本日「民泊新法」スタート、法改正のポイントまとめ

6月15日に施行される民拍新法(住宅宿泊事業法)について、その概要とそれぞれの事業者が押さえておくべき具体的な注意点について詳しく解説していきます。これから民泊を営むことを考えている方はぜひお読みください。

本日「民泊新法」スタート、法改正のポイントまとめ

ここ数年「民泊」が注目されるようになり、訪日外国人を中心に、多くの人々が宿泊先として個人の住宅や別荘などを利用するようになりました。

しかし旅館業法や建築基準法、消防法などに違反している可能性や、近隣住民とのトラブル、無断転貸や民泊先が犯罪の温床となるなど、さまざまな問題点も指摘されていました。そんななか、個人宅へを宿泊先に利用すること自体を禁止すべきだという声も上がっていたのです。

そこで今月15日に民泊新法(住宅宿泊事業法)が施行され、これまでグレーな状態だった民泊を合法的なサービスとして確立し、安全に個人宅や空き家への宿泊をするための法制度がスタートすることとなりました。本記事では、今月15日に施行となる民泊新法(住宅宿泊事業法)の概要について解説するとともに、シェアリングエコノミーに参戦する前におさえておきたい法改正のポイントをまとめました。

1. 民泊新法(住宅宿泊事業法)成立の背景

まずは、民泊新法の概要と成立の背景について知っておきましょう。民泊新法こと「住宅宿泊事業法」は、昨年(2017年)の6月に国会で成立し、今月15日に施行となる新しい法律です。

訪日外国人数が右肩上がりに増加している昨今、宿泊先として安価に利用でき、場所の確保がしやすい一般住宅や空き家を宿泊施設として活用するニーズが高まっています。

また2020年に開催される東京五輪により、さらに多くの訪日外国人が宿泊先を必要とすることが予想されることから、ホテルや旅館といった宿泊施設だけでは増加し続ける訪日客に対応することが難しいという指摘がされるようになりました。

そこで数年前から徐々に増加してきたのが、一般住宅の空き家、空き室を宿泊施設として提供する「民泊」というシステムです。ホテルなどの宿泊施設を利用するより安く、多くの部屋を提供できることから、提供する側・利用する側にとって多くのメリットがあると考えられてきました。

これまでの「民泊」はグレーゾーン

しかし、現行の法律(旅行業法)では民泊はグレーゾーンであり、そのため行政による実態の把握と指導が難しく、無届けのまま勝手に宿泊場所を提供する個人や業者が増加することになってしまいました。

一般的なルールを適用できないため、宿泊者が夜中に大騒ぎしたり、ごみを散乱させたりするなど、近隣住民とのトラブルが目立つようになってきました。さらには利用者の死亡事故が発生したことや、極めつけは殺人事件の容疑者が民泊を利用していた事実がニュースなどで報じられ、民泊に対するマイナスのイメージが広がりはじめたのです。

「民泊」を新しいルールのもとで制度化へ

そこで昨年(2017年)、民泊をこれまでの旅館業法で規定している形態ではない新しい事業として確立し、確固たるルールのもとで安全に運用するための議論が国会で行われました。

具体的には後述しますが、たとえば個人宅や空き家を宿泊施設として提供する事業者は事前に登録・届け出を必要とするよう定め、民泊施設を既存の住宅に限定することで、日本の「空き家」問題解消に確実に効果を上げられるように制度化する案などがまとめられ、今年6月15日に施行される運びとなりました。

つまり、民泊を運営する側にさまざまな義務を課すことにより既存の問題点を解決し、安全な宿泊施設としての利用を促す狙いがあるわけです。

2. 民泊新法(住宅宿泊事業法)で抑えるべきポイントとは

民泊新法の概要について説明したところで、具体的な法制度の内容を掘り下げるとともに、新法を理解するために必要なポイントを解説していきます。

民泊と簡易宿泊所、特区民泊との違いを理解しよう

民泊の対象となる施設は既存の「住宅」に限られます。施設の提供者を含め、だれかが居住している家屋や、賃借人を募集している空き家、別荘などがこれに含まれます。既存の簡易宿泊との違いは以下のようになります。

簡易宿泊

旅館業法上の許可形態のひとつであり、宿泊場所を多人数で教養する構造と設備をもつ施設を設け、宿泊料を受けて客を宿泊させる営業形態です。

いわゆる民宿やゲストハウス、カプセルホテルなどがこれに含まれます。簡易宿所の許可を得るには、旅館業法や建築基準法における要件をクリアする必要があります。

届け出による民泊

対象施設は既存の住宅であり、居住している者のいる家屋、空き家、別荘などです。共用利用を含む台所や浴室、便所、洗面設備などが必要で、許認可を受ける際には施設の図面や転貸が承諾されていることを示す書面、管理規約などの添付書類の提出をしなければなりません。

特区民泊

特区民泊とは、国家戦略特別区域法にもとづき、旅館業法の特例制度を受けた民泊制度のことをいいます。

特区民泊の認定を受けるためには、当該宿泊施設の所在地が国家戦略特別区域内にあることや、施設に利用法に関する外国語の案内や情報提供、その他外国人旅行客の滞在に必要な役務の提供が必要とされています。

民泊新法では3つの事業者がある

民泊新法では以下の3つの事業者が定義されており、それぞれに対して役割や義務などが定められています。

  • 住宅宿泊事業者

民泊用の住宅を提供する者を住宅宿泊事業者として、事前の届け出が必要と定められました。厳密には、旅館業法に規定されている営業者以外の者で、宿泊料を受けて住宅に人を宿泊させる事業を営む者という位置づけになります。

  • 住宅宿泊管理業者

新法では、住宅宿泊事業者のほかに、実際に住宅施設の管理や運営を行う「住宅宿泊管理者」を設置しなければならないとしています。両者の兼任もできますが、事業者自身が遠方にいたり、不在にすることが多かったりする場合は、第三者に施設の運用を委託する必要があります。

  • 住宅宿泊仲介業者

住宅宿泊仲介業者とは、上述の住宅宿泊事業者からの委託を受けて、届出住宅の宿泊サービスについて利用者と契約を締結したり、取次ぎをしたりする業者をいいます。

これを営もうとする者は観光庁長官の登録を受ける必要があり、また5年ごとにその更新を受けなければならないほか、管理業を適性に遂行するためにさまざまな措置をとる義務が発生します。

民泊の事業形態

また、民泊新法では新しく2つの事業形態が導入されました。すなわち「家主在住型」と「家主不在型」です。

  • 家主在住型

民泊として提供する施設に家主(住宅宿泊事業者)が住んでいる形態であり、住宅宿泊事業者が不在とならない(短期間の一時的な不在を除く)のが前提です。事業者が住民票上の住所として登録していなければなりませんが、別荘などの場合は必ずしも居住している必要はありません。

ただし、届出物件の近隣に住んでいるというだけでは家主在住型の要件を満たさないので注意が必要です。

また、ここでいう「短期間の一時的な不在」についても明確に期間が定められており、「原則1時間、特別な事情がある場合でも2時間程度の範囲までの不在」となっています。その期間を超える不在がある場合、家主不在型となります。

  • 家主不在型

家主居住型に該当しない民泊届出住宅はすべて「家主不在型」となります。

家主在住型として許容される「一時的な不在」である「原則1時間、特別な事情がある場合でも2時間程度の範囲までの不在」を超える不在期間がある場合、たとえその物件に居住していたとしても家主不在型となります。

家主不在型の場合は、管理業務を住宅宿泊管理業者に委託しなければならないことになっています。

民泊新法「180日ルール」とは

新法では、民泊に「180日ルール」が規定されました。

民泊として住宅施設を提供できるのは必ず1年間で180日までであり、さらに各自治体によってこの期間を180日より短くする民泊条例を制定可能ですから、さらに営業期間が短くなる可能性もあるわけです。これまで民泊を営んでいた業者や個人はこのルールによって運営できる日数が限られ、収益が下がってしまうことが予想されます。

季節によって利用者数は変わってきますから、なるべく訪日外国人が増えるとわれる3月中旬~GW期間、そして夏休みを挟む7月から8月ぐらいを180日の期間とするのがよさそうです。また、残りの期間はマンスリーマンションとして活用するなど、できるだけ無駄のない施設運用を工夫する必要があるでしょう。

民泊新法を違反した場合の罰則は強化された

もし新法の規定に違反し、届け出をせずに無許可で民泊事業を行うなどすれば罰則が課せられるようになりました。具体的には、それぞれの事業者ごとに以下の罰則規定が設けられています。

住宅宿泊事業者の罰則規定

  • 6か月以下の懲役または100万以下の罰金

無届け営業や180日を超過しての営業により都道府県知事などから行政命令を受けた場合に、それを無視して違反営業を続けていた場合。また虚偽の届け出をするなどした場合。

  • 50万円以下の罰金

必要であるにもかかわらず住宅宿泊管理業者に委託しなかった場合。

  • 30万円以下の罰金

宿泊者名簿を備え付けなかった場合や、届出内容に変更が生じた際に、30日以内に都道府県知事などに変更の旨を届け出なかった場合など。

  • 拘留または科料

宿泊者名簿に虚偽記載をした場合。

住宅宿泊管理業者の罰則規定

  • 1年以下の懲役または100万円以下の罰金

無登録での営業や虚偽の内容で登録した場合。

  • 6月以下の懲役または50万円以下の罰金

不正な手段による登録を受けた場合や、登録取り消し命令や業務停止命令を無視して営業を継続した場合。
また登録者が成年被後見人・被保佐人などは管理者になることはできないが、これに違反した場合。すでに破産手続き開始の決定を受けて復権を得ない者を管理者にした場合も、これに該当。

  • 30万円以下の罰金

登録内容に変更が生じたにも関わらず、30日以内に国土交通大臣に変更の旨を届出なかったり、虚偽の変更届出を行ったりした場合。また必要な帳簿を備え付けなかったり虚偽の記載をしたりした場合や、誇大広告をした場合もこれに該当。

住宅宿泊仲介業者の罰則規定

  • 1年以下の懲役または100万円以下の罰金

無登録での仲介営業や虚偽の内容で登録申請をした場合。

  • 6月以下の懲役または50万円以下の罰金

※住宅宿泊管理業者への罰則と同じ内容。

  • 30万円以下の罰金

登録内容に変更が生じたにも関わらず、30日以内に国土交通大臣に変更の旨を届出なかったり、虚偽の変更届出を行ったりした場合。また、住宅宿泊仲介業約款を公示しなかったり、公示した料金を超えて仲介料を受け取った場合もこれに該当。