東大 松尾豊准教授らが日本のAI研究に警鐘、目を向けるべき「5つの事実」

ここ数年、AIやディープラーニングといった人工知能のテクノロジーが大きくビジネスを変える事例が生まれている。しかし、世界と比較して日本はAI研究やAI投資に遅れを取っている状況だ。AIを活用してグローバルで勝つためには何をすべきなのか?東京大学 松尾豊氏、クラウドワークス 吉田浩一郎氏、楽天 森正弥氏、ABEJA 岡田陽介氏らが激論を交わした。

東大 松尾豊准教授らが日本のAI研究に警鐘、目を向けるべき「5つの事実」

日本のAI戦略はどうなる?AI有識者&経営者が議論

新経済連盟のグローバルカンファレンス「新経済サミット 2018」(NEST2018)では、日本の今後のAI戦略、そして、いかにして他国と差別化していくかについて議論が交わされた。

モデレーターを努めたクラウドワークスの吉田浩一郎氏は、まず日本のAI研究をリードする研究者の東京大学 松尾豊氏に、「シリコンバレーのAI研究の状況」を尋ねた。

クラウドワークス 吉田浩一郎氏

1. シリコンバレーには「年収5,000万円超」のAI研究者がゴロゴロ

松尾氏がはじめに言及したのが、AI研究者の新卒の年収について。同氏は「博士号取得者(Ph.D)は初年度から年収5,000〜6,000万くらいもらっている。チームリーダークラスは数億、研究所所長になると数十億ほどもらっている。ディープラーニング系研究者は恵まれており、特に不満なくやっている」と語る。

「その中から、もうひと山当てたい人が起業する。好きなだけGPU使える、優秀な仲間もいる。さらに起業したい人にお金が集まるという状況」(松尾氏)

日本の研究者から見たらうらやましい状況だが、楽天技術研究所 代表の森正弥氏は「AI技術者の年収が高いことになんら違和感はない」と語る。

楽天技術研究所 森 正弥氏

2. AI研究者ひとりで数百億円の経済効果を生む例もある

「インターネットの登場でスケーラビリティが変わった。ひとりの研究者が1年やって流通総額を数百億押し上げた案件がある。普通にそういうケースがありうる。研究者レベルで4,5000万のひとを10人集めても回収できるので、経済合理性的にはおかしなハナシではない」(森氏)

楽天技術研究所はシンガポールに拠点を置き、シンガポールの国立研究所から優秀な人材をあつめた。機械翻訳技術がある。吉田氏は「なぜシンガポールに優秀な技術者がいるのか?」と質問を投げかけた。

これに対して森氏は「論文数や特許数ではなく、どれくらい企業と研究したかで評価される。ビジネス目線で評価されるので、実践的な研究が評価されている」

3. ドイツはIoT・API連携でデータ活用を実践している

「シリコンバレーだけでなく、ドイツもすごい」と語るのがABEJAの岡田陽介氏だ。ドイツにはシーメンス・ボッシュなどの企業がいるが、IoTでどうデータ活用していくのか、ドイツ企業はよく理解しているという。

ABEJA 岡田 陽介氏

「(ドイツと比べて)日本でAPIをまともに理解できている経営者はどれだけいるのか?とある日本の製造業に訪問した際に、『API』という言葉は全然出てこない。IT役員が標的になるが、彼らはよくわからんから通す。よくわからんから通さない。そのどちらかに二分される」(岡田氏)