、解雇規制が緩和されるかどうかに関わらず、人材の流出を防ぐためには、より魅力的な待遇や職場環境を提供できるよう企業努力が不可欠なのです。

副業を解禁する、オープンイノベーションや学びの場を提供するなど、「働き方改革」にそのヒントがあるように思います。これらの制度導入を進めるには、多角的な検討や従業員への理解促進が重要になるため、時間もかかります。解雇規制の緩和が本格始動する前に、いますぐにでも着手する必要があるのではないでしょうか。