マイクロソフトホロレンズで建設業界の働き方改革が爆速で進むワケ

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記事の情報は2018-07-10時点のものです。

建設業界におけるxRの活用が急速に進んでいる。xRとはAR(拡張現実)、VR(仮想現実)、MR(複合現実または混合現実)の総称で、様々な産業で利活用方法が模索されている。今回は、マイクロソフトと協業してホロレンズを活用し日本の建設業界では初めて、建設現場へのMR(複合現実)導入に踏み切った小柳建設社長 小柳卓蔵氏にお話を伺った。

小柳建設とマイクロソフト協業で開発したホロストラクションとは

ホロストラクションとは、計画から施工、竣工、メンテナンスに至るまで一元的にデータを管理できるアプリケーションだ。

例えば工期を削りたい、何かをプラスしたいなどの要望で土木工事に変更が生じた際、ホロストラクションのタイムスライダー機能を使えば、全員で最終形を確認しながら計画を練ることができる。

メンテナンスの際にも、配管や配線などの状況が2Dの図面だけではなく、3Dデータで残っていればミスなく補修作業を進められる。

「もともと自社の儲けだけを考えたのではない」という小柳社長。

「建設業界全体を変えたい。マイクロソフトにも最初からそれを伝えていました。マイクロソフトも先行利益を守ると言ってくれ、ホロストラクションはほとんど全ての3DCADに対応させています。

建設業界におけるxR活用は、お客様向けの内見用や、自社の工事の一部を効率化するためなど、限定的なケースが多いように思いますが、我々は建設業界の現場で働く人たちのために、ホロストラクションを開発したいと思っていました」(小柳社長)

新しいもので業界を変えたい、働く人たちを幸せにしたい。その想いをマイクロソフトもしっかりと受け止めたのではないだろうか。

すでにホロストラクションは、土木工事では実際の施工で導入検証を進めている。MR活用最大のメリットでもあるリモートコミュニケーションは、シアトル、東京、新潟とでアバターを表示させて5拠点5人まで遠隔でデータ確認や会議を行えるまでになったという。

ただし、いまは土木工事での活用にとどまる。施工に関する資料をデータ化した際の、データ容量の問題があるのだ。

橋や道路などの土木工事は、一般的な建築物と比べて施工が複雑ではなく、工事に使う資材の種類も少ない。図面をデータ化した際のデータ容量が圧倒的に少ないため、現在の通信環境でも実用化が可能だ。商業施設やマンションなどの建築物での実用化には技術の進歩を待つ必要があるのだそう。

とはいえ、5Gなど通信環境の改善や、年内か翌年かと噂される第2世代ホロレンズのリリースはすぐ目前だ。将来的にはホロストラクションの適用領域を拡大しつつ、建設業界全体でのアプリ活用を目指すという。

建設業界 ICT化の展望は

ホロストラクションの開発によって、建設業界のICT化"牽引企業"へと一気に躍り出た小柳建設。xR以外の技術を活用したICT化についてはどのように見ているのだろうか。

「私がいま注目しているのは、建設系のデータを一元管理しようという動きですね。図面をはじめとするビッグデータを活用し、設計工程にAIを導入していくような商売は激戦となるのではないでしょうか。」(小柳社長)

データ商戦は結局のところ、資本力のある大手企業しか参入できそうにない。設計業務のAI化は、国土交通省主導で国をあげて進めるという話もある。民間企業に太刀打ちできるか−。

一方のホロストラクションは、データを管理するためではなく見るためのアプリケーション。しかもほとんどの3DCADソフトウェアに対応している。これがあれば、海外に拠点を構える資本がない中小零細企業でも、地方や海外の案件を受注しやすくなるだろう。

「マイクロソフト ホロレンズには、音声アシスタントや翻訳機も搭載されています。今後さらに精度が上がるでしょう。アフリカをはじめ勃興国など建設需要の高いエリアへ、中小零細企業でもグローバルに事業を展開できる未来もすぐそこです」(小柳社長)

物理的な距離や時間を超えてリモートコミュニケーションを可能にし、グローバル展開の後押しまでできるというホロストラクション。まさに、業界の働き方改革が爆速で進むための起爆剤になるのではないだろうか。法整備が整えば、2019年にはサービスとして正式にリリースしたい考えだ。

大学での学びにホロストラクションを導入し、次世代の"建設業界変革者"を養成していくことや、土木工事の次にデータ容量を抑えられる倉庫や店舗の建築・メンテナンスにおけるホロストラクション活用など、正式リリースを見据えて着々と準備が進められている。