フェイスブックはGDPR(欧州一般データ保護規則)でマイクロソフトの二の舞になるのか

公開日:
個人情報不正流用疑惑に揺れるフェイスブックには米国に加え、欧州・英国議会からも監視の目が光る。EUでプライバシー保護を目的としたGDPRの施行や、EU全体での売り上げに課税されるデジタル税の導入が報じられる中、フェイスブックは競争力を維持できるか。
フェイスブックはGDPR(欧州一般データ保護規則)でマイクロソフトの二の舞になるのか

批判を集めるフェイスブックであるが、ユーザーや広告主の離脱は限定的

フェイスブックの個人情報不正流用疑惑は世界的なニュースとなった。英調査会社ケンブリッジ・アナリティカ社がフェイスブック上で自己診断テストを受けたユーザーとその友人の情報を本人の許可なく使用し、2016年米大統領選におけるトランプ氏の選挙運動に使われたというものだ。

反感を示すユーザーからはボイコット運動を行ったり、企業アカウントを削除したりという騒動が起きた。騒動直後は、株価が7%下落し、過去4年で最大の下げ幅となった。同社は、プライバシー保護の機能を強化し、他のデータ提供会社の情報を使った広告配信を制限する方針を示している。

厳しい局面を迎えたフェイスブックが持ち直しの兆しを見せたのは2018年4月に開催された米国下院エネルギー・商業委員会の公聴会だ。マーク・ザッカーバーグCEOは50名以上の議員と質疑応答を行ったが、同社のビジネスモデルを揺るがすほどの追及は行われなかった。株式市場はその動きに好感を持ち、同日終値で0.78%の株価が上昇し、その後も堅調な動きを見せている。

「#deletefacebook(フェイスブックを削除しよう)」といった激しい運動が起きた割には、ユーザーも広告主も、それほどフェイスブック離れが進んでいないとも言われている。特に、広告事業の75%を占める中小企業においては、小規模で精度の高い広告を出稿するキャンペーンを行えるプラットフォームが無い現状では、フェイスブックから離れるのは難しいのだ。

GDPR(欧州一般データ保護規則)やデジタル税の導入がフェイスブックの負担に

しかし筆者が拠点とする欧州では、フェイスブックに対する風当たりは更に厳しくなっている。欧州議会や英国議会でも、米国と同様に、ザッカーバーグCEOによる証言を求めていると報じられた。

特に英国では重要な問題となっている。英国がEU離脱を決めた国民投票において、離脱派に傾きそうな有権者を絞り込むため、ケンブリッジ・アナリティカとカナダの企業アグリゲートIQが不正に取得したフェイスブックの情報を使用したという疑惑があるからだ。

欧州では、さらに、2018年5月に施行されるGDPR(欧州一般データ保護規則)がフェイスブックの事業に負担を強いることが予想されている。

GDPRは欧州市民のプライバシー保護を目的した規制で、明示的な同意のないデータ利用には厳しい罰則が科される。情報漏えいが起きた場合、全世界の売上高のうち4%、または、2000万ユーロのうち、高い方が罰金となる。

今回のデータ不正流用が2018年5月以降に発生していた場合、ユーザーにはEU市民が含まれていたと考えられるため、2017年の売り上げ400億ドルの4%、およそ、16億ドルが罰金として科されていた可能性がある。

加えて、欧州では「デジタル税」とも呼ばれる新たな税方式が議論されている。フェイスブック等の大手テック企業は、アイルランドやルクセンブルクといった税率の低い国に収入を集め、税金対策を行っている点が指摘されている。

結果として、フェイスブックの実効税率は10%近くまで下がっているとの調査もあり、税務当局としては、不公平感を是正したいという考えがあるのだ。

デジタル税では、EU全体の売り上げに対し、収入の1~5%に課税する仕組みが検討されている。法人税を下げて企業を誘致してきた国からの反発は免れないが、EU内での調整が期待されている。フェイスブックにとっては税負担の増加が見込まれる状況にある。

人気の会員限定記事
「iPhone X新型チップ」がインテルを破壊する
テスラ、アップルに共通する「売れる新製品」の広め方
アマゾンの「銀行業参入」が話題に
グーグル持ち株会社アルファベット「研究機関エックス」の使命
もしアマゾンが破産申請のトイザらスを買収したら?

EU法規制によって縛られるフェイスブックは、マイクロソフトの二の舞になるか

データ流用、プライバシー保護、デジタル税といった課題は、フェイスブックに限らず、多国籍に展開するテック企業全体に影響がある。グーグルやツイッターは、個人の行動履歴に応じて広告配信先を絞り、広告主のマーケティング活動を支援している。

また、アマゾンやネットフリックスは、個人の好みを推定し、購入したくなるような商品を推薦する機能を強みとする。これらの企業が取り扱うのは個人情報そのものだ。

「Facebookアカウントを使ってログインする」という機能を使った経験があるだろう。他サイトのログイン情報と連携して、別サービスを利用する仕組みだ。ユーザーにとってはログインの手間が省ける一方、サービス提供者はソーシャルアカウントから情報を取得できる。このような仕組みの中では、個人データの行方が分かりにくくなり、データ流用のリスクは高まる一方だ。

テック企業の中で比較的プライバシーに慎重な態度を取っているのがアップルだ。いわゆる「閉じた」プラットフォームの構築を好む同社は、ソーシャルアカウント連携の利用は限定的だ。アップルのティム・クックCEOは消費者保護と同時に、ユーザーデータを過度に利用してきた競合企業を追い詰めるかのように、プライバシーに関する規制強化を求めることを示唆している。

米国のテック企業に規制が設けられた例としては、マイクロソフトがWindowsの独占的な地位を利用して競争法を違反したという2000年代の事例が知られている。ソーシャルメディアの分野で独占的な地位を築いたフェイスブックは、独占禁止法違反を指摘され、規制対応に悩まされたマイクロソフトに似た境遇ともいえる。

フェイスブックにとって、個人情報から広告配信の精度を高めるのは、ビジネスモデルの根幹を成す。企業の成長、競合からの圧力、消費者のプライバシー保護、当局からの徴税といった多方面の課題が同時に降りかかる状況をどう打開するのか。現在の地位を維持し続けるのか、新興企業の台頭を許すのか、フェイスブックの正念場が訪れている。