LGBT当事者からは言い出せない「会社への要望」

5月はLGBTプライド月間です。この1年ほどで日本でも急速に認知度が高まったLGBT。突然、社員からカミングアウトがあったら?内定を出したい人材がLGBTだったら?会社はどのような対応を求められるのでしょうか。ここでは、LGBTを受け入れる社内体制の整備について心得をまとめます。

LGBT当事者からは言い出せない「会社への要望」

先進事例から社内のLGBT対応の必要性を考える

LGBTプライド月間を迎えた5月、LGBTの方が働きやすい社内体制の整備について考えてみたいと思います。その前提として、世界各国と日本における状況の違いを知っておくべきでしょう。

現在、欧米諸国の多くは、性別の訂正・変更、同性間の結婚を法律で認めています。日本でLGBTが話題になり始めたとき、LGBT対応の先進事例として取り上げられた企業の多くが、欧米に本社を持つ外資系企業だったのはそのためです。

一方、日本では、性同一性障害特例法に基づき性別を変更することは可能ですが、同性間の結婚は法律上まだ認められていません。渋谷区の同性パートナー条例を皮切りに、この3年ほどで同性カップルを認める自治体が出始めたことは日本ではまだまだ画期的なニュースですが、企業単位に範囲を限定すれば、独自の取り組みも見られます。

たとえば、携帯電話の割引サービス “家族割”は、ソフトバンク、au、ドコモの大手3キャリアとも適用範囲を同性カップルにまで広げています。マイレージの家族間共有も、日本航空、全日空ともに同性カップルも共有できるように変更しました。

LGBT関連のイベントに協賛する企業や社内のLGBT対応を積極的に進める企業も、業種を問わず増えていて、世の中はLGBTの受け入れに少しずつではありますが前向きに動いています。今後、カミングアウトする人も少しずつ増え、権利を求める声も少しずつ大きくなっていくことは間違いありません。むしろ、この流れは今後加速する可能性の方が高いと思われます。

しかし、LGBTであることを会社でカミングアウトするには「リスクが大きい」と判断して働きづらさを抱える当事者のほうが圧倒的に多いのではないでしょうか。LGBTであることを知られたくない、周囲に気遣いされたくない。マイノリティ側がそう感じるのは当たり前のこと。まずは会社側から歩み寄り「打ち明けても大丈夫」という空気を醸成できるよう、工夫を重ねていくことが重要なのです。


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一番大切なのは、プライバシーへの心配り

私は社労士としてさまざまな企業の人事部門の方々と話す機会がありますが、人事の方々とLGBTの受け入れについて話すと、これから受け入れる企業の人事担当者と、すでに受け入れを経験している企業の人事担当者では、力の入りどころが違うと感じます。

その違いがなんだろうと考えてみると、経験している企業の人事担当者は総じて要望ありきでの対応を重視していることがわかりました。「受け入れ体制の整備」というと、あらかじめ万全な仕組みを整えなければとのイメージが湧いてしまいがちですが、LGBT対応で重要なのは、先回りすることよりも相手の要望に寄り添うことなのです。

受け入れ経験のある人事担当者に、相手の要望に寄り添ううえで大切なことを伺いました。

「要望は多岐にわたるため、すぐに対応できることもできないこともある。けれども最重視して体制の整備にあたるべきは、情報収集におけるプライバシーへの配慮です。この点について失敗は許されません。」

私が、これから体制の整備にあたる方からご相談を受けた際には、プライバシー配慮のたとえとして年齢をあげています。

この人何歳なんだろう?でも聞いたら失礼かな?という経験は、誰もが一度はあるでしょう。聞かれる側として、年齢をもとに他人と比較されたり、レッテルを貼られていやな気分になったという経験をお持ちの方もいると思います。

会社の中にも、年齢を明かすことにまったく抵抗がない人も、できる限り明かしたくない人もいますし、相手や状況によって明かすか明かさないかを判断する人もいます。一方で、会社が勝手にその人の年齢をばらしてしまうことは有り得ないことです。

LGBTにかかる情報は、年齢以上に配慮が必要な情報です。情報収集と取り扱いにあたっては、以下の点に注意しましょう。仕事に関連がないことを興味本位で情報として収集することがないよう、そして会社が不用意に情報を漏らしてしまうことがないよう十分注意しましょう。

・収集する必要がある情報を明確にし、必要以上に情報を収集しない
・情報の公開範囲を設定し、情報に触れる社員を限定的にする

この点についてまずしっかりと対応していくことが、受け入れの第一歩です。それでは具体的な対応事項としてどのようなことがあるのでしょうか。