化学プラントのデジタル化、課題はセキュリティ能力不足ーアクセンチュア

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アクセンチュアは5月16日、「化学プラント操業におけるデジタル技術に関する調査」の結果を発表した。それによると、化学プラントの操業におけるデジタル技術の活用はいまだ初期段階にあるものの、導入に向けた取り組み自体は増加傾向にあることが判明した。
化学プラントのデジタル化、課題はセキュリティ能力不足ーアクセンチュア

化学企業の80%がデジタル技術導入へーメリットは管理の効率化と品質の向上

デジタル技術の進化に伴い、さまざまな分野でデジタル技術の導入が進んでいる。これは、化学業界も例外ではない。同調査によると、導入に向けた取り組みは増加傾向にあることが判明した。

今回、アクセンチュアが行った「化学プラント操業におけるデジタル技術に関する調査」は、日本、カナダ、フランス、ドイツ、オランダ、サウジアラビア、シンガポール、スイス、トルコ、アラブ首長国連邦、英国、米国の世界12か国の化学企業の経営幹部360人を対象にしたもの。

出典:「化学プラント操業におけるデジタル技術に関する調査」アクセンチュア

それによると、回答者の80%が「すでに自社の化学プラントのデジタル化に大規模な投資を行っている」と回答した。また、85%が「今後3年間で全社的なデジタル化に向けた設備投資を増加させる」と予測している。

さらに、「デジタル化によるメリットに満足している」とした回答者は全体の92%に達した。具体的なメリットとしては「効果的な操業管理」、「製品品質の向上」が上位に挙げられている。

また、収益面では、95%の回答者が「デジタル技術の導入は、目に見える形で収益面での成果につながっている」との見方を示した。一方、製造工程における営業利益については、31%が「10%から20%改善した」、20%が「20%から40%改善した」と回答している。この二つ合計で51%となり、過半数が2ケタの改善を示した点を評価していることがわかった。

しかし、実際に活用している企業はまだ3分の1以下

上記の結果からもわかるように、多くの化学企業の経営トップがデジタル技術の導入を検討しており、それに伴い、プラント全体のデジタル化に向けた実証プログラムに着手している。ところが、実際のデジタル技術の完全な導入は、現状ではいまだ一部の現場にとどまっているという。

化学企業では、デジタル技術をクラウド、ロボティクス、AI、モビリティ活用やウェアラブル機器、サイバーセキュリティなど、広範囲分野での導入を検討している。しかし、それらを実際に幅広く活用していると回答したのは3分の1以下に過ぎないという。

すでに実施中の実証プログラムとしては、活用していると答えた回答者の43%がアナリティクスを挙げている。これは、化学企業がもっとも多く導入している取り組みであり、膨大なデータから多くのインサイトを導き出すことができる。このため、回答者の46%が「今後3年間のデジタル投資分野のトップ3に入る」との見方を示したという。

実際、回答者の51%が「今後1年間でもっとも費用対効果の高い取り組みのひとつになる」と予測している。また、3分の1が「デジタル関連投資予算の2割から4割をアナリティクスに割り当てる」と回答している。

アクセンチュアは、このようなデジタル変革がもたらす可能性について「Industry X.0」と定義している。これはデジタル技術の導入によって、自社の主力事業、労働環境、顧客体験、ビジネスモデルなどを変革しようというコンセプトである。このコンセプトにのっとり、スマートにつながった設備資産を活用した効率化を進め、新たな収益源を確保することで、組織内に秘められていた価値を引き出すことを提言している。

サイバー攻撃に無防備な化学業界。早急な投資が必要

出典:「化学プラント操業におけるデジタル技術に関する調査」アクセンチュア

近年、さまざまな分野の企業でサイバー攻撃への対策が進められている。しかし、化学業界の企業はこの脅威に対して、無防備な状態であることがわかった。

具体的にみると、「過去1年間に操業中のプラントを狙った不正アクセスの試みが30件以上あった」と回答したのは全体の73%に上ったほか、54%と半数以上は「30件以上の不正アクセスを防止できなかった」と答えている。また、50%は「不正アクセスを検知するまでに数日から数週間、中には数か月もかかった」と回答している。

ところが、こうした課題に直面しているにもかかわらず、化学企業にはサイバー攻撃の脅威を特定し、それにうまく対処できる能力が著しく欠けているの状況だという。実際、回答をみると、「サイバーセキュリティのインシデントによる経済的リスクを管理し、または損害を最小限に抑えることができる」と回答したのは、過半を下回る42%だった。また、「不正アクセスの原因を特定できる」と回答したのは39%、「不正アクセスを監視できる」と答えたのは33%とさらに少数にとどまっているのだ。

また、2番目に挙げられたリスクは「環境・健康・安全」(15%)で、3番目は「オペレーションの信頼性」(14%)だった。このうち、2番目のリスクは操業中のプラントを狙ったサイバー攻撃が自社の従業員や公共の安全などを脅かす可能性があることを示唆しているとしている。

今回の調査から、化学業界ではデジタル技術の導入が進められているものの、現状では完全な導入はまだ少ないことがわかった。サイバー攻撃を防ぎきれなかった場合の影響は大きく、生産量の低下や顧客に対する供給契約不履行など、業務上の影響は避けられないだろう。

サイバー攻撃が企業の利益に重大な影響を及ぼす可能性があることを認識し、早急な対策が求められる。


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