トライアル雇用とは|助成金や目的・仕組み・企業メリット、併用求人の意味

最終更新日: 公開日:

記事の情報は2018-06-25時点のものです。

就業経験の不足などにより就業が困難な求職者の雇用を促進する「トライアル雇用」。試用期間を設けられるため採用ミスマッチの軽減を期待できるほか、求職者にとっては未経験の職業にも挑戦できるといったメリットがあります。企業に支払われるトライアル雇用助成金の仕組みなどを、解説します。
トライアル雇用とは|助成金や目的・仕組み・企業メリット、併用求人の意味

トライアル雇用とは

トライアル雇用とは就業経験や知識、技術などの不足により就業が困難な人を、原則3か月の試用期間を設けて雇用する制度のことです。

使用者は求職者の能力や適性を一定期間見極めたうえで、本採用の可否を判断します。

トライアル雇用の目的

学校を卒業後スムーズに就職できなかった人や、早期離職や病気・出産などの理由で就業期間にブランクがある人など、就業したくてもできない人がいます。そういった、働く意思があるにも関わらず就業経験の不足を理由に就業できない人にきっかけを作り、正社員雇用を促進しようというのが、トライアル雇用制度です。

使用者側の企業にとっては、助成金が支給されるほか、ミスマッチを軽減して採用コストを軽減できるというメリットがあります。新たな人材発掘や人手不足の解消にもつながることから、求職者と使用者、双方に利点のある制度となっています。

トライアル雇用の対象者

トライアル雇用制度の対象となる求人は限られています。ハローワーク、または「雇用関係助成金の取扱いに係る同意書」を提出した職業紹介事業者で申し込めます。

また、トライアル雇用は誰でも応募できるわけではなく、以下に示す条件のうちいずれかを満たす必要があります。

  • 希望する職業の就労経験がない
  • 卒業後3年以内で安定した職に就いていない
  • 過去2年以内に離職や転職の経験が2回以上ある
  • 離職し1年以上一切の仕事をしていない
  • 妊娠・出産・育児で離職し1年以上安定した職に就いていない
  • 生活保護受給者、季節労働者、ホームレスなど、特別な配慮が要る方

制度の仕組みと助成金

トライアル雇用の対象者を雇用した企業には、助成金が支給されます。制度の仕組みと、どのような条件を満たすことで助成金を受けられるのかについて解説します。

トライアル雇用のフロー

使用者はまず、ハローワークや地方運輸局など制度の対象となる紹介者に、トライアル雇用求人を提出します。採用が決まったら、当人を紹介してくれた紹介者に実施計画書を提出する必要があります。提出期間はトライアル開始から2週間以内です。

3か月のトライアル雇用期間を経て常用雇用契約へと移行する際、トライアル雇用終了後2か月以内に助成金の支給申請書をハローワーク、または労働局に提出すると、助成金を受給できます。

トライアル雇用助成金には、対象者により、大きく2つのコースが設けられています。

トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)

事業主がトライアル雇用助成金を受給するためには、いくつか条件を満たす必要があります。主に、求職者がトライアル雇用の対象者であること、ハローワークや紹介事業者などからの紹介であること、通常の労働者と同レベルの労働時間を設けることなどがあげられます。

一般トライアルコースの場合、助成金の支給額は1人あたり月4万円(母子家庭の母、父子家庭の父は5万円)で、3か月分がまとめて支給されます。トライアル期間中に解雇や退職、常用雇用への移行、休業休暇により予定の就労日数に満たない場合、支給額は就労日数の割合によって減額されます。

トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース)

トライアル雇用には障害者を対象とした「障害者トライアルコース」も用意されており、障害者雇用促進法に該当する障害者のうち、以下のいずれかに該当する求職者が対象となります。

  • 希望する職業の就労経験がない
  • 過去2年以内に離職や転職の経験が2回以上ある
  • 離職し6か月以上一切の仕事をしていない
  • 重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者である

助成金の支給額は、精神障害者の場合は月最大8万円×3か月、月最大4万円×3か月(最長6か月間)。それ以外の場合は月最大4万円×3か月(最長3か月間)となります。

トライアル雇用のメリット

トライアル雇用には使用者である企業・事業者、求職者の双方にメリットがあります。それぞれの立場から見たトライアル雇用のメリットを説明します。

企業にとってのメリット

トライアル雇用は、いわば試用期間を経て本採用を決定するシステムです。企業はまず、助成金を受給できれば、採用コストの削減につながります。

さらに、書類選考や面接だけで求職者の適性や能力を確かめるのは難しいものですが、[toc]トライアル雇用ならトライアル期間中に業務を通じてじっくり見定め、常用雇用時にミスマッチが発生するリスクを軽減できます。

求職者にとってのメリット

トライアル雇用の応募条件に「未経験の職業」と定められていることから、経験のない職種や業界にチャレンジできます。また自らの経験やスキルなどが重視されないため、一般的な中途採用よりもハードルは低めでしょう。

また実際に業務を行うことで、仕事の内容や職場の環境などが自分に合っているか体感できるので、使用者側と同じくミスマッチを軽減できるメリットがあります。

トライアル雇用の注意点

トライアル雇用は雇用者と求職者の双方にメリットがあることを説明しました。しかしデメリットもあります。メリットと同じく、それぞれの立場から見ていきましょう。

企業にとってのデメリット

就業経験が乏しい求職者を採用するため、ビジネスマナーなどを含め社会人としての基礎教育から必要な可能性があります。これは一般的な中途採用なら不要な労力なので、担当者にとって大きな負担となる恐れがあります。

また助成金受給のためには実施計画書や受給申請書の作成・提出など、細かなスケジュールに沿ったアクションを要します。必要書類や手続きも多く、担当者の負担が重くなるかもしれません。

求職者が気をつけること

原則3か月のトライアルの後に正社員に移行できる制度ですが、使用者の判断により、トライアル終了時点で雇用終了となることもあります。すなわち、常用雇用が約束されているわけではありません。この場合、トライアル雇用期間の職歴が経歴として残ってしまいます。

自分の意志ではないにしろ短期間で離職した経歴が残ることは、その後の就職活動に影響を及ぼす可能性が高いことも、留意しておく必要があります。

トライアル雇用併用求人とは

求職活動をしていると、トライアル雇用併用求人という言葉を目にすることがあります。これはその名が示すように、トライアル雇用と一般の求人を併用する求人募集を意味します。

ひとつの求人に対し、トライアルと一般、すなわち「未経験者と経験者のどちらからも募集しますよ」という募集の仕方です。

一概には言えませんがこうした募集は、本当は即戦力となる経験者が望ましいけれど未経験者でもやむを得ないといったような、経験者優先で採用したい場合などが考えられます。不利有利の問題ではないものの、気になるようであれば、紹介者に相談してみるとよいでしょう。

トライアル雇用は人手不足解消につながるか?

トライアル雇用は、就業経験の不足している人を対象に、トライアル期間を設けて常用雇用へ移行するきっかけとする制度です。

求職者は経験を気にせず新しい職業にチャレンジでき、雇用者は助成金を得ることで採用コストを減らし、かつ新たな人材の発掘につながります。

人手不足が叫ばれる昨今、正社員雇用の拡大に向けて求職者、使用者ともに、上手にトライアル雇用制度を活用したいところです。