アマゾン「プライム・ワードローブ」のデータ戦略はゾゾスーツを凌駕するか

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試着してから購入できる通販サービス、アマゾン「プライム・ワードローブ」の正式展開が待たれている。ゾゾタウンが体型を正確に計測するゾゾスーツを発表するなど、ファッション・テック業界の動きは加速中だ。プライム・ワードローブ導入の裏にあるAI戦略を読み解いてみよう。
アマゾン「プライム・ワードローブ」のデータ戦略はゾゾスーツを凌駕するか

買う前に試着して、欲しいものだけ買えるアマゾン「プライム・ワードローブ」

ファッション向けEコマースの大きな課題は、買う前に試着ができないことだ。画像では見栄えの良い衣服でも、自分に似合わなければ意味がない。サイズや質感、色合いや着心地は、手にとってこそ分かる部分であり、着心地への不安が注文ボタンを押すことを躊躇させることも少なくない。アマゾンは「買う前に試着できる」プライム・ワードローブの導入によって、この壁を破ろうとしている。

アマゾン・プライム会員向けのこのサービスでは、男性・女性・男子・女子・ベビーといったカテゴリと、トレンディー・ロマンティック・スポーティー・カジュアルなどのファッションスタイルが選択できる。各カテゴリの中から3~15程度の商品を選択すると、「ワードローブボックス」として箱詰めされて配送される。

商品を受け取ったユーザーは、7日間、試着ができる。不要だと思った商品は同梱されたラベルを使って返送し、気に入ったものは、そのまま手元に置いておける。複数商品を購入した場合は割り引き特典もある。往復の送料は無料だ。

プライム・ワードローブはファッション用品購入のプロセスを大幅に簡素化してくれる。店舗に出向かなくても、手にとって商品を選べるので、購買意欲を大いに刺激する。気に入らないものを選択してしまっても無料で返品できるので注文のリスクがほとんどない。衣料品店での店員と会話するのが億劫な人や、洋服を買いに出かける時間の無い人にも魅力的なサービスだろう。

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プライム・ワードローブとEcho Lookでファッション購買データの収集が進む

アマゾンがアパレル業界に参入したのは2002年の頃であり、2009年にザッポス社を買収するなど、衣料品小売りの投資を進めてきた。プライム・ワードローブの検討は、その戦略の一部に過ぎない。

アマゾンが得意とするのは収集した購買データからユーザーの好みやトレンドを予測したり、物流を最適化したりする点にある。プライム・ワードローブが衣料品購入の敷居を下げるので、より多くの購買データが収集できる。あるユーザーが「興味を持って購入した商品」と「興味を持ったけれども購入しなかった商品」を判別し、商品の特性やユーザーの好みを詳細に分析できるようになるだろう。

プライム・ワードローブは、米国で販売が始まったスマートスピーカー「Echo Look」との相乗効果が大きい。ユーザーはEcho Lookを使って、全身の自撮り写真を2パターン撮影する。Echo Lookアプリはファッション専門家の知見で訓練された人工知能によってアドバイスを提供する。また、人工知能の代わりに他のユーザーからフィードバックを受けることも可能だ。

アマゾンが扱うであろうデータの観点からは、Echo Lookも重要な情報を収集する。どの洋服の組み合わせが誰に好まれるかというデータが次々と蓄積されていくからだ。人工知能あるいは他のユーザーからの評価によって精度が向上できる。

ユーザーの好みに関するデータを収集するアマゾンは自社ブランド「アマゾン・ファッション」の取り扱いを増やしてきた。欧州ではプライベートブランド「find」を開設し、スーツやドレス、シューズを販売している。日本でもコナカやAOKIと提携し、ビジネスファッションを扱う「Suites Store」を展開した。

アマゾンはファッション通販のほとんど全てを網羅してしまったようだ。プライベートブランドからセレクトショップの機能はもちろん、プライム・ワードローブの導入によって、実店舗が担ってきた役割まで果たせるようになった。多くのユーザーは服を買うならアマゾン、という認識を持つようになるかもしれない。