アマゾン「アレクサ」誤発注、言い間違えたら法的にどうなるのか?

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記事の情報は2018-07-01時点のものです。

普及が進むスマートスピーカー。話しかけるだけで、ネット通販を介して買い物までできてしまう。しかし、誤って注文してしまったら…? 米国では実際にトラブルも起きている。日本では法的にどう扱われるのだろうか。経済産業省が示した、スマートスピーカー経由の誤発注に対する指針をみていこう。

海外では「誤発注」のトラブル事例も

スマートスピーカーは音声でのやり取りが中心だ。ユーザーの言い間違い、スマートスピーカーの音声認識失敗などにより、意図しない商品を注文してしまうことがあり得る。

PCやスマホを操作するより容易なので、子どもが勝手に買い物をする危険性も高い。それどころか、家族の何気ない会話がスマートスピーカーに注文コマンドと認識され、知らないうちに買い物をしている可能性もある。

作り話のようだが、こうしたトラブルは実際に起きた。The Vergeの報道によると、ある日6歳の女の子がAmazon Echoに「ドールハウスで一緒に遊ばない?私にドールハウスをちょうだい」と話しかけたところ、注文が受け付けられてしまった。しかも「2kg弱のクッキー」と一緒に。

話はここで終わらない。この騒ぎがテレビのニュースで報じられ、アナウンサーが原稿にあった「アレクサ、私にドールハウスを買って」というフレーズを読み上げたところ、視聴者のAmazon Echoたちが次々と忠実に注文し始めたのだ。

もちろん今では対策が施され、意図しない注文は起きにくくなった。しかし、言い間違い、勘違い、認識失敗などによる誤発注の完全な対策は難しい。注文内容を確認するプロセスがあっても、画面で確かめられるPCやスマートフォンと違い、音声だと文字通り聞き流しそうだ。

日本では法的にどうなる?

日本で「誤発注」が起きた場合、法律ではどのように判断されるのだろう。これについては、経済産業省が「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」の改訂案として指針を示した。

この準則では、「AIスピーカーを利用した電子商取引」という項目を新設し、スマートスピーカーが誤認識した場合と、ユーザーが言い間違えた場合に分けて説明している。

スマートスピーカーが誤認識した場合

前述したドールハウスの事例と同様だが、経産省は例として、テレビドラマで流れた音声を拾った発注と、幼児が母親にお菓子をねだる声を誤認識した発注を挙げた。いずれも、「発注者による発注の意思表示と解釈できる行為がない」ので、「契約はそもそも成立していない」となり、消費者が責任を取る必要はなさそうだ。

ユーザーが言い間違えた場合

こちらは、「タイヤ」を注文しようとして「ダイヤ」と言ってしまった、記憶間違いで似たような名前の別のおもちゃを注文してしまった、という例が該当する。最終的な判断は、誤発注の原因が発注者の言い間違え(錯誤)なのか重大な過失なのかで分かれ、錯誤であれば契約無効の主張が可能、重大な過失であれば主張できない、ことになるという。

錯誤か過失かは、一筋縄で見極められない。経産省は、「発注が完了する前に発注内容に誤りがないかを確認する確認措置」の有無と、実際に確認したかどうかがポイントになる、としている。

アーリーアダプターとして楽しもう

結局のところ、経産省の指針は出たものの、個別の誤発注がどう判断されるかはケースバイケース。裁判の判例が積み重なるにつれて社会的な合意も形成されるだろうが、今はまだその前段階にある。

現時点では、アーリーアダプターやアーリーマジョリティとして、スマートスピーカーにどのような可能性と問題があるかを、楽しみながら探っていこう。