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相手の気分次第で個人の息の根が止まるという怖さ
いきなり個人の体験談で恐縮だが、筆者は独立して4年で一度だけ大きな支払いトラブルに遭遇したことがある。チャット感覚で先方のメールに対応していたら、「態度が悪い」と先方の社長に言われ、報酬は支払わないと言い出されてしまったのだ。額は35万円。
わかりましたといえるような額ではなく、リモートワークであるがゆえのオンライン上のトラブルであるため和解の道もなく、裁判になった。裁判では揉めに揉めたが、最終的には支払ってもらえた。オンラインとはいえ誠実さの重要性を思い知ったので、それからはメール、電話、LINEであっても、余計なトラブルを招かぬよう礼を尽くすように心がけているが、この経験で痛感したのは、相手の気分次第でいくらでも資金源が絶たれるという恐ろしさである。
しかし、誠実でありさえすれば「支払いトラブル」は回避できるのだろうか?
事業主やフリーランスはもとより、定年後の嘱託やサラリーマンの副業が当たり前の時代となったいま、支払いトラブル回避術は誰もが身につけるべきビジネススキルといえるのではないだろうか。
支払いされなかった、遅延した、というトラブルは多い
事業主である友人知人と話していると、支払いされなかった、遅延した、というケースは非常に多い。その背景には、お金にあまりシビアでない層が、ゆるくフリーランス化して自由業を楽しんでいるという側面もあるだろう。
あまり強く言いづらい、関係を壊すかもしれない、発注をくれるこの人に嫌われたくない・・・請求を言い出せない理由はさまざまだ。現に、表立って支払いトラブルを公開する人はそれほど多くないものの、オフラインや極めてクローズドな場において、支払いがされなかった、遅れていたという話はとても多く聞く。多くの個人がこの問題に悩まされているのだ。
下請法により、60日後までに代金を支払うという決まりはある。しかし下請法は資本金の制限があり、すべてのケースにおいて適用されるわけではない。
入金とは信頼のことである
はっきりいってしまうと、入金とは「信頼」のことである。期日通りに入金されることこそ、信頼の証。筆者は昔、中小企業に勤めていたが、そのころは経営陣がなぜ入金日にやたらこだわるのか理解していなかった。来月になってもいずれ入ってくるから、特に問題ないのでは?と思っていた。
しかし年を重ねてビジネス経験を増していった今ならわかる。入金とは信頼そのものなのである。
個人が経済活動に対してむき出しになる時代
いま、「個の時代」といわれる。それつまり、個々人が直接、マーケットと向き合い、そして個のありようが経済活動に対してむき出しになる時代、であるといいかえることができるだろう。
縮小する経済を背景に、政府も企業も、副業の推進に乗り出した。「人生100年時代」を背景として、これからは定年後はのんびり隠居生活とはいかない。個人として法人と業務委託契約を結び、直接的に経済活動に参加する、というフェーズは多くの人に訪れる。そんな時代なのだ。
さらに、シェアリングエコノミーの台頭で、個人がC2Cでの経済活動における主体になる可能性もある。支払い情報が個人の信用スコアに直結することは、今後の経済において誰しも起こり得ることだろう。つまり、支払いこそが「信用」であることを、誰しも理解する必要がある。
現在もクレジットカードやカードローンの支払いを怠ると、ブラックリスト入りしてスマホの分割すら組めなくなる。それがさらに拡大され、目に見える形で影響を及ぼす社会になるということだ。