社員に愛されるCEOの4条件 米ランキングトップ3が貫く信念とは

オンライン求人サービス会社のグラスドアが、従業員から高く評価されたCEOのランキング「TOP CEOs 2018」を公表した。各社の従業員が自ら匿名で評価を投稿するため、ブラック企業のCEOは上位に入りにくいはずだ。評価の高いCEOは、どのような考えで会社を経営しているのだろうか。上位3人をピックアップして、その理念を紹介する。

社員に愛されるCEOの4条件 米ランキングトップ3が貫く信念とは

従業員から高く評価されたCEOたち

米国でオンライン求人サービスを提供しているグラスドアが、従業員から高い評価を得た企業のCEO(最高経営責任者)をランキング形式で紹介する「TOP CEOs 2018」を公表した。北米と一部欧州の企業が対象になっていて、順位は従業員からの評価に基づいて決まる。

各社の従業員が自ら匿名で評価するため、いわゆるブラック企業のCEOは上位に入りにくいだろう。ランクインした企業は、職場環境もよいはずだ。事実、上位入賞した企業は、グラスドアの働きやすい職場ランキング「Best Places to Work」の常連であることも多い。

評価の高いCEOは、どのような考えで会社を経営し、職場環境を整え、従業員を導いているのだろうか。TOP CEOs 2018の上位3人に注目し、良き経営者、働きやすい職場につながる姿勢を探っていこう。

2018年版ランキングのトップ3には、次の3人が選ばれた。

  • 1位:エリック・S・ユエン氏(ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ)
  • 2位:マイケル・F・マホーニー氏(ボストン・サイエンティフィック)
  • 3位:ダニエル・スプリンガー氏(ドキュサイン)

1位:ユエン氏(ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ)

ズーム・ビデオ・コミュニケーションズとは?

ユエン氏は、CEOを務めるズーム・ビデオ・コミュニケーションズの創業者。同社は企業向けオンライン・ビデオ会議サービスを手がけており、ガートナーの調査によると顧客からの評価が高い。さらに、従業員が働きやすい職場を選ぶ2018年版Best Places to Workで5位に選ばれている。

ズームの原点は「遠距離恋愛」

あるインタビューでオンライン・ビデオ会議サービスの着想をどこで得たか問われ、ユエン氏は、中国の大学時代に体験した遠距離恋愛が原点だと答えた。当時の恋人、そして現在の妻である彼女に会おうとすると、鉄道に10時間も乗る必要があったそうだ。そこで、移動せず彼女のところへ「顔を出す」方法を考えるようになった。

1990年代半ばになり、インターネットに未来があると気付いて米国行きを決心したユエン氏だが、ビザ申請を却下され続けた。それでもあきらめず、何度も何度も申請を繰り返して、やっと認められたのは9回目で、2年かかった。

1997年に渡米してリアルタイム・コラボレーション・ツール企業のWebExへ入り、ネットワーク機器大手のシスコ・システムズによるWebEx買収で2007年にシスコへ移籍。その後2011年に独立し、ズームを立ち上げて大学時代の夢を実現させた。

大切なのは「従業員が幸せなこと」

ユエン氏はグラスドアによるインタビューのなかで、従業員から高く評価された理由として、風通しのよさを挙げる。全体ミーティングの場で従業員からありとあらゆる質問を受け、それを改善に役立てていると話した。

「働きたくなる会社の条件とは?」と自問するユエン氏は、「従業員が幸せなこと」がもっとも大切だと考える。そして、幸せなことと、他者を幸せにさせたいと願う気持ちが、ズームの企業文化の中心にあるとした。そのため人材を募る際は、ほかの従業員、社内コミュニティ、顧客、会社そのもの、チームメイト、さらに自分自身を気遣える人物かどうかみる。

2位:マホーニー氏(ボストン・サイエンティフィック)

ボストン・サイエンティフィックとは?

ボストン・サイエンティフィックは、医療現場のさまざまな課題を解決しようと、各種ソリューションを提供しているヘルスケア企業。2018年版Best Places to Workで35位になった。

マホーニー氏は、TOP CEOs 2017で3位だった。

ヘルスケア分野を目指したのは祖父の影響

マホーニー氏は、ジョンソン・エンド・ジョンソンの医療機器&診断部門トップを務めた後、ボストン・サイエンティフィックに参加。2012年11月、CEOの座に就いた。

グラスドアのインタビューによると、マホーニー氏は小児科医だった祖父の影響を受け、子どものころからずっと医療業界で働きたいと考えていたという。有機化学を学ぶうちに医学部に向いていないと感じ始めたものの、最終的にはヘルスケア分野に携わっている。

高評価を得た4つの要因

従業員からの高評価について、マホーニー氏は、次の4つの強みが反映されたからだとみている。

(1)マネージメント・チームのリーダーシップ
(2)ボストン・サイエンティフィックの文化と価値
(3)成長と革新、軽快さ、説明責任を中心とする、会社全体に浸透している活気に満ちた「ウィニング・スピリット」
(4)患者の生活改善に対する責務の共有、という4つの強みが反映された、とみる。

また、優秀な人材に長く在籍してもらうには、意味のある仕事に携わっていると感じてもらうことがポイントだそうだ。成長につながる大きな機会が与えられれば、従業員も会社をより気遣い、もっとここで働いていたいと考える、とした。さらに、仕事以外の面も重要で、会社が個人の生活を支援すると、従業員はベストの結果を出してくれるという。

3位:スプリンガー氏(ドキュサイン)

ドキュサインとは?

ドキュサインは、文書管理や電子署名などのシステムを提供する企業。Best Places to Workの2014年版で37位、2017年版で23位、2018年版で22位と、着実に順位を上げてきている。

スプリンガー氏は2017年1月にCEOとなったばかりだが、いきなりTOP CEOs 2018の3位になった。

ライフステージに合わせ軸足を仕事から家庭へ、そして仕事へ

IT業界で30年の経験を持ち、SaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)やクラウド・コンピューティング分野の成長に大きな役割を果たしたそうだ。スプリンガー氏が設立し、CEO兼会長を務めていたB2Cマーケティング・ツール企業のレスポンシスは、データベース大手のオラクルに16億ドルで買収された。

GeekWireの報道によると、スプリンガー氏はレスポンシスの売却後、家庭に多くの時間を割くようにしていた。しかし、息子が大学生活を送るようになり、もう1人の息子も高校を間もなく卒業する段階になって、ドキュサインのCEOとしてフルタイムの仕事にカムバックした。

企業文化を重視

CEO就任時、スプリンガー氏はドキュサインの公式ブログで、企業文化の重要性を強調した。「ほかの人の成長と目標達成を手助けできると、私は個人かつプロとしてとても満足する」と述べ、ドキュサインの文化はスプリンガー氏の価値観と一致するとしている。そして、CEOとしての目標を「ドキュサインをさらに素晴らしい職場とし、私自身も含め、誰にとってもこれまでで最高の場所にすることだ」とした。

名CEOとして慕われる4つの条件

駆け足で上位3人の経歴や考え方をみてきたが、従業員から評価される経営者の共通項として、企業文化、成長機会、従業員の幸せ、仕事以外の生活の4つを重視していることが挙げられるようだ。居心地がよく、キャリアアップが期待でき、家庭と両立可能な職場を構築できれば、優秀な人材の定着につながり、回り回って名CEOとして慕われるのだろう。

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