インクルージョンとは?意味・ ダイバーシティとの違い・企業のメリット・活用事例

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記事の情報は2018-07-03時点のものです。

インクルージョンは、多様な人材を活かす手法として、ダイバーシティとともに使われます。ダイバーシティ&インクルージョンを掲げる企業も増えてきました。本記事では、インクルージョンの意味やダイバーシティとの違い、インクルージョンが注目されるに至った背景、実際にインクルージョンに取り組んでいる有名企業の事例を紹介します。
インクルージョンとは?意味・ ダイバーシティとの違い・企業のメリット・活用事例

インクルージョンとは

近年、日本でも多様な人材の活用が必要だという認識が広まっています。ただ雇うだけでなく、それぞれの強みを活かすことが重要だという考え方を、特にダイバーシティやダイバーシティ・マネジメントといいます。近年、ダイバーシティに代わる新しい考え方「インクルージョン」が盛んに使われるようになっているのです。

インクルージョンとダイバーシティ、どちらも似たような概念で、同列に用いられることも多いですが、厳密には意味が違います。本記事では、両者の違いについて説明するとともに、インクルージョンを実現するためのポイントも解説します。

インクルージョンの意味とは

インクルージョンの意味とは、「すべてのスタッフが仕事に参画する機会をもち、各々のスキルや強みを認められ、能力を活かして働ける状態」を指します。もともと「インクルージョン(inclusion)」は包括、包含、一体性といった意味があります。ここから、「さまざまな人材が、一体となって働ける状態や環境」を指すようになりました。

また、こうした考えのもとで行われる人材開発を指す場合もあります。企業のマネジメントでは、この定義を使うケースが多いでしょう。

インクルージョンとダイバーシティの違い

ダイバーシティとは、多様な背景をもつ人材に対して、広く就業機会を設け、積極的に登用する考え方をいい、組織内に多様な人材が存在している状態」を指しています。一方のインクルージョンは、この状態を発展させたものだと考えるとよいでしょう。「多様な人材が対等に関わりあう中で相互に認め合い、一体となって働いている状態」を指します。

多様な人材の定着、各々の強みを活かした仕事には、考え方や価値観を認め合う環境が必要です。インクルージョンはそういった環境を実現するために提唱された考え方です。ダイバーシティとインクルージョンの両立が、優秀な人材の定着につながります。

インクルージョンの取り組みにおける分野別の現状

インクルージョンに熱心に取り組んでいる分野として、社会福祉やビジネスがあります。それぞれの事例をみていきましょう。

社会福祉分野

もともとインクルージョンという考え方が提唱されたのは、社会福祉の分野だといわれています。

身体に障がいをもつ子供が、社会に参加するための取り組みを指す言葉として生まれました。適用範囲が、高齢者にも広がってきたことで、現在の定義になっています。

厚生労働省も、すべての人が、互いに社会の構成員として支え合うことを「ソーシャルインクルージョン」と説明しています。

ビジネス分野

ビジネスの分野でも、ダイバーシティを発展させた文脈において、広くインクルージョンが推進されています。

ダイバーシティによって、多様な人材は組織内に集まりますが、マイノリティ(少数派)弊害として排斥や差別、過度な区別が問題として発生します。

この問題も、インクルージョンという考え方を取り入れることで解決しつつあります。すべての人を仲間として受け入れ、対等に活躍できる環境が整えられるので、ダイバーシティをうまく活用できます。こうして、人材定着の手法として注目されるようになっています。

いま、インクルージョンが強く求められている背景とは

インクルージョンの概要を解説したところで、なぜ日本でインクルージョンが強く求められるようになったのか、その背景をもう少し掘り下げてみます。

日本は、急激な少子高齢化によって、労働人口の減少が顕著になりました。そのため、労働力の主軸だった働き盛りの男性だけでなく、女性や高齢者の雇用推進も必要になりました。

その結果、さまざまな価値観や考え方をもつ人々を同じ組織で活用する機会が増え、多様な人材を活用する施策として、インクルージョンが注目されるようになったのです。

インクルージョンの現状

現在の日本企業は、女性活躍推進や外国籍スタッフの採用にも積極的です。また、LGBTや治療と仕事の両立といった「周囲の人には言いにくい、理解されづらい」と感じる働き手を組織主体で支援していこうという動きもみられます。

グローバル展開を戦略とする企業の増加や、人手不足による労働力補充が主な理由として、ダイバーシティ推進の施策は打ち出されていますが、「職場における個人の尊重」はまだまだ浸透したとは言い難い状況です。日本は、ダイバーシティとインクルージョンの両立では発展途上といえるでしょう。

今後は「心理的安全性」や「無意識のバイアス」といった概念の理解促進をはじめ、インクルージョンの理解を深める啓発活動に、より一層力を入れる必要があるのが現状です。