労働組合は形骸化しているのか?「労使間の実態調査」厚労省

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厚生労働省は6月18日、労働組合を対象に「労使間の交渉等に関する実態調査」を行い、その結果を公表した。働き方改革により雇用形態や労働時間が変化する中、労働組合は本当に労働者の声を代弁できるのだろうか。
労働組合は形骸化しているのか?「労使間の実態調査」厚労省

働き方改革が、労働組合の在り方を変える

「労使間の交渉等に関する実態調査」は、労働組合と使用者の間で行われる団体交渉、労働争議及び労働協約の締結等の実態などを明らかにすることを目的として行われている調査である。全国の16産業の約5,200労働組合に対し、7月1日~20日までの期間に、調査票を配布する形で行われ、3,244団体から有効回答を得たという。

「働き方改革関連法案」は20日の会期末には参議院でも可決される見込みであるが、「高プロ」制度をめぐっては、サ―ビス残業を助長するとの懸念もあり、労働組合側の反発は強かったという。

多様な働き方が広がり、労働組合自体のあり方にも変化が求められている。労働組合と使用者の関係はどのようになっているのだろうか。同調査であきらかになった労使交渉の実態について、7つのポイントを解説する。

1 労使関係についての認識

使用者側との労使関係の維持についての認識を訪ねた設問では、安定して維持されているとの回答が約9割となっている。

●「安定的に維持されている」42.7%
●「おおむね安定的に維持されている」46.4%
●「どちらともいえない」6.2%
●「やや不安定である」2.8%
●「不安定である」0.9%

2 正社員以外の労働者に関する状況

事業所に正社員以外の労働者がいる労働組合について、労働者の種類別に「組合員の加入資格がある」のは以下のとおり。

●「パートタイム労働者」35.2%
●「有期契約労働者」37.0%
●「派遣労働者」7.4%
●「嘱託労働者」38.4%

また、正社員以外の労働者の種類別に組合員がいるか、についての設問では以下のとおり。

●「パートタイム労働者」26.8%
●「有期契約労働者」30.8%
●「派遣労働者」1.5%
●「嘱託労働者」29.3%

雇用形態を問わず組合への加入資格を認める動きは広がっているようだ。ただ、資格がある割合と実際に組合員となっている割合には、数字に開きあることがわかる。

3 事項別労使間の交渉に関する状況

次に、労使間の交渉状況について調べた。これによると、交渉があった事項でもっとも多いのは「賃金・退職給付に関する事項」であった。また交渉により新たに設けられた規定でもっとも多いのは「育児休業制度、介護休業制度、看護休暇制度」で、これは前回の平成27年度調査時は29.7%であったことから、制度の導入が進んでいることがうかがえる。

●過去3年間に何らかの労使間の交渉があった事項(複数回答)
「賃金・退職給付に関する事項」89.7%
「労働時間・休日・休暇に関する事項」79.0%
「雇用・人事に関する事項」65.9%

●労使間の交渉の結果、労働協約の改定がなされたまたは新たに労働協約の規定が設けられ
た事項(複数回答)
「育児休業制度、介護休業制度、看護休暇制度」47.6%(前回29.7%)
「休日・休暇」41.8%(同 23.0%)、「賃金額」36.0%(同 23.0%)

出典:厚労省「平成29年 労使間の交渉等に関する実態調査」

4 団体交渉に関する状況

過去3年間において使用者側との間で行われた団体交渉の状況は行った67.6 %、行わなかった32.0%となった。また、団体交渉を行った組合の交渉形態については、以下のとおりである。企業内部で交渉をまとめる姿勢が一般的となっているようだ。

●「当該労働組合のみで交渉」84.1%
「企業内上部組織または企業内下部組織と一緒に交渉」12.0%
「企業外上部組織(産業別組織)と一緒に交渉」4.3%

団体交渉の1年平均交渉回数をみると、「3~4回」がもっとも多かった。

5 労働争議に関する状況

労働争議とは、労働関係調整法6条で「この法律において労働争議とは、労働関係の当事者間において、労働関係に関する主張が一致しないで、そのために争議行為が発生している状態または発生する虞(おそれ)がある状態をいう」と定義されている。行為の例としては、ストライキやサボタージュなどがあげられる。

過去3年間において、労働組合と使用者との間で発生した労働争議の状況は「労働争議があった」1.7%、「労働争議がなかった」98.1%となっている。

6 今後における労使間の諸問題の解決手段

労使間の諸問題を解決するために、今後重視する手段はなにかという設問では、労使協議機関を重視する声が多くみられた。労使協議機関とは、労働環境にかかわる諸問題についてを解決するための常設機関である。大企業の多くは、労働組合と労使協議機関が併存している。

●「労使協議機関」56.3%
●「団体交渉」38.1%
●「苦情処理機関」1.3%
●「争議行為」0.4%

出典:厚労省「平成29年 労使間の交渉等に関する実態調査」

労使協議機関は、団体交渉とはちがい、法律で定められているものではない。しかし企業と労働者側の幅広いコミュニケーションの場として、活用が進んでいる。

7 労働協約に関する状況

労働組合と使用者(または使用者団体)の間で締結される労働協約の締結状況は、労働協約を「締結している」94.7%、「締結していない」4.7%であった。

また、労働協約を「締結している」割合について、産業別に、前回調査と比較を行った結果が以下のとおり。

●もっとも多いのは「教育,学習支援業」11.4ポイント、次いで「生活関連サービス業,娯楽業」8.6ポイント、「卸売業,小売業」5.5ポイント

さらに、企業規模別では、100~299人の小規模企業においても、労働協約を締結している企業が増えていることが明らかになった。

出典:「平成29年 労使間の交渉等に関する実態調査」

雇用体系の変化は、労働組合にも転機となるか

これまで企業の労働組合は、一般的に正社員のみで構成される場合が多かった。しかし働き方改革が進む中、フリーランス(業務委託)・パートなど雇用形態も増えており、正社員の中でも時短などの制度を利用するなど、働き方は多様化している。

同調査から、雇用形態を問わず労働組合の資格を与える企業は増えていることが確認できたが、それが労働条件の改善まで具体的につながるかどうかは、まだまだ未知数である。また労働組合ではなく、労使協議機関でのコミュニケ―ションが重視される傾向があったことは、今後労働組合の形骸化が進行することを予感させる。

労働組合は、今転機をむかえようとしている。形だけの組織として存在するだけでは、もはや労働者側、使用者側の双方からそっぽをむかれてしまいかねない。いかに柔軟に、そして細分化して労働者の希望をくみとれるか、問われているのである。