「アレクサ、店員さんを呼んで」音声認識で変わる外食産業の働き方

渋谷にAlexaでオーダーができる居酒屋があるという。客がテーブルでAlexaに話しかければ、オーダーが通るのだそうだ。とても行ってみたくなる。行ってみて、誰かに話したくなる。その話したくなるという動機が今の時代、大切なのではないだろうか。

「アレクサ、店員さんを呼んで」音声認識で変わる外食産業の働き方

Alexaが登場する背景

パートタイムやアルバイトの労働が変わろうとしている。都内を中心に時給が高騰しているのだ。これをデフレ脱却と見るか経済政策の正解と見るかは人それぞれだが、背景には人手不足があるとされる。

特に居酒屋を中心とした飲食はブラック労働が多いとのイメージがすっかり定着し、高時給を出しても人が寄り付かない。いまはあのワタミですら時給1,100円を超えているのだ。ワタミが低時給でブラック労働だったというのは過去の話。今や労働環境はさておき時給だけでみると、かつての「徹底的に搾取する企業」というイメージは薄れるのではないだろうか。

そんな人手不足と好景気を背景として、Alexaオーダーの居酒屋は登場した。ほかが導入していないからこそ、目立つのだろう。人手不足がどうというよりも話題性を狙った集客的側面はあるものの、非常に興味深い試みだ。

さっそく来店し、バグを発見して遊ぼうと考えたが、予約が必要な上に、思うように時間が取れず、考察のみに留まるのを許して欲しい。

まだまだ発展途上、着目すべきは「将来性」

実際にこのAlexa居酒屋に来店し、オーダーした人の動画をみてみると、音声認識はまだまだのようだ。「事前の概念実証においては、通常のオーダー方法と比較した場合、店舗スタッフの労力は50%減」との報道があったが、一足飛びに人手不足解消とはならないだろう。そもそもスマートスピーカーのポテンシャルを十分活かしきれていない。

しかし今現在の完成度に納得がいかないからといって、辛辣な評価をすべきではない。肝心なのは、時代をキャッチアップし、うまく集客に結びつけていることである。

スタッフを呼ぶこともできるが、Alexaに話しかけるとAlexaが店員を呼ぶという。「店員さーん」と一生懸命呼ぶアレクサに好感が持てる。「それでは意味がないよ」との意見もあるだろうが、アナログ感の”楽しさ”を入れていることは反対に評価できるのではないだろうか。将来的には雑談の相手もしてくれる予定だという。

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消えゆく「感情労働」と多大なるメリットとは

すでに外食産業においてオーダーでiPadを使うところは、都内では当たり前になりつつある。特にチェーン店で顕著であり、回転寿司のスシローでももはやオーダーはiPadの役目だ。

単純労働だけでなく、「感情労働」がロボットに置き換えられ、消えていく。非常に良いことではないか。高いとはいえない賃金での過剰なおもてなしを求められる「感情労働」は、働く側を疲弊させる。クレーム対応なども同様だ。

あるカスタマーサポートの女性が語ったところによると、クレーム対応時のアイコンを女性から男性に、男性から猫にすると、ハラスメントじみたメッセージが激減したという。

人はどうしても、企業のいちスタッフという弱い立場の人に強く出てしまう傾向がある。どこの国でも変わらず同じ傾向があるようだが、「お客様は神様」「おもてなしの精神」が前提の日本においては言わずもがな。これがロボットに置き換わると、今度はメカに強く当たる人が出ることは容易に想像できる。(よってたとえば猫にするなどのアイデアが求められるかもしれない。)

しかし、感情労働の観点からみてみると、初期の対応をチャットボットにするということは非常に効果があるのではないだろうか。ボット代行でサービス提供側に気持ちのゆとりが生まれれば、結果としてサービス品質の向上にもつながるはずだ。

実はカウンセリングといった極めてプライベートな事情を話しあう場面でも、対人よりも対ボットのほうがプライベートなことを話しやすくなるといったデータもある。話す側も、相手が人だと構えてしまうが、「ただ聞いて欲しいだけ」といった初期段階では機械のほうが向いてるケースがあるのだ。

機械がサービスを代行することイコール「悪(おもてなしの精神に反する)」という固定概念を持っているなら、まずはそれを疑ってみるべきだろう。これからは、テクノロジーと人間が共存して働く時代だ。