国内フィンテック市場は1兆円突破、次に超えるべき「3つのハードル」とは

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7月4日、矢野経済研究所は国内フィンテック市場を調査し、現況、領域別の動向、および将来展望を明らかにした。ついに1兆円を突破した国内フィンテック市場の市場概況を紹介する。
国内フィンテック市場は1兆円突破、次に超えるべき「3つのハードル」とは

2016年度は9,050 億9,000万円だった、国内フィンテック市場規模(フィンテック系ベンチャー企業売上高ベース)は、2017年度にはついに1兆円の大台を突破する見込みだ。矢野経済研究所は、2017年度の国内フィンテック市場規模は1兆184億円、2021年度には1兆8,590億円まで拡大するとの予測を発表した。

国内フィンテック市場規模

フィンテックとは金融(Finance)と技術(Technology)を掛け合わせた造語だ。従来の金融機関では提供できなかった領域において、IT技術を活用して提供が可能となる金融サービスを指した総称である。

矢野経済研究所では、従来の金融機関が提供していない、革新的なサービスやその基礎技術を提供するベンチャー企業に焦点を当て、これらのベンチャー企業の売上高ベースで国内フィンテック市場規模を算出したという。同市場規模は、前年度比12.5%増の急成長を遂げ、ついに1兆円を突破するまでになった。

引用:プレスリリース

いまやフィンテックはさまざまな領域でサービスが散見される。主な領域は以下8つだ。

・ソーシャルレンディング(融資)
・クラウドファンディング
・投資/運用サービス(投資・運用、情報提供)
・ペイメント/決済
・ブロックチェーン(プラットフォーム、仮想通貨)
・企業会計(クラウド型会計ソフト、会計・経理クラウドサービス)
・家計簿/経費精算アプリ(家計簿・資産管理、経費精算)
・金融機関向けセキュリティサービス

注目トピックス

なかでも昨今、注目を集めているのが、ブロックチェーン技術を活用したプラットフォームや仮想通貨の急拡大だ。

プラットフォーム領域は、まだ実証実験の段階で市場規模の伸びは限定的だ。しかし、昨今は本番環境での実施を見据えた実証実験が出始めている。今後は、スマートコントラクト(契約の自動化)などの活用や、SDK(ソフトウェア開発キット)の提供によるアプリケーション開発が活発化するという。そうなれば、市場のさらなる拡大に寄与するだろう。

一方、仮想通貨の領域は、金融庁の指導・監督が強化されており、先駆企業が事業拡大に苦戦する一面が取り沙汰されているが、見方を変えれば健全な市場へと成長していくことが期待できる。特に、ICO (Initial Public Offering:仮想通貨による資金調達手法)については、新たな資金調達への期待が高まる半面、環境整備が急務である。

次に超えるべき「3つのハードル」とは

まず、法的な環境整備に着目したい。全金融機関が2018 年3月までに「電子決済等代行業者との連携及び協働に係る方針」を打ち出しており、近い将来にはペイメント・決済領域における変革が見込まれる。また政府主導でも、プロジェクト型の「規制のサンドボックス(砂場)」が創設されているのだ。

サンドボックスとは、革新的な事業やサービスを育成するために、現行法の規制を一時的に停止する仕組みのこと。AI (人工知能)やブロックチェーンなどを対象としており、これらの法的環境を上手く活用して、いかに大規模な実証実験を進められるかどうかが鍵となるだろう。

ふたつめは、各金融機関がAPI (Application Programming Interface)の接続にあたり、体制の整備や接続基準などを決めていくフェーズに入った点だ。

APIの整備には、新たなIT投資が必要となる。当然、金融機関側にコストをかけるだけのメリットがなければ、API連携の推進は加速しないだろう。そのためには、API公開に即した新たなビジネスモデルの構築が急務なのだ。銀行とフィンテック系ベンチャー企業、相互にメリットを享受できる関係性を模索できるかどうかが問われている。

最後に、物理的な環境の問題も見逃せない。都内には、大手町や兜町などでフィンテック産業拠点のリニューアルオープンや新規オープンがあいつぎ、ミートアップなどのビジネスマッチングの場が盛んに開かれている。海外のフィンテック拠点とのパートナーシップ構築など、今後いかにグローバル進出を図れるかどうかも注視されている。

これらの3つのハードルを超え、APIを介した金融機関との協業や「規制のサンドボックス」制度を活用した大規模な実証実験など、官民一体となった支援体制の積極的な活用が進むことで、2021 年度の国内フィンテック市場規模(FinTech 系ベンチャー企業売上高ベース)は1 兆8,590 億円に達すると見込まれている。