労働条件通知書とは | 雇用契約書との明確な違いを解説【記載事項・記入例・書き方】

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記事の情報は2018-06-20時点のものです。

労働条件通知書とは、企業と雇用契約を結ぶ際に交付される労働条件が記載された書類を指します。労働条件通知書の交付は労働法規により義務づけられています。よく混同されがちな雇用契約書との違いはどこにあるのか、労働条件通知書に記載すべき内容などを解説します。
労働条件通知書とは | 雇用契約書との明確な違いを解説【記載事項・記入例・書き方】

労働条件通知書とは

労働条件通知書とは、雇用契約を結ぶときに交付する賃金や契約期間、就業時間などといった労働条件が記載されてる書類のことを指します

労働条件通知書では、労働者共通の労働条件に加えて、その労働者固有の給与や待遇面も記載されます。

労働条件を通知する理由

労働基準法、パートタイム労働法、労働者派遣法といった労働法規で、企業は労働者に主要な労働条件を通知しなければならないと定められています。企業と労働者である一個人との資力・情報量などの力の差を是正するためです。

したがって、企業は内定・採用の段階で労働者に対して、労働条件通知書を交付しなければいけません。労働条件通知書の交付は「通知書」という名前のとおり、企業から労働者への一方的な通知です。

よって「労働条件通知書兼雇用契約書」という形式でなければ、契約書のように企業・労働者双方の合意が必要であったり、署名・押印が必須とされたりするものではありません。

労働条件通知書兼雇用契約書とは

前述のとおり労働法規は主要な労働条件の通知を求めています。したがって、労働条件通知書と雇用契約書の2つをあわせ持った、労働条件通知書に記載すべき内容を網羅した雇用契約書の控えを労働者に交付することで、両方を兼ねられます。雇用契約書の内容説明を労働条件通知と兼ねている企業も多いようです。

雇用契約書とは

労働条件通知書と似た用語で、企業と労働者が雇用契約を結ぶ際に契約内容を書面に残す目的で作成される「雇用契約書」があります。

雇用契約自体は、企業と労働者の合意で成立するものですが、その内容について、のちに企業と労働者とで齟齬が生じないように、書面でお互いが確認できる形にしたものが雇用契約書です。

労働条件通知書の内容が労働法規の要請(企業の義務)であったのに対して、雇用契約書は労働契約法に基づくものになっています。労働契約法では雇用契約は「できる限り書面により確認する」と規定しているにとどまります。

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雇用契約書作成時の記載項目

雇用契約書作成時には以下の10項目を記載する必要があります。

  • 契約期間
  • 就業場所
  • 業務内容
  • 始業と終業の時刻
  • 休憩時間
  • 交替制について
  • 休日
  • 有給休暇
  • 賃金
  • 退職

また、雇用契約書は会社と労働者の両者の合意にもとづく契約なので、拘束力が強いと覚えておきましょう。

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労働条件通知書と雇用契約書の“2つの違い”

雇用契約書は、企業が労働者と雇用契約を結ぶ際に締結するものです。労働条件通知書の交付時期と極めて近いこと、雇用契約書の内容として主要な労働条件が記載されることが多いため、労働条件通知書と雇用契約書の内容は、ほぼ一緒と捉えて良いでしょう。

しかし、労働条件通知書と雇用契約書は以下の2つで違いがあります。

  • 義務か任意か
  • 合意が必要か否か

義務か任意か

労働条件通知書の記載内容が労働法規に基づいた通知「義務」であるのに対して、雇用契約書の取り交わしそのものは「任意」です。

労働者保護の観点で見ると、労働者が雇用契約を結ぶにあたり必要な労働条件が労働条件通知書で通知されていれば、労働者はそれをもって雇用契約を結ぶかどうか判断できるとされています。したがって、あえて雇用契約書の取り交わしまでは労働法規では定められていないのです。

合意の必要性

労働条件通知書が企業から労働者へ一方的に交付されるものであるのに対して、雇用契約書は企業と労働者の合意が必要です。

つまり、雇用契約書は社員と会社の双方が署名や捺印を取り交わすのに対し、労働条件通知書は会社が一方的に社員に渡す書面なのです。

労働条件通知書の記載事項【記入例】

労働条件通知書には、どのような内容を記載したらよいのでしょうか。

労働条件通知書では、労働基準法で定められた事項を網羅しなければなりません。なかでも、労働法規では「必ず明示されるべき事項」として次の6項目が規定されています。

  • 労働契約の期間
  • 就業場所および従事する業務
  • 始業・終業の時刻
  • 休日・休暇
  • 賃金
  • 退職に関する事項

以下でそれぞれ詳しく解説していきます。

労働契約の期間

労働契約に期間があるのかないのか、あるとすれば契約期間を明記することとなります。また、契約の更新の有無、更新がある場合にはその判断基準も記載します。

就業の場所および従事する業務

労働する場所はどこか、どのような業務を行うかを記載します。

始業時刻・終業時刻

労働時間の始まる時間と終わる時間を記載します。

休日・休暇

いつ休みとなるのか、また、有給休暇の日数・付与条件などを記載します。

賃金

賃金、諸手当の額と計算方法、残業の場合の割増賃金率、賃金の締切日(いつからいつまでの労働の対価がその賃金なのか)、支払日・方法を記載します。

退職に関する事項

定年や解雇などの退職事由や、自己都合退職時に必要な手続きなどを記載します。

雇用形態別の書き方

雇用形態別で労働条件通知書に記載する内容が異なってきます。

パート・アルバイト

パートやアルバイトといった雇用形態で働いている人に対しては以下の4つの記載を義務付けられています。

  • 昇級の有無
  • 賞与の有無
  • 退職金の有無
  • 相談窓口

相談窓口とは、短時間労働者の苦情についての相談を受ける窓口のことを指します。平成27年4月の法改正より記載が義務付けられました。

派遣労働者

派遣労働者に対しては以下の2つの記載を義務付けられています。

  • 派遣料金額
  • 派遣料金の平均額

ちなみに、派遣労働者に対して労働条件通知書を交付するのは派遣元の会社になります。

労働条件通知書と雇用契約書の違いをしっかりと把握する

労働条件通知書と雇用契約書は似通った部分もありますが、違いもあります。

人事担当者としては、労働条件通知書と雇用契約書の違いをしっかりと把握することが、無用な紛争を未然に防止するために必要です。

また、労働者としても自己防衛として、自分が渡された書面が、労働条件通知書なのか、雇用契約書なのかを理解することは重要なことです。

企業による労働条件の明示は労働基準法で義務とされており、違反時には罰金が課されます。企業、被雇用者双方がきちんと意識を持ち、納得のうえで働けるようにしましょう。

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